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6 真っ赤なリボン
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療養期間が開けた当日の朝。
侍女のサラがクローディアの髪を巻いて両サイドに真っ赤なリボンを結ぼうとするのに対し、クローディアは「それは似合わないからいらないわ」と断った。
「ではこちらのリボンにしましょうか。それとも最近購入なさったこちらの方がよろしいですか?」
「そうじゃなくて、両サイドに赤いリボンをつけるのをやめようと思うの」
「え? お嬢様は赤いリボンはご自分のトレードマークだから絶対つけるんだとおっしゃっていたではありませんか?」
「言っていたけど、気が変わったのよ」
両サイドに結ばれた大振りの真っ赤なリボン。それはクローディアがアレクサンダーと初めて会った時に「赤いリボンが可愛いね」と褒められた幸せな思い出の象徴だ。
ちなみに少女漫画『リリアナ王女はくじけない!』よれば、両親からクローディアを褒めるよう言われたアレクサンダーが、せめてもの抵抗としてクローディア本人ではなくリボンを褒めたというのがことの真相なのだが、真に受けたクローディアは「こういうのがアレク様の好みなのね!」と本気で信じ込んでしまう。そして様々なデザインの赤いリボンを買い求めては、毎日つけていたのである。
まったくもっていじらしいことこの上ない。
「幼い頃はともかく、今の私に赤いリボンは似合わないわ。しかも両サイドなんてさすがに子供っぽすぎるし」
クローディアが言うと、サラは大きくうなずいた。
「そうですね。実は私も以前からそう思っておりました!」
だったら言って欲しかった。まあ言ったところで以前のクローディアならきかなかったかもしれないが。
「それじゃ髪形はいかがいたしましょう」
「貴方に任せるわ」
「それじゃハーフアップにいたしますね。髪飾りは――」
「今日はなしでいいわ」
いずれ今のクローディアに似合うシンプルで上品な髪飾りを購入する予定である。
「それからメイクも薄く、学生らしい感じにして」
「かしこまりました」
今までは赤いリボンに合わせて真っ赤な口紅を塗りたくっていた上に、ここ最近は血色の悪さをごまかすために頬紅をべったりつけていたため、ほとんど妖怪じみていた。もうあんな無茶な化粧はまっぴらだ。
サラはクローディアの希望をきちんとくみ取って、学生らしい清楚な感じに仕上げていく。
「お嬢様、こんな感じでいかがでしょう」
鏡を見ると、そこに映っていたのは艶やかな黒髪に青い瞳が印象的な、ややきつい顔立ちの美少女だった。漫画では不気味なキャラクターとして書かれていたクローディアだが、元々の顔立ち自体は悪くない。いや喪女だった頃と比べると、まぶしいほどに整っていると言っていい。
(アレクサンダーはリリアナみたいなおめめぱっちりの可愛いタイプが好きみたいだけど、私はクローディアみたいなクールビューティー系の方が断然好みだわ)
こんな綺麗な子になれただけでも、生まれ変わったかいがあったというものだ。あとはさっさとアレクサンダーと縁が切れさえすれば申し分がないのだが。
「ありがとう、これでいいわ」
鏡を見ながらクローディアは笑顔で頷いた。
侍女のサラがクローディアの髪を巻いて両サイドに真っ赤なリボンを結ぼうとするのに対し、クローディアは「それは似合わないからいらないわ」と断った。
「ではこちらのリボンにしましょうか。それとも最近購入なさったこちらの方がよろしいですか?」
「そうじゃなくて、両サイドに赤いリボンをつけるのをやめようと思うの」
「え? お嬢様は赤いリボンはご自分のトレードマークだから絶対つけるんだとおっしゃっていたではありませんか?」
「言っていたけど、気が変わったのよ」
両サイドに結ばれた大振りの真っ赤なリボン。それはクローディアがアレクサンダーと初めて会った時に「赤いリボンが可愛いね」と褒められた幸せな思い出の象徴だ。
ちなみに少女漫画『リリアナ王女はくじけない!』よれば、両親からクローディアを褒めるよう言われたアレクサンダーが、せめてもの抵抗としてクローディア本人ではなくリボンを褒めたというのがことの真相なのだが、真に受けたクローディアは「こういうのがアレク様の好みなのね!」と本気で信じ込んでしまう。そして様々なデザインの赤いリボンを買い求めては、毎日つけていたのである。
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「それじゃ髪形はいかがいたしましょう」
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いずれ今のクローディアに似合うシンプルで上品な髪飾りを購入する予定である。
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今までは赤いリボンに合わせて真っ赤な口紅を塗りたくっていた上に、ここ最近は血色の悪さをごまかすために頬紅をべったりつけていたため、ほとんど妖怪じみていた。もうあんな無茶な化粧はまっぴらだ。
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鏡を見ながらクローディアは笑顔で頷いた。
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