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024,まさかの
しおりを挟む食事やお風呂、睡眠時間を除いて、ひたすら夕暮れの花園の魔物を殲滅し続けた。
すでに階層は七階層まで到達し、それまでのすべてのフロアの魔物を殲滅して進んできている。
階層が深まるにつれて、フロアの数はどんどん増えて、迷路化が進んでいったが、マップと高い殲滅力のおかげでまったく問題ない。
これまでに追加された魔物は、三階層で花まみれの狼――花ウルフ。
四階層でツタ人が花や草でできた意外と強度のある武器を持った――武装ツタ人。
五階層はボス部屋だったので、武装ツタ人の四腕版――武装四腕ツタ人とツタ人の混成部隊。
六階層で、植物図鑑やテレビでみたことがあるラフレシアに根っこが足のようになって移動してくる――ラフレシア。
そして、現在の七階層では、今までの草や花での構成とは違った、人型の木――ウッドマンが出てきた。
ただ、ウッドマンといっても、スカスカの木のようでディエゴよりもずっと柔らかい。
つまり、狼でも噛み砕けるし、ルトに至っては一撃確殺だ。
当然、魔法なら一撃だし、当たりどころによっては複数体をまとめて倒してさえいる。
ちなみに、六階層以降は低階層にあたる一階層、二階層に出ていた魔物はだいぶ少なくなっている。
その代わりほかの魔物の量が増えているので、結果としては単価の高い魔石が大量に手に入り、思った以上に資金が増えていた。
この四日間で稼いだ額は、なんと合計で1,505,330円となっていた。
まさかの百万円超えだ。
フロア数が多いこともそうだが、魔石の単価がかなり上がっているのも要因だろう。
魔物も当然強くなっているだろうが、鎧袖一触にルトたちが殲滅しているから殲滅時間自体は一階層とそう変わらないからこそできることだろう。
もちろん、ほぼ一日中迷宮駆除をしているからというのもあるが。
その代わり、ほとんど通販アプリでは買い物などはせず、部屋に戻ってくると魔石を換金してご飯を食べてお風呂へ入って寝るという、迷宮漬けの毎日になってしまった。
明日には、一度リウルが戻ってくる予定だし、だいぶ稼げたので今日はもう休みにしてもいいかもしれない。
ルトたちも部屋に戻ってきてから少し遊んだら、オレが寝ちゃうのでおとなしくしているしかないし、たぶん遊びたりなさそうだ。
いや、きっと遊び足りないはずだ。
だって、今までは午前中に迷宮に入っている以外はほとんど遊んでたんだから。
よく飽きないものだ。
「みんな、この数日よく頑張ったね。目標金額を大きく上回っているし、今日はもう迷宮探索は終わりにしようか」
「はい! ソラ様! 洗濯物が溜まってしまっているので、そろそろ片付けないといけないので助かります。あとお部屋の掃除もしたいですし」
「あー……。よろしくね」
「はい!」
大喜びで飛び跳ね、不思議な踊りを踊り始めるルトたちとは対照的に、リーンはまだまだ働く気満々のようだ。
実際、部屋の掃除はオレがお風呂に入っている間に軽くしかできていないだろうし、洗濯物なんかもこまめにはやっていただろうけど、大物はまったくできていない。
布団とかシーツとか。
ちょうどいいので、まとめてやってしまうつもりなのだろう。
オレだったら、面倒になって絶対やらないだろうな。
万年床でも別に構わない人間だし。
せいぜいファ○リーズする程度だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リーンが大物の洗濯をして、部屋の大掃除を始めたので邪魔にならないようにオレも庭に来ている。
庭では高くそびえる石壁の上をアクロバティックに飛び回っているルトたちが……超怖い。
何アレ、落ちたらバラバラになっちゃうんじゃないの?
石壁の高さがちょっとやばいんだけど……。
しかも、どうやらボールを使ってドッジボール的なものをしている上に、ボールを落とさないようにしているのでさらに難易度が上がっている。
遊ぶのはいいんだけど、もうちょっとこう……危険じゃない方向でやってくれないかなぁ。
そんな高層アスレチックを眺めながら、貯まりに貯まった資金で何を買うのか再度思案する。
購入予定のものは、庭へ玄関ドアを移設するためのシステム。
屋外シャワー室と、馬車本体。
とりあえずは、このみっつが最低限欲しいものだ。
庭へ玄関ドアを移設するには、固定の料金がかかり、その額100,900円。
この端数の900円は何なのだろうか。
手数料的なものか?
