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7 久しぶりの登校
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クローディアが伯爵家の馬車から降り立つと、正面にそびえたつ王立学院が目に映った。12歳のころから毎日通っている学院だが、クローディアの学院生活はひたすらアレク様アレク様アレク様に終始して、ろくな思い出も作れていない。
(これからはアレクサンダーにもリリアナにも関わらないわ。ちゃんと勉強して、友達を作って、有意義な学院生活を送るのよ)
教室に入り、席について一時限目の教科書を広げていると、周囲からひそひそと囁きかわす声が聞こえた。
「え、あれ誰? あそこってラングレー嬢の席だよな?」
「ラングレー嬢に似てるような気がするけど……まさか本人?」
「嘘だろ? いつもの真っ赤なリボンと口紅は?」
「信じられない、化粧も普通だし、まるで別人じゃないか」
「ああしてみると、ラングレー嬢って美人なんだな」
「俺、結構好みかも」
今まで彼らはクローディアを「生徒会長アレクサンダーに付きまとう不気味な妖怪」扱いして嘲笑していたというのに、手のひら返しが凄まじい。
男子生徒たちの勝手な発言に呆れつつ、せっせと予習に励んでいると、見覚えのある茶色い髪の令嬢が教室に入ってくるのが目に映った。
「お早うございます、アンダーソン様」
クローディアが明るく声をかけると、令嬢はとまどったような表情を浮かべて「お早うございます」と挨拶を返した。
伯爵令嬢ルーシー・アンダーソン。
彼女の婚約者もアレクサンダーほどではないものの、リリアナ王女と仲がいい。
それゆえルーシーとクローディアはいわばリリアナの被害者仲間として、ときおり言葉を交わす間柄だ。友人というほど親しくはないが、クローディアにも普通に接してくれる数少ないクラスメイトである。
「あの、ラングレー様……ですよね?」
「はい。いかにもクローディア・ラングレーですわ」
「なんだか……随分印象が変わられたのですね」
「ええ、ちょっとした気分転換ですの。アンダーソン様から見ていかがでしょうか」
「そちらの方がずっとお似合いだと思いますわ」
「ふふ、ありがとうございます」
「ですが、いいんですの? その、赤いリボンはリーンハルト様との思い出の品では?」
「ええ、そのことなんですけど、私はもうリーンハルト様のことは……」
クローディアが婚約解消するつもりであることを説明しかけたとき、どさりと荷物を取り落とす音がした。
「クローディア……なのか?」
振り向けばアレクサンダー・リーンハルトが呆然とした表情を浮かべて立っていた。
(これからはアレクサンダーにもリリアナにも関わらないわ。ちゃんと勉強して、友達を作って、有意義な学院生活を送るのよ)
教室に入り、席について一時限目の教科書を広げていると、周囲からひそひそと囁きかわす声が聞こえた。
「え、あれ誰? あそこってラングレー嬢の席だよな?」
「ラングレー嬢に似てるような気がするけど……まさか本人?」
「嘘だろ? いつもの真っ赤なリボンと口紅は?」
「信じられない、化粧も普通だし、まるで別人じゃないか」
「ああしてみると、ラングレー嬢って美人なんだな」
「俺、結構好みかも」
今まで彼らはクローディアを「生徒会長アレクサンダーに付きまとう不気味な妖怪」扱いして嘲笑していたというのに、手のひら返しが凄まじい。
男子生徒たちの勝手な発言に呆れつつ、せっせと予習に励んでいると、見覚えのある茶色い髪の令嬢が教室に入ってくるのが目に映った。
「お早うございます、アンダーソン様」
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伯爵令嬢ルーシー・アンダーソン。
彼女の婚約者もアレクサンダーほどではないものの、リリアナ王女と仲がいい。
それゆえルーシーとクローディアはいわばリリアナの被害者仲間として、ときおり言葉を交わす間柄だ。友人というほど親しくはないが、クローディアにも普通に接してくれる数少ないクラスメイトである。
「あの、ラングレー様……ですよね?」
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「なんだか……随分印象が変わられたのですね」
「ええ、ちょっとした気分転換ですの。アンダーソン様から見ていかがでしょうか」
「そちらの方がずっとお似合いだと思いますわ」
「ふふ、ありがとうございます」
「ですが、いいんですの? その、赤いリボンはリーンハルト様との思い出の品では?」
「ええ、そのことなんですけど、私はもうリーンハルト様のことは……」
クローディアが婚約解消するつもりであることを説明しかけたとき、どさりと荷物を取り落とす音がした。
「クローディア……なのか?」
振り向けばアレクサンダー・リーンハルトが呆然とした表情を浮かべて立っていた。
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