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受容
(18)
しおりを挟む楓さんが去ったあとのリビングに沈黙が流れる。
……気まずい……。
どうすればいいか分からず時計を見ると既に十一時になっていた。
「……ねえ滝本、そろそろ寝ない…?」
隣にいる滝本に声をかけるが返事はなく、黙ったままだ。
どうしたのだろうかと顔を覗き込むと腕を掴まれ、滝本の方に引っ張られた。
「!?」
バランスを崩して滝本の膝の上にうつ伏せに倒れ込んでしまう。
「っ…え…?」
すると滝本が立ち上がり、気がつけば滝本の腕が背中と膝の裏に添えられていた。
………ん?…お姫様抱っこ…?
え、今なにが起きたの…?
「っ…」
混乱していると滝本が歩き出したので、慌てて肩に手を回して安定感を得る。
滝本はそのまま廊下を移動して自室に入り、器用に扉を閉めて鍵をかけた。
ベッドに下ろされ、上から覆いかぶさられる。
顎を少し持ち上げられた後、滝本の顔が少しずつ近づいてきた。
「ん…!?え、ちょ、滝本!?」
…ここで甘い雰囲気を壊していくのはもはや雪らしいと言うしかないだろう…。
滝本はくすっと笑った後、雪の唇に軽くキスを落とした。
「え……あ、う…」
驚きと恥ずかしさで言葉が出てこないで困っていると、再び顔を近づけられて形のいい柔らかい唇が押し当てられる。
い、息ができない…!
友達に惚気という名目でいろいろ教えて貰っていたので、キスをする時は鼻で息をすることは知っていた。
鼻で息するとかそんな余裕ないんだけど…!?
角度を変えて何度も繰り返される。
もう限界…!!
身体が酸素を欲しており、無意識に滝本の腕をぎゅっと掴んだ。
「ぷはっ」
解放されたことで慌てて酸素を取り込む。
すると滝本が肩に顔をうずめてきた。
「…雪が俺のことをどう思っているかなんて今まで聞いたことなかったから凄く嬉しかった。ありがとな」
横を見ると真っ赤になった滝本の耳が見え、それが伝染してこちらまで赤くなってしまう。
「あ…う………うん……」
心の平穏のために一旦逃亡することはできないだろうかと周りを見回す。
しかし背中側にはベッド、目の前には滝本の顔、横には腕があり、足の間には片足が置かれていた。
…前門の滝本、後門のベッドってか…
現実逃避とばかりにそんなことを考えていると、滝本が熱のこもった目で見つめてきて何も考えられなくなる。
「雪…」
「な…なに…?」
「いい…?」
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