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苦悩
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一分ほど待つと砂川くんが現れた。
砂川くんの視界に入った途端、驚いた顔をされる。
「あれ、さっき外にいなかった?」
「いたけど砂川くんに用事あったから」
「委員会の話じゃないの?」
「ごめん、委員会の話は嘘なの。
あそこだと他の人がいて話しづらかったから…」
砂川くんの眉がピクリと動く。
「どういうこと…?ていうかそもそも誰?」
「あ、私は清水雪っていう名前で、美咲とは同じ部活なの」
「そっか。それで桐谷の話って?」
「美咲と一緒に帰ってた時に忘れ物に気づいて戻ってきたんだけど用事を思い出して…。
美咲には校門を出た所で待ってもらってるから、一緒に帰れなくなったって伝えてもらえないかな?」
「…スマホで連絡するのは?」
「充電が切れてる…」
「…分かった、じゃあ行ってくる」
「ありがとう!」
そう言って砂川くんが去っていった。
…私めっちゃお節介だよな…。
美咲にも砂川くんにも悪いことしちゃった…。
人が周りにいないのをいいことにしゃがみ込む。
自然に溜め息が出てきて自己嫌悪していると、近くで話し声が聞こえてきた。
「せっかく砂川くんと話せたのに…」
「先生が呼んでたなら仕方ないよ」
「まあそうなんだけどタイミングが…」
「あの子も気まずそうにしてたし、気持ち切り替えて頑張ろ!」
「…だね」
さっき近くにいた人達かな。
…あの人達も頑張ってるのか。
正直何か言われてるのかなって不安だったけど、そんな風に思ってたのが申し訳なくなってきた…。
そう考えていると再び溜め息がこぼれた。
……次部活に行く時に美咲に謝ろう…。
重い腰を上げてゆっくりと立ち上がる。
…そういえば玲達ってまだいるのかな。
話しかけられそうなら一言声でもかけるか。
そう思って体育館前に目を向けると、探すまでもなく他の人に囲まれている三人の姿が目に入る。
相変わらず人気だな…。
なんとなく三人の方を見ていると、ふと廉の近くにいる女子の姿が目に飛び込んできた。
あれは…まさか……そんなはず………。
心臓が大きく音を立て、思わずひゅっと息を呑む。
息が…上手くできない…。
あれ、呼吸ってどうやってするんだっけ…?
身体の震えが収まらず、その場に倒れ込んだ。
何かが身体を駆け巡るような感覚になり一気に汗が吹き出す。
ヒューヒューという異様な呼吸音ばかりが聞こえ、他の音が何も入ってこない。
目に涙が滲んで視界がぼやけていく。
落ち着け…落ち着け…たしかゆっくり息を吐くんだっけ…。
あと息を止めていればおさまるはず…。
昔どこかで知った知識を思い出し、必死でそれに縋りついた。
最初は思う通りにいかなかった呼吸も、二十分ほどして漸く元に戻っていく。
ゆっくりと起き上がり、周りを見回すと誰もいない。
ここって職員室に行く時以外は誰も通らないし、夏休み中でよかった…。
少しふらふらするもののなんとか立ち上がった。
再び遠くにいる玲達の方に目を向けると、三人を含めまだ数人が残っている。
廉の近くには先程と変わらずあの人達もいた。
吉田さんがいるのは分かるけど あの人はなんでここに…。
試合相手の学校でもないのになんで……。
あの人と吉田さんの話す姿を見て、その二人が友達であるという結論に至る。
あの人が廉と話している、その事実に心がかき乱された。
やめて…廉をとらないで……廉を…廉を……
今この瞬間にもあの人が廉に触っている。
何かがすぅっと冷えていくような感じがした。
……やっぱり駄目なのかな……。
ふとどこからか視線を感じて見回すと、玲と目が合った。
手を振られたので振り返すと手招きをされる。
玲の行動に気づいた石田と滝本もこちらを見た。
滝本の視線を追って、あの人もこちらを見てくる。
再び動悸がしてきて胸を抑える。
今行かなかったら怪しまれる…。
