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苦悩
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華子に連れられて移動すると少し開けた場所に出る。
「花火っていつもテレビで見るくらいだからめっちゃ楽しみ!」
「そうなんだ、じゃあその分今日は楽しもうね!」
「うん!!」
華子と中学の思い出話やそれぞれの高校の話に花を咲かせていると、花火の打ち上がる音がした。
その数秒後、弾ける音と共に空が明るくなる。
「うわぁー!綺麗!!」
「やっぱ花火はいいね!」
「結構近くて迫力あるね!」
「そうそう! 場所取りしてて良かった~」
ふと後ろを振り向くと大勢の人が花火を見上げていた。
「こんなに人いたんだ」
「だね。家族連れもいるけど、今年はカップルの数が一段と多いな…」
「まあでも私と華子もカップルの一つだから!」
「私たちもリア充だ!」
そのまま花火を見ていると、あっという間に時間が過ぎ去り終わってしまった。
徐々に会場にいる人が少なくなっていく。
「楽しかったね!」
「だね、雪と一緒に行けてよかった」
「私も!華子大好き!」
「私も雪のこと大好きだよ」
談笑しながら他の人と同じように歩き出した。
「それで…雪はなにかあったの?」
「え…?」
「夏祭りの時、たまに悲しそうな顔してた」
やっぱり華子には隠し事できないなあ…。
華子の真剣な顔を見ながら口を開こうとすると、目頭がじわりと熱くなった。
「雪、ちょっと座ろう?」
「うん…」
華子に連れられて会場に所々設置された椅子に座る。
特に何か話しかけてくるわけでもなく、ただ黙って傍にいてくれた。
「………私の学校、昨日バスケ部が他校と練習試合があったんだ」
「うん」
「友達と試合を見に行ったんだけど…そこに山口さんがいたの」
「え、山口さんって違う学校じゃないの?」
「友達に連れられて見に来てたみたい」
「…会ったの?」
「うん…」
「何か言われた…?」
「ううん、でもそれを高校の仲いい人達に見られて…」
「そっか…」
「もう大丈夫だと思ってたけど…身体が思うように動かなくなって…」
「うん」
華子に背中をさすられ、溢れた涙が頬を伝う。
「なんで…高校でも会わないといけないの…」
答えの出せない問いが口からこぼれた。
「それに…山口さんの友達の吉田さんっていう人が同じ学校にいて…」
「うん」
「その人に嫌われてるみたいで噂を流されてて…」
「うん」
「もう…あの時みたいに過ごしたくない…」
「…雪さ、高一の時に学校はいい人たちばかりだって言ったでしょ?」
「うん…」
「それなら噂で人を判断するっていう人は少ないんじゃない?」
「…私と仲良い人達っていうのは凄い人気のある人達で」
「うん」
「三人ともファンクラブがあるみたいなんだけど、そのうち二人のは他校の生徒もいるくらいには規模が大きくて…」
「え…?」
「え?」
「ファンクラブってまさか…滝本廉って人と清水玲って人?」
「知ってるの…?」
「有名だよ。私の高校で雪の学校名を言ったらその二人の名前も出てくるくらいには」
「…すごいんだね」
「雪もそんな人達と仲良いなんてすごいね」
「二年間同じクラスだったから…」
「なるほど、じゃあ噂って言うのもそれ関係?」
「うん、西野を利用して滝本達二人を狙ってるって…。
でもそれ以外の話は分からないかも」
「まあ夏休みだからね」
「…それでなんだけど」
「なに?」
「山口さんといるのをその三人に見られてて、何か察されたかもしれなくて…」
「うん」
「会いたくないっていうか、どんな顔で会えばいいかわからなくて」
「うーん…別に今会う必要はないんじゃない?」
「うん…」
「夏休みだしさ、次学校で会う時には意外となんとかなってるかもよ?
