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   第三章 ガーランド家の女主人として


 翌日。気持ちを切り替えたセシリアは、執事のジェームズに屋敷内を案内するように申し付けた。
 貴族の妻にとって最も重要な仕事は家のために跡取りを産むことだが、次いで重要なのは家政の取り仕切りと貴婦人としての社交である。そして家政を取り仕切るには、まず屋敷について把握しておく必要がある。
 ジェームズはさすがに心得たもので、あれこれ解説を交えながら、屋敷の主要な部分を手際よく案内してくれた。
 当主の使う執務室に書斎、大広間、客間、サンルーム、家族共用の図書室、音楽室、美術室、撞球どうきゅう室、ラルフも幼いころを過ごしたという子供部屋、裁縫室、厨房から地下のワインセラーに至るまで、ガーランド邸は伝統ある名門侯爵家だけあって、その作りは重厚で、それは見事なものだった。

「いかがでしょう、ガーランド邸は」
「とても素晴らしいわね」

 セシリアはお世辞抜きでそう答えた。

「だけどあちこち修繕しゅうぜんの余地もありそうね。……特にカーテンと壁紙は随分と古びているようだけど、なにかこだわりでもあるのかしら」
「いいえ。ガーランド家の恥をお話しするようですが、単に改装費用がなかっただけです」
「まあ、そうなの。それじゃ費用さえあれば、すべて取り換えても構わないのね?」
「もちろんですとも。すべて奥様のお好きなように模様替えなさってくださいませ」
「それじゃガーランド家がいつも使っている商会から見本を取り寄せてちょうだい」
「かしこまりました。従僕に申し付けて、すぐにでも取りに行かせましょう」

 ジェームズの口調は相変わらず慇懃いんぎんそのものだったが、その声音から隠しきれない喜びが伝わってきて、セシリアは内心苦笑した。おそらくジェームズとしても、早く新調したかったのだろう。

(改装を終えたら、他の使用人たちも少しは喜んでくれるかしら)

 屋敷を自分好みに整えて、使用人とも信頼関係を築いて、そんな風にして少しずつ、この家に馴染んでいければと思っていた。そのときは。


      ◇ ◇ ◇


 午後になり、さっそくカーテンと壁紙の見本がセシリアのもとに届けられた。
 ガーランド家御用達のレイノール商会のデザインは、セシリアの実家が使っているバークリー商会のものと比べると若干やぼったく感じられたものの、あれこれ探すうちに「これは」と思うものをいくつか見つけることができた。

(やっぱりこれかこれかしら。ラルフ様も気に入ってくださるといいんだけど)

 セシリアが候補を絞ってラルフに相談を持ち掛けると、ラルフも目を細めて「嬉しいな。私もカーテンと壁紙については前から気になっていたんだよね」と喜んだ。

「このどちらかにしようかと思っているのですが、なにか問題があるでしょうか」
「ううん、どっちも素敵だと思うよ。セシリアはやっぱりセンスがいいね」
「ふふ、ありがとうございます。それじゃ正式に決まったらまたお知らせしますね」
「ああ、楽しみにしているよ」

 そうして話がまとまりかけたとき、アンジェラが血相を変えて押しかけてきた。

「マーサに聞いたんだけど、この家のカーテンと壁紙を一新するって本当なの?」
「はい。今あるのは大分古びてるので、換えよう思っているんです。アンジェラさんにとっては思い入れのあるカーテンなのかもしれませんが――」

 セシリアが弁解するように言うと、アンジェラは「あら、私は替えるの大賛成よ」と満面の笑みを浮かべて言った。

「そうなんですか?」
「ええそうよ。今あるのはちょっと辛気臭いでしょう? カーテンも壁紙も素敵なピンクにしたらぱっと明るくなるのにって、前からずっと思ってたのよ」
「申し訳ありませんが、ピンクにする予定はないんです」

