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28 リーンハルト家との交渉

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  帰宅すると、父が何やら大きな箱を持って待ち受けていた。

「お帰りクローディア、ヘレンにお前があの髪飾りを付けて行ったと伝えたら、それはもう大喜びしていたよ」
「それはようございました。お礼も伝えていただけましたか?」
「ああもちろんだ。それでヘレンは今日あの髪飾りを購入したのと同じ店に行って、他にもあれこれ買い求めてきたんだそうだ。いくつあっても困らないものだし、もし良かったら」

 父がそう言って箱の蓋を開けると、そこには様々な細工の美しい髪飾りがずらりと並んでいた。

「まあ、こんなにたくさん」

 クローディアは思わず苦笑した。多少やりすぎな感はあるが、クローディアと仲良くしたい意思は痛いほどに伝わってくる。義母は思っていたよりも面白い人なのかもしれない。

「どれも素敵ですわね。ありがたく頂戴いたしますわ、お父様」
「そうか、気に入ってくれてよかったよ」
「お礼に今度、お義母様をお茶会に招待したいのですが、あちらの都合をお聞きしていただけませんか?」
「え、ヘレンをこの家に呼んでもいいのかい?」
「はい。良かったら妹のソフィアも一緒に」
「ありがとうクローディア。二人ともきっと喜ぶよ」

 義母と直接顔を合わせるのは初対面の時以来で、会うのは少し緊張するが、今度はこちらから歩み寄るべき頃合いだろう。それに四歳になるソフィアと会うのはただ純粋に楽しみだ。転生前はちょうど同じ年頃の姪がいて、姉の家に遊びに行くたびに一緒に遊んだものである。

(お義母様は美人だから、ソフィアもきっと可愛いわよね。今まで勿体ないことをしたものだわ)

 会って問題なさそうなら、いずれはこの家で同居して本当の家族のようになれるかもしれない。

 その後いつものように父と夕食をとりながら、今日あったことをあれこれ話し合った。
 父によれば、リーンハルト家との話し合いは相変わらず平行線らしい。今までの支援金を返さないでいいことや、今後も援助は続けていく旨を申し出てみたのだが、やはり首を縦に振らないとのこと。

「まあリーンハルト家にしてみれば、いずれ息子が婿入りすることで、我がラングレー家の豊かな領地を自由にできるようになるわけだし、多少の援助などでは割に合わないと言うことなんだろうな」

 父はほとほと弱りはてた調子で言った。

「いっそこちらでもっと良い婿入り先でも見つけてやったら、喜んで応じてくれるのかもしれないが……」

 確かにそれは解決策の一つだが、現実的な話ではない。実際のところ、ラングレー家ほど条件が良い家はなかなか見つからないだろうし、仮に見つけられたとしても、リリアナに対する執着を隠しもしない男と今から婚約したがる令嬢がそうそういるとは思えない。
 少女漫画『リリアナ王女はくじけない!』においては、愛するリリアナ本人と結ばれる道が提示されているが、そのためにはまずリリアナが跡取り娘、すなわち将来の女王となる必要がある。

(リリアナが女王になることが確定すれば、アレクサンダーは大喜びで解消に応じるんだろうけど、あのピンク頭が女王って、それはそれでムカつくのよね)

 そのためにユージンが死ぬ未来はごめんだし、失脚するのも歓迎できない。
 他に考えられる手段と言えば――

(そうだわ……)

 そこでクローディアは一つの方法を思いついた。
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