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34 食堂で
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義母から衝撃的な打ち明け話はあったものの、お茶会自体は成功のうちに幕を閉じた。
義母は感じのいい人だったし、妹のソフィアはまさに天使と言って良い。あれだけ素直にクローディアを慕っていることからしても、義母はソフィアに対してクローディアの悪口を吹き込むようなことは一切やっていないのだろう。
二人が別館に帰った後、クローディアがさっそく父に「お義母様とソフィアが希望するなら、こちらの本館で一緒に暮らしても構いませんわ」と伝えたところ、父は感動に涙ぐんでいた。
「ありがとう、クローディア、ありがとう」
「どういたしまして。お義母様は良い方でしたし、ソフィアも本当に可愛い子でしたもの。あんな妹がいて嬉しいですわ」
「うむ、私もお前にそう言ってもらえると嬉しいよ」
「年の割にはマナーもちゃんとしてますし、あの子ならきっと跡取り娘としても私以上にうまくやれると思いますわ。だけどあの子の婚約者を決めるときは、今度こそしっかり人となりを見極めましょうね、お父様。間違っても顔と家柄がいいだけの屑を選ぶことのない様に!」
クローディアが言うと、父は複雑な表情を浮かべていた。
執事や他に使用人たちも、ラングレー家の本館に女主人を迎えることを歓迎しているようだった。センスのいい義母なら、きっと家の中は今以上に良い雰囲気になるだろう。
学院ではグループ課題がいよいよ佳境に入ったこともあり、休み時間中はクローディア、ルーシー、ユージン、エドガーの四人で行動することが多くなった。昼休みに待ち合わせて一緒に食堂に入ると、周囲からひそひそと噂する声が聞こえてくる。
「え、あれラングレー嬢だよね? 昼休みはいつもアレク様アレク様と唱えながら生徒会室周辺を徘徊するのが日課だったのに」
「アレクサンダーのストーカーやめたって本当だったんだなぁ」
「婚約もラングレー嬢の方から解消を希望してるらしいね」
「あら、私はリーンハルト様とリリアナ殿下への当てつけだって聞きましたけど?」
「確かに、よりによってユージン殿下と一緒にいる辺りがそれっぽいよな」
学院生徒の間ではリリアナやアレクサンダーの主張している戯言と、クローディアが解消を望んでいると言う事実が拮抗している状態らしい。クローディアがすっぱり外見を変えてストーカー行為もやめていると言う事実のインパクトは大きいものの、やはり長年のイメージはそう簡単に払しょくできるものでもないのだろう。
(まあ仕方ないわよね、ほとんどアレクサンダーに取り憑いた悪霊みたいなポジションだったわけだし。時間が経てばそのうちみんなも分かるでしょ)
適当に聞き流しながら、昼食のメニューを選んでいると、ユージンが気遣うように「気にするなよ」と声をかけてきた。
「まあ、あんなモブの言うことなんて気にしたりなんかしませんわ」
「もぶ……?」
「いえ、こっちの話ですの。それよりお気遣いありがとうございます。優しいんですのね、ユージン殿下は」
クローディアが微笑みかけると、ユージンは「別に、普通だろう」と困ったように視線をそらした。王宮では過酷な立場に立たされていることを知ってしまったが、それでもこんな風に他人を気遣えるところはとても好ましいと思う。
四人で同じテーブルに付き、それぞれ選んだメニューを食べながら、課題について話し合っていると、入り口の方でざわめく声が聞こえてきた。
振り向くと、ピンクブロンドの王女を中心とした一団が食堂に入ってくるところだった。
義母は感じのいい人だったし、妹のソフィアはまさに天使と言って良い。あれだけ素直にクローディアを慕っていることからしても、義母はソフィアに対してクローディアの悪口を吹き込むようなことは一切やっていないのだろう。
二人が別館に帰った後、クローディアがさっそく父に「お義母様とソフィアが希望するなら、こちらの本館で一緒に暮らしても構いませんわ」と伝えたところ、父は感動に涙ぐんでいた。
「ありがとう、クローディア、ありがとう」
「どういたしまして。お義母様は良い方でしたし、ソフィアも本当に可愛い子でしたもの。あんな妹がいて嬉しいですわ」
「うむ、私もお前にそう言ってもらえると嬉しいよ」
「年の割にはマナーもちゃんとしてますし、あの子ならきっと跡取り娘としても私以上にうまくやれると思いますわ。だけどあの子の婚約者を決めるときは、今度こそしっかり人となりを見極めましょうね、お父様。間違っても顔と家柄がいいだけの屑を選ぶことのない様に!」
クローディアが言うと、父は複雑な表情を浮かべていた。
執事や他に使用人たちも、ラングレー家の本館に女主人を迎えることを歓迎しているようだった。センスのいい義母なら、きっと家の中は今以上に良い雰囲気になるだろう。
学院ではグループ課題がいよいよ佳境に入ったこともあり、休み時間中はクローディア、ルーシー、ユージン、エドガーの四人で行動することが多くなった。昼休みに待ち合わせて一緒に食堂に入ると、周囲からひそひそと噂する声が聞こえてくる。
「え、あれラングレー嬢だよね? 昼休みはいつもアレク様アレク様と唱えながら生徒会室周辺を徘徊するのが日課だったのに」
「アレクサンダーのストーカーやめたって本当だったんだなぁ」
「婚約もラングレー嬢の方から解消を希望してるらしいね」
「あら、私はリーンハルト様とリリアナ殿下への当てつけだって聞きましたけど?」
「確かに、よりによってユージン殿下と一緒にいる辺りがそれっぽいよな」
学院生徒の間ではリリアナやアレクサンダーの主張している戯言と、クローディアが解消を望んでいると言う事実が拮抗している状態らしい。クローディアがすっぱり外見を変えてストーカー行為もやめていると言う事実のインパクトは大きいものの、やはり長年のイメージはそう簡単に払しょくできるものでもないのだろう。
(まあ仕方ないわよね、ほとんどアレクサンダーに取り憑いた悪霊みたいなポジションだったわけだし。時間が経てばそのうちみんなも分かるでしょ)
適当に聞き流しながら、昼食のメニューを選んでいると、ユージンが気遣うように「気にするなよ」と声をかけてきた。
「まあ、あんなモブの言うことなんて気にしたりなんかしませんわ」
「もぶ……?」
「いえ、こっちの話ですの。それよりお気遣いありがとうございます。優しいんですのね、ユージン殿下は」
クローディアが微笑みかけると、ユージンは「別に、普通だろう」と困ったように視線をそらした。王宮では過酷な立場に立たされていることを知ってしまったが、それでもこんな風に他人を気遣えるところはとても好ましいと思う。
四人で同じテーブルに付き、それぞれ選んだメニューを食べながら、課題について話し合っていると、入り口の方でざわめく声が聞こえてきた。
振り向くと、ピンクブロンドの王女を中心とした一団が食堂に入ってくるところだった。
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