 ピンクのカーテンと壁紙なんてまるで場末の娼館のようだし、候補の候補にすら入っていない。

「まあ駄目よ、絶対ピンクじゃなきゃ」
「アンジェラさん、お気持ちはわかりますが、ここは私に任せていただけませんか?」

 屋敷の内装を自分好みに整えるのは女主人の特権である。
 当主であるラルフの意見を参考にするのはともかく、単なる居候いそうろうにすぎないアンジェラに口を出される筋合いはない。
 ところがアンジェラは傲然ごうぜんと胸を張ってこう主張した。

「駄目よ。セシリアさんの気持ちはわかるけど、決めるのは私。だって小母おば様が次に内装を変えるときは私の好みにしていいって約束してくれたんだもの!」
「お義母様が?」
「そうよ。私ずっと楽しみにしてたんだから。ねえ、ラルフも覚えているでしょう?」

 アンジェラが甘えた声で話を振ると、ラルフは「そうだな。そういえばそんなことを言っていたような気がするな」とうなずいた。
 そしてラルフはセシリアの方に向き直ると、とんでもないことを言い出した。

「セシリア、悪いけどそういうことだから、カーテンと壁紙はアンジェラに決めさせてやってくれないか?」
「……申し訳ありませんが、それは承服できません。屋敷の内装を整えるのは、当主の妻である私の役割です」
「うん、内装を決めるのは女主人の役割であることは分かっているよ。だけど前の女主人である母が約束したことだから仕方ないだろう?」
「私はお義母様からなにもうかがっておりませんが」
「母が伝え忘れたんだね、それは息子である私から謝罪するよ。とにかく君は後から来たんだから、少しは合わせてもらえないかな」
(後から来たって……)

 セシリアは当主の妻として、ラルフと共にガーランド家の新たな歴史を築くために遠方から嫁いできたのである。
 単なる居候いそうろうにすぎないアンジェラとは根本的に立場が違うのに、単なる「先住者」と「新参者」の文脈で扱うのは明らかにおかしい。
 アンジェラが思うままに内装を整えたいのなら、自分自身が嫁いだ先でやればいいだけの話である。
 セシリアは以上の内容を、言いまわしに気を付けながらも必死にラルフに訴えた。
 ラルフはセシリアの言い分に途中まで納得しかけたものの、その後アンジェラが「私は身体が弱いから結婚なんてできっこないのに、分かったうえでそんな意地悪言ってるの?」と泣き落としに打って出ると、結局アンジェラの肩を持った。

「なあセシリア、君の言い分も分からないではないけどさ。アンジェラはこの通り身体が弱いんだし、君は健康なんだから、少しくらいアンジェラのことを気遣ってやってもいいんじゃないかな」

 その後もラルフは頑として譲らずに、結局屋敷の改装はアンジェラ主導で行われることになってしまった。
 アンジェラの選んだローズピンクのカーテンとベビーピンクの壁紙は悪趣味極まりないもので、こんな家に客人を招いてもてなすことを思うと、セシリアは暗澹あんたんたる気持ちに襲われた。
 もっともそれはセシリアの杞憂きゆうに終わった。
 そもそも客人を招いてもてなすことを、アンジェラがよしとしなかったからである。
 セシリアが近隣の上流階級の夫人たちを招いてお茶会をもよおそうとしたところ、早速アンジェラの横やりが入った。

「私、あの人たちって苦手なのよ。騒がしいし、私に意地悪なことばっかり言うんだもの」
「アンジェラさん、おもてなしするのは私ですし、アンジェラさんがお嫌なら、出席なさらなくても構いませんから」
「それでも嫌よ。館の中にあの人たちがいるってだけで、なんだか落ち着かないじゃない」
「セシリア、アンジェラがここまで嫌がってるんだし、無理にお茶会を開かなくてもいいんじゃないか?」

 ラルフはここでもアンジェラの肩を持った。

「そういうわけにはいきません。とにかく一度だけでもお茶会をもよおさなければ、地域社会で笑いものになってしまいます」

 新しく嫁いできた女主人は、まず近隣に住む夫人たちを招いてお茶会をもよおすのが慣例だ。そして後日夫人たちからお返しとしてのお茶会に招かれて、そこから社交が始まるのである。
 このままお茶会を開かなければ、「あそこの女主人は常識がない。まともに社交もできないのか」とのそしりを受けかねない。恥をかくのはセシリアだ。
 しかしセシリアの訴えを、ラルフは笑って一蹴した。