別に無理に話す必要も無いし、クラスで話しづらいって思うなら他の子と話せばいいと思う」
「…滝本とは席が前後で、西野も近くに…」
「…隣の人とか後ろの人と話そう」
「……そこは既にグループができてる」
「………夏休み明けはどうせ席替えだろうし、それまでの辛抱だ」
「…頑張る」
「がんばれ! ……もう落ち着いた?」
気づけば涙が止まっており、気持ちも穏やかになっていた。
「うん、話したらすっきりした。ありがとね」
「また何かあれば言ってね。何もなくても言ってね」
相変わらずな様子の華子に笑みがこぼれる。
「…華子」
「どした?」
「結婚…するかあ」
「彼氏いるからごめんな」
「え」
「え?」
「彼氏、いるの?」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてない…」
「じゃあ今言ったってことで」
「…いい人なの?」
「もちろん!」
華子の様子を見ると、いい人と付き合ったんだろうなということがありありと想像できる。
「ならよかった」
「だから結婚はすまんな」
「…やっぱよくなかった」
そんな話をしながら、会場を出て途中までの帰り道を一緒に歩いた。
「花火っていつもテレビで見るくらいだからめっちゃ楽しみ!」
「そうなんだ、じゃあその分今日は楽しもうね!」
「うん!!」
華子と中学の思い出話やそれぞれの高校の話に花を咲かせていると、花火の打ち上がる音がした。
その数秒後、弾ける音と共に空が明るくなる。
「うわぁー!綺麗!!」
「やっぱ花火はいいね!」
「結構近くて迫力あるね!」
「そうそう! 場所取りしてて良かった~」
ふと後ろを振り向くと大勢の人が花火を見上げていた。
「こんなに人いたんだ」
「だね。家族連れもいるけど、今年はカップルの数が一段と多いな…」
「まあでも私と華子もカップルの一つだから!」
「私たちもリア充だ!」
そのまま花火を見ていると、あっという間に時間が過ぎ去り終わってしまった。
徐々に会場にいる人が少なくなっていく。
「楽しかったね!」
「だね、雪と一緒に行けてよかった」
「私も!華子大好き!」
「私も雪のこと大好きだよ」
談笑しながら他の人と同じように歩き出した。
「それで…雪はなにかあったの?」
「え…?」
「夏祭りの時、たまに悲しそうな顔してた」
やっぱり華子には隠し事できないなあ…。
華子の真剣な顔を見ながら口を開こうとすると、目頭がじわりと熱くなった。
「雪、ちょっと座ろう?」
「うん…」
華子に連れられて会場に所々設置された椅子に座る。
特に何か話しかけてくるわけでもなく、ただ黙って傍にいてくれた。
「………私の学校、昨日バスケ部が他校と練習試合があったんだ」
「うん」
「友達と試合を見に行ったんだけど…そこに山口さんがいたの」
「え、山口さんって違う学校じゃないの?」
「友達に連れられて見に来てたみたい」
「…会ったの?」
「うん…」
「何か言われた…?」
「ううん、でもそれを高校の仲いい人達に見られて…」
「そっか…」
「もう大丈夫だと思ってたけど…身体が思うように動かなくなって…」
「うん」
華子に背中をさすられ、溢れた涙が頬を伝う。
「なんで…高校でも会わないといけないの…」
答えの出せない問いが口からこぼれた。
「それに…山口さんの友達の吉田さんっていう人が同じ学校にいて…」
「うん」
「その人に嫌われてるみたいで噂を流されてて…」
「うん」
「もう…あの時みたいに過ごしたくない…」
「…雪さ、高一の時に学校はいい人たちばかりだって言ったでしょ?」
「うん…」
「それなら噂で人を判断するっていう人は少ないんじゃない?」
「…私と仲良い人達っていうのは凄い人気のある人達で」
「うん」
「三人ともファンクラブがあるみたいなんだけど、そのうち二人のは他校の生徒もいるくらいには規模が大きくて…」
「え…?」
「え?」
「ファンクラブってまさか…滝本廉って人と清水玲って人?」
「知ってるの…?」
「有名だよ。私の高校で雪の学校名を言ったらその二人の名前も出てくるくらいには」
「…すごいんだね」
「雪もそんな人達と仲良いなんてすごいね」
「二年間同じクラスだったから…」
「なるほど、じゃあ噂って言うのもそれ関係?」
「うん、西野を利用して滝本達二人を狙ってるって…。
でもそれ以外の話は分からないかも」
「まあ夏休みだからね」
「…それでなんだけど」
「なに?」
「山口さんといるのをその三人に見られてて、何か察されたかもしれなくて…」
「うん」
「会いたくないっていうか、どんな顔で会えばいいかわからなくて」
「うーん…別に今会う必要はないんじゃない?」
「うん…」
「夏休みだしさ、次学校で会う時には意外となんとかなってるかもよ?
別に無理に話す必要も無いし、クラスで話しづらいって思うなら他の子と話せばいいと思う」
「…滝本とは席が前後で、西野も近くに…」
「…隣の人とか後ろの人と話そう」
「……そこは既にグループができてる」
「………夏休み明けはどうせ席替えだろうし、それまでの辛抱だ」
「…頑張る」
「がんばれ! ……もう落ち着いた?」
気づけば涙が止まっており、気持ちも穏やかになっていた。
「うん、話したらすっきりした。ありがとね」
「また何かあれば言ってね。何もなくても言ってね」
相変わらずな様子の華子に笑みがこぼれる。
「…華子」
「どした?」
「結婚…するかあ」
「彼氏いるからごめんな」
「え」
「え?」
「彼氏、いるの?」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてない…」
「じゃあ今言ったってことで」
「…いい人なの?」
「もちろん!」
華子の様子を見ると、いい人と付き合ったんだろうなということがありありと想像できる。
「ならよかった」
「だから結婚はすまんな」
「…やっぱよくなかった」
そんな話をしながら、会場を出て途中までの帰り道を一緒に歩いた。
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