溺愛系男子との甘い同居生活 (旧題:親友と好きな人が両思いらしいのでここは大人しく諦めて応援しようと思います)

苦悩

(32)

部屋から出て、洗面所に寄ってから台所に向かう。
そしてご飯を作り、食事を持って再び部屋に戻った。
部屋のドアを開けると廉がベッドに腰掛けている。


「ご飯持ってきたよ」

「ありがとな」


そうして机にご飯を並べて二人で食べた。
その後台所で食器を片付けていると、廉が近づいてくる。


「まだ完全に治ってないんだし寝た方がいいんじゃない？」

「それはそうなんだけど…」

「眠くないの？」

「眠いけど寝たくないっていうか…」


ちょうど食器を片付け終わり、手を洗って廉に向き直った。


「朝だから寝れないみたいな？」

「いやそうじゃなくて…雪がいないから…」

「え、私？」

「情けないのは分かってるんだけど、寝ているうちに雪がどこかに行かないかって思ったら寝れなくて…」


廉が不安そうな目でこちらを見てくる。


「………」


正直、廉達とこれから距離を置くことは少し考えていた。
山口さんと関わる可能性が出たのだ。
あの日におそらく三人には何かしら勘づかれただろう。


「部活もないしどこにも行かないよ？」


安心させるように笑顔で廉に返事をした。


「廉、急にどうしたの？」


山口さんと関わらないにしろ、三人の人気と性格の良さがどうしても自分には眩しく感じてしまうのだ。
今回の件でそれに気付かされただけの話。
三人から同情されると惨めに感じるだろうし、だからといって何も言われないと三人の考えが分からず不安になる。
つまりはどうしようもないことだ。


「いや…俺寝てくるよ」

「うん、おやすみ」

「…おやすみ」


廉が台所から去っていった。
少しして廊下の方からドアの閉まる音が聞こえる。

廉が倒れたことで昨日は泊まることになったけど、普通に気まずいんだよな…。

たまに廉が何かを言おうとして口を閉じることがある。
山口さんとのことだろうと思いつつ、気づかない振りをしていた。

三人のことだし、話をしたら慰めでもしてくれるだろうけど
………それだと私が私を許せない。


まあ『多感な時期に起こったよくある嫌な出来事』っていう言葉で全て片付くのが面白いところだよね。

そう考えているとついくすっと笑いがこぼれてしまった。

これからどうしようかな。
三人のことは好きだけど、その中に私がいなくても正直変わらなさそうなんだよね。
別に絶縁するわけでもないし、徐々にフェードアウトしてクラスメイトに戻ればいいか。


そう思いながらスマホに手を伸ばし、面白そうな漫画を探して読んだ。