「大丈夫だよ。この辺りの人たちはみんなおっとりしてるから、そんなこといちいち気にしないよ。『ガーランド家の新しい女主人はちょっと内気で引っ込み思案なんだな』って、みんな笑って許してくれるさ」

 セシリアの体面をあまりにも軽く扱う発言に、セシリアは思わず唇をかんだ。
 そもそもなぜセシリアが「笑って許して」もらわなければならないのだろう。セシリアは別に内気でも引っ込み思案でもないというのに。

(やっぱりこの家は少しおかしいわ……)

 この家はすべてアンジェラを中心に回っている。
 ラルフも使用人もすべてがアンジェラアンジェラだ。
 何より異常なのは、ラルフが夜になるたび体調を崩すアンジェラに付き添い続けていることである。
 おかげで嫁いで半月になるというのに、二人の関係は白い結婚のままだった。


      ◇ ◇ ◇


「結局昨夜もいらっしゃらなかったわね……」

 鳴きかわす小鳥の声を聞きながら、セシリアはもう何度目かも分からないため息をついた。
 お茶会の一件からさらに半月が過ぎたが、ラルフとセシリア、そしてアンジェラの奇妙な関係は何一つ変わらないままである。
 ラルフは相変わらず毎晩アンジェラに付き添っているため、夫婦の寝室を訪れない。
 食事中もラルフはアンジェラと昔の話題で盛り上がってしまい、セシリアは会話に入れない。
 そのうえセシリアが遠乗りに誘っても、芝居見物に誘っても、ラルフは「すまないがアンジェラは乗馬が大の苦手なんだよ」「すまないがアンジェラは長い間人混みにいると気持ちが悪くなるんだよ」と言って拒否。
 そこでセシリアが二人で行こうと言おうものなら、「なぜ君はアンジェラを疎外そがいしようとするんだ。君には思いやりというものがないのかい?」と青筋を立てて怒り出す始末である。

(一体どうしたものかしら)

 セシリアがベッドに座り込んだまま頭を悩ませていると、ノックの音が室内に響いた。

「お早うございます。お顔を洗う湯をお持ちしました」

 セシリアが返事をすると、いつものように洗面器を手にしたアンナが入ってきた。

「昨夜も良くお休みになれたようですね」

 アンナはにやにや笑いながら言うと、洗面器をサイドテーブルに置いた。
 湯気がたっていないのを不審に思いながら指先を付けると、ひやりとした冷たさに身震いが出る。

「冷たいわ。これじゃただの水じゃないの。ちゃんと温かいお湯を持ってきてちょうだい」
「今朝は気温が高いので、それくらいがちょうど良いと思いますよ」
「どれくらいがちょうど良いかは私が決めるわ。ちゃんと温かいものを持ってきなさい」

