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苦悩

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朝、スマホのバイブレーションの音で目が覚める。
時間を確認するとまだ六時だったが、昨夜は早く寝てしまったためにこれ以上寝られそうになかった。

体力は元に戻っていないみたいだけど、顔色も良くなっているし熱も下がって良かった…。

そう思いながらぐっすりと眠る廉を見る。

今週は自主練期間とはいえ、なかなか曲進まないから今日は行こうかな。
それに学校っていう用事がないと家から出ることなさそうだし…。

ベッドから下りようとして背中に回されている腕を静かにずらす。
すると急に腕に力が入れられて抱き込まれてしまった。


「雪…おはよう」

「あ、おはよう」

「もう朝?」

「うん、体調はどう?」

「すっかり良くなったよ」

「よかった、じゃあ私はこれから部活に行ってくるね」

「…部活の後はどうするの?」

「夏明けから塾にも行くだろうから勉強かな」

「そうじゃなくて…どっちの家に帰るの?」

どっちって、廉の家と私の家ってことか。
元々夏休み中はここにいることになってるし…。


不安げな顔をする廉を見ながらそんなことを考える。


「ここに戻ってくるつもりだよ」

「そうか…じゃあ待ってる」

「うん、午前中で部活も終わるから一時までには帰るね」

「分かった、いってらっしゃい」

「いってきます」


そう言って自室に向かい着替えた。
そしてそのまま家を出て学校に向かう。


下駄箱で上履きに履き替えていると、後ろから声をかけられた。


「あれ、清水さん?」

「砂川くんか、偶然だね!」

「清水…さんも部活?」

「清水でいいよ、私は今から自主練に行くところかな」

「じゃあ俺のことも砂川でいいよ。
 そういえば廉って大丈夫だった?」

「なんとか…。
 今朝はもう大丈夫そうだったよ」

「え、今朝って…?」


砂川が訝しげに尋ねてくる。


「えっと、メッセージ上で聞いたんだ」

「そういうことか、それにしても廉がそんなに返信早いの珍しいな」

「普段は遅いの?」

「遅くはないんだけど…廉ってモテるだろ?」

「うん」

「知らない女子からの連絡が頻繁にあるみたいで、バスケ部と仲良い人以外の通知は切ってるらしいよ」

「そうなんだ…知らなかった」

「まあバスケ部の中でも一部しか知らない情報だしな。
 あ、このことは他の人には言わないでくれると助かる」

「うん、分かった」

「ありがと。
 …ていうか少し気になったんだけど、清水って廉と付き合ってるの?」

「…え…?」

「廉が倒れたこと知った後血相変えて保健室に向かってたし、しかも荷物まで受け取りに来たからそうなのかなって」


廉が倒れた時は凄く心配したしバレても仕方ないか…。
でも付き合ってることを認めると後々微妙な感じになりそうだし……。


「気を悪くしたならごめんな」

「あ、ううん。まあなんていうか…私の片思いって感じかな」


嘘をついたことに後ろめたさを感じて上手く笑えなかったが、砂川にはそれが片思いで苦しんでいるからだと思われたようだ。

それ故に気遣うような目で見られている。


「そうか…俺は何もできないけど応援してる」

「ありがとね」

「じゃあそろそろ部活行くな」

「頑張って」

「清水も」


砂川と別れて部室に向かう。

そしていつも通り美咲と話しつつ、自主練を終えて帰宅した。



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