数日前なら、手がまったくでなかった額だが、今なら楽勝で払える。
次は、屋外シャワー室だ。
今まで最初からあったお風呂をみんなで共有していた。
迷宮の魔物は倒すと魔石を残して消滅するが、倒すまでに血や臓物を浴びると臓物は消えるが、血は残ってしまう。
魔物の油とかまで残っているのかはわからないが、とにかく血は確実に残っているので部屋に戻ってきたら綺麗にしないと汚くてしょうがない。
血液なので、なかなか落とすのも大変だし、お風呂場も毎回綺麗にしないといけない。
リーンとルトが綺麗にしてくれているから、大した問題ではないが、できれば別々にしたいというのが本音だ。
以前から気になっていたことなので、屋外シャワー室の設置も確定事項。
こちらは色々と選択肢があり、安いものだとテントみたいな形で本当に簡単なものになっている。
数日前まではこれでいいかと思っていたのだが、資金に余裕があるならせっかくだから、もう少しグレードをあげたくなってしまう。
オレが使うわけじゃないけど、ルトたちだって広くて使いやすい方がいいだろう。
ただ、さすがに普通のお風呂を屋外に新たに設置するとなると、軽く百万円を超えてくるので却下だ。
でも、広めの簡易ユニットタイプのシャワー室ならもっと安く済む。
まあ、安いといっても下は二十万円から上は天井知らずだけど。
ルトたちが全員で入っても十分洗える広さとなると大抵浴槽付きなので、オプションで浴槽を除外してスペースを確保しても、七十万円程度はかかってしまう。
別に一度に洗う必要はないから、もう少し抑えて五十万円くらいのものにしようと思う。
部屋に元々あるお風呂の三倍くらいのスペースになるし、十分だろう。
これだけ使っても、まだ九十万円くらいあるので、購入予定の馬車本体のグレードもちょっぴりあげてもいいかもしれない。
もちろん、全部使っちゃっても、また迷宮に行けばすぐに資金は確保できるだろう。
今日までのペースで迷宮に入らなくても、単価が高い魔石のおかげで、今までよりずっと資金確保が楽になったからね。
戦力不足のリウルとリーンに魔法の武器とか買い与えれば、補える可能性も出てくる。
ルトは今でも戦力過剰気味だし、狼たちには武器をもたせられない。
せいぜいがディエゴの杖を別のものに変えるくらいだろうか?
それだって、ディエゴの魔法は現状でも過剰な威力があるのだからあまり意味はないかもしれない。
人型の下僕は、武器や防具で戦力をある程度補えるのが強みだよね。
そのうち狼なんかは戦力外通告されるかもしれない。
まだまだ魔法が使えるディエゴやブラックオウルは大丈夫だと思うけど、問題はポチだろうか。
でも、ポチってかなり強いんだよね。
ブラックオウルを一撃で殺してるし。
それに、下級下僕使役がLvアップすれば下僕の強化が行われるので、それにも期待したい。
ただ、この数日のハイペースな迷宮探索でも、一向にLvが上がる気配がない。
新たな下僕の使役をしていないから、あまり経験値になっていないのかもしれないが、Classの死霊術師の方も上がっていないのが気になる。
どれかが上がってくれないと、馬の使役ができないのだから、早いところ上げなくてはならない。
馬の目処が立ったら、草原あたりで狼を大量虐殺して使役しまくってみようかな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「主様! リウル、ただいま戻りました!」
「おつかれー。じゃあ、さっそくだけど報告してくれる?」
「はい! では――」
翌日、朝方にリウルは戻ってきた。
朝食後に、庭に移設したドアの覗き穴を見ると、リウルが周囲を警戒しながら待っていたのだ。
ちなみに、庭にドアを移設すると、畳一畳程度の大きさだったドアが両開きに変化して、二倍の大きさになった。
もちろん片方だけでも開けられるので大した問題はない。
いつからいたんだろうね?
まあ、予定通りに戻ってきたんだから別にいいだろう。
リウルからの報告を聞くと、頼んでいた馬のお墓的なものをしっかりと見つけてきたようだ。
基本的には、馬は寿命や怪我、病気などで死亡または処理されると、使える部分はすべて使ってしまう。
病気などの場合は、肉は食べないようだが、それ以外なら肉も切り分けられ、富裕層向けに販売される。
皮なども加工するためにすべて剥がされる。
ただ、骨に関しては使いみちがないのか、まとめて埋葬してしまうそうだ。
その場所もしっかりと調べてきてあるので、これで馬をゲットできる公算が高くなった。
そのほかにも、リウルたちが留守にしていた間の街の状況や、冒険者ギルドに入ってくる情報など、色々と話を聞いた。
特に気になるものはなかったが、迷宮都市へ行くためのルートについてはさらに詳しいことがわかった。
さらに、向かう予定の迷宮都市にある迷宮についての情報などもいくつか集められたそうだ。
思っていた以上に情報収集能力が高いリウルに少し感心する。
たった数日でこれだけ調べられれば、十分に及第点だろう。
うん、よくやったね、リウル。
これで灰にすることはまずないと思うよ!
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