 セシリアがぴしりというと、アンナはいかにも不満そうな顔をしながら、洗面器を持って出て行った。
 アンナは元から態度の良い使用人ではなかったが、ここ最近の振る舞いは目に余る。
 お茶を頼めば妙にぬるくて薄かったり、逆に渋すぎたりといった酷い代物しろものを出してくるし、セシリアの髪を結い上げるときも手つきがやたらと乱暴で、悲鳴が漏れそうになるほどだ。
 そのたびに注意をするのだが、口先で謝罪をするのみで、一向に改める気配もない。
 思い余ってマーサに侍女を変えるように伝えたものの、「分かりました。適当な者を探しておきます」と言うのみで、いまだに交代はなされていない。
 態度が悪いのは他の女性使用人たちも同様で、セシリアの命令に対していちいち不満げな様子を隠さない。
 さらには立ち去るセシリアの背後で「まだ奥様じゃないくせに」と陰口をたたくことさえあった。
 ラルフが毎晩アンジェラに付き添っている以上、セシリアとラルフの間に夫婦生活がないことは一目瞭然いちもくりょうぜんだとしても、女性使用人の間でその情報が共有されていることは、やはり気分の良いものではなかった。
 一方ジェームズをはじめとする男性使用人は、女性使用人のように酷い態度をとることはなかった。アンジェラを溺愛しているマーサと違い、ジェームズは別段セシリアに敵意はないのだろう。
 とはいっても彼女らの酷い態度を注意するようなことはないし、一度セシリアが侍女に関する苦情をジェームズにはっきり伝えたときも、「まことに申し訳ございませんが、女性使用人についてはマーサの管轄かんかつですので……」と煮え切らない態度を示すのみだった。
 立場はジェームズの方が上なはずだが、マーサを敵に回して女性使用人らの反感を買うのが億劫おっくうで、それくらいならセシリアに我慢してもらおうという腹なのだろう。
 セシリアの味方はどこにもいない。
 この八方ふさがりの状況は、一体いつまで続くのか。
 セシリアが欝々うつうつとした気分を持て余していると、従僕が「奥様にお手紙が届いております」と一通の封筒を差し出した。見れば実家にいる妹のエミリアからのものだった。
「お久しぶりです。お姉様」から始まる手紙には、セシリアがいなくなって寂しいことや、最近編み物に凝っていること、リチャードの愛馬が仔馬を産んだことといった近況報告から、落ち着いたらガーランド邸を訪問したいという希望、そしてセシリアの整えた内装はきっととても洒落ているのだろう、セシリアはガーランド領の社交界でも人気者なのだろう、などと言った想像がつづられており、最後はいつか可愛い甥か姪に会える日を楽しみしていますと結ばれていた。
 手紙に目を通しているうちに、嫁ぐ前の希望に溢れていた日々がよみがえってきて、胸が締め付けられるようだった。
 今の状況はあのころ思い描いていた未来といかにへだたりがあることか。

(いつまでもこんな状況に甘んじているわけにはいかないわ。なんとかしないと)

 現状を打開するために、まずなにをするべきかと言えば、やはりラルフときちんと夫婦になることだろう。
 もう一度、正面からしっかりラルフと話し合ってみよう。セシリアはそう決意した。
 ――その決意があんなおぞましい事態を引き起こすことになろうとは、そのときのセシリアはまるで予想だにしていなかったのである。


      ◇ ◇ ◇


 アンジェラが昼寝をするタイミングを見計らい、セシリアはラルフを庭園の散歩に誘った。
 そしてしばらくの間、あの花がもうすぐ見ごろだとか、最近は雨が少ないとか、他愛ないやり取りを交わしてから、おもむろに話を切り出した。

「旦那様、昨夜も夫婦の寝室においでになりませんでしたわね」
「ああ、すまなかったね。アンジェラがどうしても一人じゃ不安だって言うからさ」
「それは承知しております。だけどこんなことが続くようでは、ガーランド家の跡取りを作ることもできません」
「仕方がないだろう? 体調不良はアンジェラ本人にもどうしようもないことなんだから。それともまさか、アンジェラが仮病を使っているとでもいうつもりか?」

 その通りだと言いたかったが、セシリアは「いいえ、とんでもありません」と大げさに首を横に振って見せた。

「アンジェラさんのことは本当にお気の毒だと思っています。ただ夜中は旦那様ではなくマーサについてもらうようにしていただきたいのです」
「しかしアンジェラは私がいないと心細いと言っているんだ」
「ですがずっとこのままというわけにもいかないでしょう? これは私たち夫婦の問題というより、ガーランド家の存続にかかわる問題なのですから。お義母様やお義父様も跡取りの誕生を心待ちにしていらっしゃるのではないでしょうか」
「大げさだな。なにもこの先ずっと続くわけでもないだろうに」
「私も最初はそう思っておりました。しかしもう一か月になります。この先ずっとこの状況が続かないと、どうして言い切れるでしょうか。アンジェラさんが病弱なのは、子供のころからずっと変わらないのでしょう?」

