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受容
(5)
しおりを挟む「……滝本…?」
ずっと黙り込んだままの滝本を見かねて声をかける。
「…せっかくのデートなのにごめんな」
滝本の過去を知ったつもりではいたが、目の前に突きつけられたように感じて悲しみと嫉妬が込み上げた。
気持ちを落ち着かせるために少し一人でいたい。
そう思ったが申し訳なさそうな顔をする滝本を見て思いとどまる。
そして自身と滝本の気持ちを切り替えようとして滝本の手を強く握りしめた。
「いてっ………え?」
「ほら!奥、行くんでしょ?」
「あ、ああ…じゃあ行こうか」
「うん!」
そのまま再び歩き出す。
「…雪」
「なに?」
「ありがとな」
「ん…」
少し気恥ずかしくて滝本と目を合わせられなかったがこちらに向かって滝本が軽く微笑んでいるのが視界の端に見えた。
そのまま雑談をしつつ目的の場所に向かった。
「ここだよ」
「うわぁ綺麗…!」
目の前にはカラフルなイルミネーションが広がっていた。
水中にもライトがあって水に色が付けられているように思える。
「これを一緒に見たかったんだよな」
そのままプールに入る。
自身の近くの水が光を反射し輝いていて心が弾んだ。
「滝本よくこんな綺麗なところ知ってたね!ありがとね!」
「ここが一番綺麗に見えるようだったから雪が気に入ったのなら良かった」
「もしかして調べてくれたの?」
「まあ…せっかくのデートだし」
滝本が少し顔を赤くして顔を背けた。
……可愛いすぎて困る……。
こちらにまで恥ずかしさが伝染してしまう。
「そ、そっか! ありがとね!……廉」
恥ずかしくて最後声が小さくなってしまった。
聞こえてないよね…?
チラッと滝本の方を見ると目を大きく見開いてこちらを見ている。
「え? 今…え?」
「い、いやあ、名前で呼ばれるようになったのに私だけ名字で呼ぶのもなって思って…」
改めて恥ずかしくなり、つい目を逸らしてしまう。
「ま、まあやっぱ慣れないし滝本のままの方がいいね!」
いつものような態度を意識して笑いかけると滝本が両手で自分の顔を覆った。
「…反則すぎるだろ……」
「え?なに?」
滝本が何かを呟いたが聞き取れず、近寄ると思いきり抱きつかれた。
「へ!?!?滝本!?」
すると滝本の腕の力が少し強くなった。
「もう名前で呼んでくれないのか…?」
そのまま顔を覗き込まれる。
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