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12 お昼休みの過ごし方
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そんなこんなで一限目は散々だったが、それ以降は特に不快なこともなく、昼休みになるまでしごく順調に授業を受けることができた。当てられてもきちんと答えるクローディアに、他の教師たちは皆驚きつつも満足げな態度を示し、「その調子で頑張りなさい」と声をかけてくれる者もいた。
(まあこれが真っ当な教師の反応というものよね)
そして午前の授業が終わり、昼休みがやってきた。アレクサンダーは待ち構えていたように席を立つと、そそくさと教室を出て行った。向かう先は言わずと知れた生徒会室だ。
リリアナが来る前のアレクサンダーは教室で友人たちと昼食をとるのが常だったが、リリアナが来て以降は生徒会室でリリアナと一緒に食べるようになっていた。
ちなみに他の生徒会役員たちも、リリアナが来て以降は生徒会室に集って一緒に昼食をとっている。傍から見るとまるで王女様を囲む逆ハーレムそのものだ。
かつてのクローディアはそれが許せなくて、「アレク様! 私もご一緒させてください」と生徒会室に押し入ろうとしては追い返され、それでも諦めきれずに昼休みの間中生徒会室周辺をうろつきまわっていたものである。そのおかげで毎回昼食を食べ損ねてしまうため、クローディアの不健康の一因にもなっていた。
少女漫画『リリアナ王女はくじけない!』では、「あの子、まだ外にいるみたいだよ」「うわぁ窓から覗いてる! 早くカーテンを閉めろ!」なんてギャグ調で書かれていたが、自分がその立場になってみると、なかなか笑えない状況だ。今のクローディアはむろんそんな面倒な真似をするつもりはさらさらない。
(美容と健康のためにも、昼食はしっかり取らないとね。一人で食べてもいいけど、一緒に食べる相手がいるもっといいわ。もちろんアレクサンダーみたいな無礼な男じゃなくて、まともな常識のある女生徒で)
教室内を見回すと、一人で昼食をとっている生徒の姿もちらほら見える。その中にはルーシー・アンダーソンの姿もあった。ルーシーはどこか所在なさげに、うつむいてサンドウィッチを食べている。
なんとなくそちらを見ていると、ふいに彼女と目が合った。クローディアは咄嗟に笑顔を作って声をかけた。
「……アンダーソン様もお一人ですの?」
「……はい」
「あの、もしよろしければ、一緒にいただいても構わないでしょうか」
「え? あ、はい。ご一緒しましょう」
そういうルーシーの表情はうれし気で、クローディアは心が温まるのを感じた。彼女もクローディアと同様に、誰かと一緒に昼食を取りたかったのかもしれない。
ルーシー・アンダーソンは由緒正しいアンダーソン伯爵家の令嬢だ。内気だが成績はトップクラスの優等生で、見た目だって悪くない。それなのにクラス内での立場があまりよくないのは、彼女の婚約者であるフィリップ・エヴァンズの影響だろう。
フィリップは騎士団長の息子で生徒会庶務を務めているのだが、リリアナ王女が現れて以来彼女に首ったけになってしまい、ルーシーを露骨にないがしろにするようになっていた。おかげで「婚約者に相手にされない令嬢」として、ルーシーはなんとなく見下されるようになってしまったのである。
(本当に厄介な王女様だわ)
クローディアはランチボックスをもっていそいそとルーシーの向かいに移動した。
(まあこれが真っ当な教師の反応というものよね)
そして午前の授業が終わり、昼休みがやってきた。アレクサンダーは待ち構えていたように席を立つと、そそくさと教室を出て行った。向かう先は言わずと知れた生徒会室だ。
リリアナが来る前のアレクサンダーは教室で友人たちと昼食をとるのが常だったが、リリアナが来て以降は生徒会室でリリアナと一緒に食べるようになっていた。
ちなみに他の生徒会役員たちも、リリアナが来て以降は生徒会室に集って一緒に昼食をとっている。傍から見るとまるで王女様を囲む逆ハーレムそのものだ。
かつてのクローディアはそれが許せなくて、「アレク様! 私もご一緒させてください」と生徒会室に押し入ろうとしては追い返され、それでも諦めきれずに昼休みの間中生徒会室周辺をうろつきまわっていたものである。そのおかげで毎回昼食を食べ損ねてしまうため、クローディアの不健康の一因にもなっていた。
少女漫画『リリアナ王女はくじけない!』では、「あの子、まだ外にいるみたいだよ」「うわぁ窓から覗いてる! 早くカーテンを閉めろ!」なんてギャグ調で書かれていたが、自分がその立場になってみると、なかなか笑えない状況だ。今のクローディアはむろんそんな面倒な真似をするつもりはさらさらない。
(美容と健康のためにも、昼食はしっかり取らないとね。一人で食べてもいいけど、一緒に食べる相手がいるもっといいわ。もちろんアレクサンダーみたいな無礼な男じゃなくて、まともな常識のある女生徒で)
教室内を見回すと、一人で昼食をとっている生徒の姿もちらほら見える。その中にはルーシー・アンダーソンの姿もあった。ルーシーはどこか所在なさげに、うつむいてサンドウィッチを食べている。
なんとなくそちらを見ていると、ふいに彼女と目が合った。クローディアは咄嗟に笑顔を作って声をかけた。
「……アンダーソン様もお一人ですの?」
「……はい」
「あの、もしよろしければ、一緒にいただいても構わないでしょうか」
「え? あ、はい。ご一緒しましょう」
そういうルーシーの表情はうれし気で、クローディアは心が温まるのを感じた。彼女もクローディアと同様に、誰かと一緒に昼食を取りたかったのかもしれない。
ルーシー・アンダーソンは由緒正しいアンダーソン伯爵家の令嬢だ。内気だが成績はトップクラスの優等生で、見た目だって悪くない。それなのにクラス内での立場があまりよくないのは、彼女の婚約者であるフィリップ・エヴァンズの影響だろう。
フィリップは騎士団長の息子で生徒会庶務を務めているのだが、リリアナ王女が現れて以来彼女に首ったけになってしまい、ルーシーを露骨にないがしろにするようになっていた。おかげで「婚約者に相手にされない令嬢」として、ルーシーはなんとなく見下されるようになってしまったのである。
(本当に厄介な王女様だわ)
クローディアはランチボックスをもっていそいそとルーシーの向かいに移動した。
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