 セシリアが言うと、ラルフはさすがに気まずそうに視線を伏せた。

「私の実家の両親も孫の誕生を楽しみにしています。現状を続けることは、大切な人たちを裏切ることになるのではないでしょうか」
「うん、君の言いたいことは分かっているよ、しかし……」
「旦那様、私は内装を整える権利をアンジェラさんにお譲りしました。アンジェラさんが嫌がるので、この地域社会での社交も全くしておりません。今のままでは、私はなんのためにここに嫁いだのか分からなくなってしまいます」
「う、ううむ、でもアンジェラは……」
「旦那様の口からきちんと説得すれば、アンジェラさんもきっと理解してくださいます。旦那様はアンジェラさんにとって最も信頼する相手なのですから」
「……分かったよ。私からアンジェラに話してみよう」

 不承不承といった様子でうなずくラルフに、セシリアはほっと安堵あんどの息をついた。
 これでようやく自分はラルフと正式な夫婦になれる。
 そして二人の子供が生まれれば、自宅にいながら疎外そがい感を覚えることもなくなるだろう。
 そのときのセシリアは、かつて思い描いた未来がやってくることを、未だ信じていたのである。
 その後、ラルフは約束通りアンジェラの部屋を訪れて、彼女の説得に取り掛かったようだった。
 ちなみにラルフ一人ではなく、老執事のジェームズも一緒である。
 ジェームズを同席させたのは、この件はラルフとセシリアのプライベートな話ではなく、ガーランド家の存続にかかわる問題なのだとはっきり示すためだろう。
 もっともそれがどれほど効果を発揮したかは定かではなく、アンジェラの部屋からはしばらくの間、哀れっぽく泣きじゃくる声が廊下にまで響いていた。

「なんでそんな酷いこと言うの? 私がラルフなしで夜を過ごすなんて絶対無理よ」
「体調が悪いときって不安で不安で仕方ないのよ。ラルフだって分かってるでしょう?」
「ラルフったらやっぱり私よりもセシリアさんの方が大切なのね」
「結婚しても私をないがしろにしないって約束したのは嘘だったの?」

 嫌でも耳に入ってくる泣き声に、セシリアははらはらし通しだった。
 結局またラルフは流されてしまうのではないか。
 なにもかも徒労とろうに終わって元の木阿弥もくあみになるのではないか。
 もし「やっぱり無理だったよ」とラルフに言われたら、自分はどう返せばいいのだろう。
 途中からマーサが参戦して「旦那様! アンジェラ様がお可哀そうです!」とアンジェラの味方をしたことで、事態はさらに混乱を極めたようだが、途中からぱたりと静かになった。
 話し合いは続いているようだが、これまでのような泣き声は聞こえない。

(一体なにが起こっているの?)

 まさか立ち聞きをするわけにもいかず、セシリアはじりじりしながらサロンで待つより他になかった。
 そして大分経ってから、ラルフが一人でセシリアのもとを訪れた。

「ああ、本当に疲れたよ」

 そう言って苦笑するラルフに、セシリアはとりあえず「お疲れ様です、旦那様」と言葉を返した。

「それで、話し合いの結果はどうなりましたか?」
「うん、なんとかアンジェラに納得してもらったよ。今夜から君と過ごすことができそうだ」
「本当ですか?」

 セシリアが思わず声を上げると、ラルフは「ああ。アンジェラは心細くても我慢するといってくれたよ」と微笑んだ。

「君もアンジェラに会ったら感謝しておいてくれ」
「分かりました。お会いしたら必ず感謝をお伝えします」

 客観的に見て自分が感謝するようなことでもないと思うが、言葉ひとつで丸く収まるのなら、それに越したことはない。

「それじゃ今夜、待っていてくれ」
「はい、旦那様」
「愛しているよセシリア」
「私も愛しています」

 セシリアが言うと、ラルフはセシリアに優しい口づけを落とした。


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