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9 教室での爆弾発言
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アレクサンダーが立ち去ったあと、クローディアは深々とため息をついた。どうやら自分の婚約者はずいぶんと思い込みの激しいタイプだったらしい。
(まあアレクサンダーはプライドが高いから、自分があのクローディア・ラングレーに振られたなんて認めたくないのかもしれないわね)
クローディアは「リーンハルト家が反対しても、アレクサンダー本人がはっきり婚約解消に同意してくれたなら、それを突破口にできるのではないか」と内心期待していたのだが、当のアレクサンダーがあの調子ではその線は難しくなってきた。彼との婚約解消には思っていた以上に時間がかかりそうである。
(それでも頑張るしかないわね。あの男と結婚するなんて冗談じゃないもの)
クローディアは己に気合を入れ直した。
気を取り直して元の教室に戻ると、先に戻っていたアレクサンダーがクラスメイトたちと談笑する声が耳に飛び込んできた。
「いや別に大したことじゃないんだよ。クローディアがまた俺の気を惹こうとしておかしなことを始めたから、ちょっと釘を刺しただけなんだ」
「ああ、そういうことか。お前も婚約者があれだと苦労するな」
「でもラングレー嬢って見た目は大分マシになったよな。あれなら付きまとわれてもそんなに悪い気はしないんじゃないか」
「いやいや、見た目は美少女でも中身がどうしようもないからな。そうだろ? アレクサンダー」
「ああ、正直言って手を焼いてるよ」
アレクサンダーがいかにもうんざりした調子で言うと、クラスメイトたちは「だよなぁ」「いくら見た目が良くてもあれじゃぁな」となどと口にしながら、戻ってきたばかりのクローディアに冷たい視線を向けてくる。
クローディアはあまりの理不尽さに思わず奥歯をかみしめた。それは確かに、今までのクローディアの行動はストーカーそのものだったし、アレクサンダーに迷惑をかけていた面は否定できない。しかし今回の件に関していえば、完全にアレクサンダーの言いがかりである。
クローディアがイライラしながら自分の席に戻ると、ルーシー・アンダーソンが気遣うようにこちらを見つめているのに気が付いた。クローディアは笑顔で口を開いた。
「アンダーソン様、先ほどは話の途中でいなくなって失礼しました。リーンハルト様は本当に強引で身勝手で困ってしまいますわ」
クローディアはあえて周囲に聞こえるような声音で言った。
「それで先ほどのリボンの話の続きですけれど、実は私、リーンハルト様にはほとほと愛想が付きましたの!」
「まあ、そうなのですか?」
「ええ。だから赤いリボンはやめることにしたのです。私とリーンハルト様の婚約についても、先日父にお願いして、リーンハルト公爵家に対して正式に解消を打診したところですの」
クローディはそこでいったん言葉を切った。いつの間にやら教室中がしんと静まり返っている。クラスメイト達は皆固唾をのんでクローディアの話の続きを待ち受けているようだった。
「それで、どうなったのですか?」
「打診はしたのですけれど、リーンハルト家からは了承を得られなかったのです。おまけにさっきはリーンハルト様ご本人から、婚約解消なんておかしなことを言うなって凄まれてしまって……本当に困ってしまいますわ!」
教室中が聞き入る中、クローディアは明瞭な口調で言いきった。
(まあアレクサンダーはプライドが高いから、自分があのクローディア・ラングレーに振られたなんて認めたくないのかもしれないわね)
クローディアは「リーンハルト家が反対しても、アレクサンダー本人がはっきり婚約解消に同意してくれたなら、それを突破口にできるのではないか」と内心期待していたのだが、当のアレクサンダーがあの調子ではその線は難しくなってきた。彼との婚約解消には思っていた以上に時間がかかりそうである。
(それでも頑張るしかないわね。あの男と結婚するなんて冗談じゃないもの)
クローディアは己に気合を入れ直した。
気を取り直して元の教室に戻ると、先に戻っていたアレクサンダーがクラスメイトたちと談笑する声が耳に飛び込んできた。
「いや別に大したことじゃないんだよ。クローディアがまた俺の気を惹こうとしておかしなことを始めたから、ちょっと釘を刺しただけなんだ」
「ああ、そういうことか。お前も婚約者があれだと苦労するな」
「でもラングレー嬢って見た目は大分マシになったよな。あれなら付きまとわれてもそんなに悪い気はしないんじゃないか」
「いやいや、見た目は美少女でも中身がどうしようもないからな。そうだろ? アレクサンダー」
「ああ、正直言って手を焼いてるよ」
アレクサンダーがいかにもうんざりした調子で言うと、クラスメイトたちは「だよなぁ」「いくら見た目が良くてもあれじゃぁな」となどと口にしながら、戻ってきたばかりのクローディアに冷たい視線を向けてくる。
クローディアはあまりの理不尽さに思わず奥歯をかみしめた。それは確かに、今までのクローディアの行動はストーカーそのものだったし、アレクサンダーに迷惑をかけていた面は否定できない。しかし今回の件に関していえば、完全にアレクサンダーの言いがかりである。
クローディアがイライラしながら自分の席に戻ると、ルーシー・アンダーソンが気遣うようにこちらを見つめているのに気が付いた。クローディアは笑顔で口を開いた。
「アンダーソン様、先ほどは話の途中でいなくなって失礼しました。リーンハルト様は本当に強引で身勝手で困ってしまいますわ」
クローディアはあえて周囲に聞こえるような声音で言った。
「それで先ほどのリボンの話の続きですけれど、実は私、リーンハルト様にはほとほと愛想が付きましたの!」
「まあ、そうなのですか?」
「ええ。だから赤いリボンはやめることにしたのです。私とリーンハルト様の婚約についても、先日父にお願いして、リーンハルト公爵家に対して正式に解消を打診したところですの」
クローディはそこでいったん言葉を切った。いつの間にやら教室中がしんと静まり返っている。クラスメイト達は皆固唾をのんでクローディアの話の続きを待ち受けているようだった。
「それで、どうなったのですか?」
「打診はしたのですけれど、リーンハルト家からは了承を得られなかったのです。おまけにさっきはリーンハルト様ご本人から、婚約解消なんておかしなことを言うなって凄まれてしまって……本当に困ってしまいますわ!」
教室中が聞き入る中、クローディアは明瞭な口調で言いきった。
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