「彼を殺して私も死ぬわ!」と叫んだ瞬間、前世を思い出しました~あれ? こんな人別にどうでも良くない? ~

雨野六月(まるめろ)

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24 宰相の息子たち

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「――で、アンダーソン嬢とも話していたんだけど、俺はどうせテーマが同じなら一緒に組んだらどうかって思ったんだよ。グループ課題で組むのは四人までならオッケーなわけだしちょうどいいんじゃないかって」

 互いに簡単な紹介が済んだ後、エドガーが提案した。

「それで私はその、クローディア様にうかがってからとお答えしたんです」

 ルーシーが横から言い添える。

「まあ、私は大歓迎ですわ! 殿下はいかがでしょうか」
「ああ、私ももちろん構わないよ」
「それじゃ決まりだな、これからよろしく、アンダーソン嬢、ラングレー嬢」
「こちらこそよろしくお願いいたしますわ、ランスウェル様。ところでつかぬことをうかがいますけど、ランスウェル様って生徒会書記のアーノルド・ランスウェル様の双子の弟さんですわよね?」
「まあそうだけど、それはあまり言わないでくれると嬉しいな。兄貴とはあまり仲良くないんだよね。喧嘩してるわけじゃないんだけど、どうもそりが合わないと言うか」

 エドガーは軽く肩をすくめた。

(やっぱりそうなのね……)

 宰相令息にして生徒会書記のアーノルド・ランスウェルは弟のエドガーと同じ金茶色の髪と瞳の美青年で、少女漫画『リリアナ王女はくじけない!』においては主要キャラの一人である。

 とはいえ華やかで堂々としたアレクサンダーやインテリ眼鏡のハロルド・モートン、陽気でお調子者のフィリップ、童顔美少年のノエルと比較すると、おっとりした癒し系のアーノルドはどちらかといえば地味で目立たないポジションだ。リリアナをひそかに思ってはいるが、報われようとは思わない、彼女が幸せならそれでいいと言う実に健気なキャラである。

 そんなアーノルドにとって最大の見せ場と言えば、なんといっても実の父親である宰相ランスウェルに対する断罪シーンだ。ランスウェル宰相は市井育ちの振る舞いが抜けないリリアナを見下し批判的な言動を繰り返す嫌味なおじさんキャラなのだが、その裏で不正を行っていたことがアーノルドの告発で明らかとなる。

 衆目の中で不正を暴かれた宰相は、涙ながらに「私は国のためにやったのです!」「綺麗ごとだけではこの国はたちゆきません!」と訴えるが、国王は冷たく宰相の捕縛を命じる。結果としてランスウェル宰相は投獄され、ランスウェル侯爵家自体も処分を受けることになるのだが、双子の弟のエドガーは兄アーノルドに対して「何も衆目の中でいきなり暴露することはないだろう。嫡男ならもっと先にやるべきことがあったんじゃないか」と恨みがましく食って掛かるキャラとして登場するのだ。

 当時の掲示板の反応としては「弟うぜぇ」「不正した親父が悪いんだろ」「弟も親父と一緒に投獄しとけ」というのが大半だったが、中には「いきなり公的な場で暴露する息子もさすがにどうよ」「もうちょっと穏便なやり方もあったんじゃないの」という意見もないではなかった。

(まあ不正と言っても私腹を肥やすたぐいではなかったようだし、エドガーの言い分も分かるのよね)
 
 そもそもアーノルドが父を告発したのは、リリアナ批判を繰り返す父に対して業を煮やした結果であることを思うと、あまり純粋な動機とも思われない。目の前の気のいい青年がこのまま実家の没落に巻き込まれてしまうのは気の毒だし、それとなく宰相の不正について忠告できるといいのだが。

(まあ、一緒にやっていくうちに、いずれ機会はあるわよね)

 クローディアは一人頷いた。
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