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苦悩
(36)
しおりを挟む朝、スマホのバイブレーションの音で目が覚める。
時間を確認するとまだ六時だったが、昨夜は早く寝てしまったためにこれ以上寝られそうになかった。
体力は元に戻っていないみたいだけど、顔色も良くなっているし熱も下がって良かった…。
そう思いながらぐっすりと眠る廉を見る。
今週は自主練期間とはいえ、なかなか曲進まないから今日は行こうかな。
それに学校っていう用事がないと家から出ることなさそうだし…。
ベッドから下りようとして背中に回されている腕を静かにずらす。
すると急に腕に力が入れられて抱き込まれてしまった。
「雪…おはよう」
「あ、おはよう」
「もう朝?」
「うん、体調はどう?」
「すっかり良くなったよ」
「よかった、じゃあ私はこれから部活に行ってくるね」
「…部活の後はどうするの?」
「夏明けから塾にも行くだろうから勉強かな」
「そうじゃなくて…どっちの家に帰るの?」
どっちって、廉の家と私の家ってことか。
元々夏休み中はここにいることになってるし…。
不安げな顔をする廉を見ながらそんなことを考える。
「ここに戻ってくるつもりだよ」
「そうか…じゃあ待ってる」
「うん、午前中で部活も終わるから一時までには帰るね」
「分かった、いってらっしゃい」
「いってきます」
そう言って自室に向かい着替えた。
そしてそのまま家を出て学校に向かう。
下駄箱で上履きに履き替えていると、後ろから声をかけられた。
「あれ、清水さん?」
「砂川くんか、偶然だね!」
「清水…さんも部活?」
「清水でいいよ、私は今から自主練に行くところかな」
「じゃあ俺のことも砂川でいいよ。
そういえば廉って大丈夫だった?」
「なんとか…。
今朝はもう大丈夫そうだったよ」
「え、今朝って…?」
砂川が訝しげに尋ねてくる。
「えっと、メッセージ上で聞いたんだ」
「そういうことか、それにしても廉がそんなに返信早いの珍しいな」
「普段は遅いの?」
「遅くはないんだけど…廉ってモテるだろ?」
「うん」
「知らない女子からの連絡が頻繁にあるみたいで、バスケ部と仲良い人以外の通知は切ってるらしいよ」
「そうなんだ…知らなかった」
「まあバスケ部の中でも一部しか知らない情報だしな。
あ、このことは他の人には言わないでくれると助かる」
「うん、分かった」
「ありがと。
…ていうか少し気になったんだけど、清水って廉と付き合ってるの?」
「…え…?」
「廉が倒れたこと知った後血相変えて保健室に向かってたし、しかも荷物まで受け取りに来たからそうなのかなって」
廉が倒れた時は凄く心配したしバレても仕方ないか…。
でも付き合ってることを認めると後々微妙な感じになりそうだし……。
「気を悪くしたならごめんな」
「あ、ううん。まあなんていうか…私の片思いって感じかな」
嘘をついたことに後ろめたさを感じて上手く笑えなかったが、砂川にはそれが片思いで苦しんでいるからだと思われたようだ。
それ故に気遣うような目で見られている。
「そうか…俺は何もできないけど応援してる」
「ありがとね」
「じゃあそろそろ部活行くな」
「頑張って」
「清水も」
砂川と別れて部室に向かう。
そしていつも通り美咲と話しつつ、自主練を終えて帰宅した。
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