………行かないと。
そう思い、鞄を持って玲達の元へ向かった。
砂川くんの視界に入った途端、驚いた顔をされる。
「あれ、さっき外にいなかった?」
「いたけど砂川くんに用事あったから」
「委員会の話じゃないの?」
「ごめん、委員会の話は嘘なの。
あそこだと他の人がいて話しづらかったから…」
砂川くんの眉がピクリと動く。
「どういうこと…?ていうかそもそも誰?」
「あ、私は清水雪っていう名前で、美咲とは同じ部活なの」
「そっか。それで桐谷の話って?」
「美咲と一緒に帰ってた時に忘れ物に気づいて戻ってきたんだけど用事を思い出して…。
美咲には校門を出た所で待ってもらってるから、一緒に帰れなくなったって伝えてもらえないかな?」
「…スマホで連絡するのは?」
「充電が切れてる…」
「…分かった、じゃあ行ってくる」
「ありがとう!」
そう言って砂川くんが去っていった。
…私めっちゃお節介だよな…。
美咲にも砂川くんにも悪いことしちゃった…。
人が周りにいないのをいいことにしゃがみ込む。
自然に溜め息が出てきて自己嫌悪していると、近くで話し声が聞こえてきた。
「せっかく砂川くんと話せたのに…」
「先生が呼んでたなら仕方ないよ」
「まあそうなんだけどタイミングが…」
「あの子も気まずそうにしてたし、気持ち切り替えて頑張ろ!」
「…だね」
さっき近くにいた人達かな。
…あの人達も頑張ってるのか。
正直何か言われてるのかなって不安だったけど、そんな風に思ってたのが申し訳なくなってきた…。
そう考えていると再び溜め息がこぼれた。
……次部活に行く時に美咲に謝ろう…。
重い腰を上げてゆっくりと立ち上がる。
…そういえば玲達ってまだいるのかな。
話しかけられそうなら一言声でもかけるか。
そう思って体育館前に目を向けると、探すまでもなく他の人に囲まれている三人の姿が目に入る。
相変わらず人気だな…。
なんとなく三人の方を見ていると、ふと廉の近くにいる女子の姿が目に飛び込んできた。
あれは…まさか……そんなはず………。
心臓が大きく音を立て、思わずひゅっと息を呑む。
息が…上手くできない…。
あれ、呼吸ってどうやってするんだっけ…?
身体の震えが収まらず、その場に倒れ込んだ。
何かが身体を駆け巡るような感覚になり一気に汗が吹き出す。
ヒューヒューという異様な呼吸音ばかりが聞こえ、他の音が何も入ってこない。
目に涙が滲んで視界がぼやけていく。
落ち着け…落ち着け…たしかゆっくり息を吐くんだっけ…。
あと息を止めていればおさまるはず…。
昔どこかで知った知識を思い出し、必死でそれに縋りついた。
最初は思う通りにいかなかった呼吸も、二十分ほどして漸く元に戻っていく。
ゆっくりと起き上がり、周りを見回すと誰もいない。
ここって職員室に行く時以外は誰も通らないし、夏休み中でよかった…。
少しふらふらするもののなんとか立ち上がった。
再び遠くにいる玲達の方に目を向けると、三人を含めまだ数人が残っている。
廉の近くには先程と変わらずあの人達もいた。
吉田さんがいるのは分かるけど あの人はなんでここに…。
試合相手の学校でもないのになんで……。
あの人と吉田さんの話す姿を見て、その二人が友達であるという結論に至る。
あの人が廉と話している、その事実に心がかき乱された。
やめて…廉をとらないで……廉を…廉を……
今この瞬間にもあの人が廉に触っている。
何かがすぅっと冷えていくような感じがした。
……やっぱり駄目なのかな……。
ふとどこからか視線を感じて見回すと、玲と目が合った。
手を振られたので振り返すと手招きをされる。
玲の行動に気づいた石田と滝本もこちらを見た。
滝本の視線を追って、あの人もこちらを見てくる。
再び動悸がしてきて胸を抑える。
今行かなかったら怪しまれる…。
………行かないと。
そう思い、鞄を持って玲達の元へ向かった。
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