「彼を殺して私も死ぬわ!」と叫んだ瞬間、前世を思い出しました~あれ? こんな人別にどうでも良くない? ~

雨野六月(まるめろ)

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11 学院教師ハロルド・モートン

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 二度目に当てられた時もクローディアはちゃんと正解を答えたが、モートンはまぐれだろうと言わんばかりに、ふんと鼻で笑って見せた。おかげでクローディアはモートンの授業が終わるまで不快な気分を味わった。

(なによあの陰険眼鏡、ああもうムカつく!)

 確かに今までの授業態度には問題があったかもしれないが、こうして真面目に予習してきた生徒をわざわざ馬鹿にして嫌味を言うことはないだろう。それまで単なる「苦手な教師」程度だったモートン先生の株は、ここで一気に暴落した。

 ちなみに少女漫画『リリアナ王女はくじけない!』において、ハロルド・モートンは主要キャラクターの一人である。主人公リリアナ視点では、モートンはちょっと意地悪だが根は優しくて思いやりに満ちた年上男性であり、何かとリリアナを気にかけてくれる「ツンデレ教師」として一部の読者に人気があった。

 作中におけるモートンは、最初は赤点ばかりのリリアナに呆れながらも根気よく個人授業を行って、リリアナの成績が上がったときにはそれは嬉し気に微笑んで見せたものである。モートンが見せた笑顔のインパクトは絶大で、一気にモートンファンが激増した名シーンとまで言われている。

 ちなみにクローディアの前世である小林玲子もモートンには好感を持っていた。リリアナに対する態度はあくまで熱心な教師の範疇を出ないものだと思っていたし、仮にそれ以上の感情があったとしても、態度に出さないのなら問題はないと思っていたからだ。むしろアレクサンダーのように婚約者がいるわけでもないのに、教師と生徒という立場を考えて自重している姿を好ましいとまで思っていたのである。しかし同じ学院生徒であるクローディアへの態度を知ってしまえば、印象はまるで異なってくる。

(モートン先生ってリリアナを露骨に贔屓してたのね。リリアナ視点じゃ気づかなかったわ)

 クローディアがリリアナに敵意を抱いているのは学院内でも有名なので、もしかするとそのこともあって、モートンはクローディアを毛嫌いしているのかもしれない。むろん人間である以上好き嫌いがあるのは仕方のないことだが、仮にも教師があんな風に態度に出すのはないだろう。

(意地でもしっかり勉強してやるわ。授業では絶対に間違えないし、試験ではお気に入りのリリアナよりも上位の成績を取ってやる。落第してあいつの授業をもう一年余計に受けるなんて冗談じゃないもの)

 とはいえ長年さぼっていただけあって、理解があやふやなところは少なくない。教科書を読んでの独学だけでは限界があるし、分からないところを聞ける相手は必須だろう。

(お父様に頼んで家庭教師をつけてもらおうかしら)

 教科書をにらみながら、クローディアはそんなことを考えていた。

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