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捕獲

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「荷物が少ないから動きやすくていいね、学校のある日とは大違い…」

「そもそも雪は普段から荷物多すぎ」

「あれもこれもやらないとって思うと持ち物が増えるんだよね」

「なるほどな、それなら教材をPDF化してiPadに取り込むとかは?」

「たしかにそれはいいかも…。
 ありがと、やってみる!」

そんな会話をしながら駅に向かう。
玲と石田とは駅で集合することになっているのだ。

駅に着くと既に二人がいた。

「遅くなってごめんね!」

「時間ぴったりだから大丈夫だよ、雪ちゃん今日は一段と可愛いね!」

「玲に言われると凄く嬉しい…!
 玲はいつでも凄く可愛いね!」

「褒めても何も出ないんだからね」

玲がくすっと可愛く笑う。
話していると石田からの視線を感じた。

「清水、なんか雰囲気変わった?」

「今日はメイクしてみたんだ、あとは普段制服だからじゃない?」

「私服だと結構大人っぽいんだな」

「制服でも大人っぽいって言ってくれていいんだよ?」

「俺は思ってないことは言わない主義なんだ。
 あれ…なんか首のとこ少し赤くね?」

今朝滝本にキスされた場所を指摘され恥ずかしくなる。

された時に変な感じがしてたけど…もしかしてキスマークとか…?
いや、流石に自意識過剰か。

「虫に刺されたとかかな…?」

「まあ夏だしなー」

少しホッとしてため息をついていると、玲と滝本にじっと見られる。

「雪ちゃん後でいろいろお話しようね♪」

「俺も後でお話したいな♪」

え、お話…?あ、まさか本当にキスマークだったの…?

「あ、あの、二人とも…」

「「どうしたの?」」

「いや…なんでもないです…」

なぜか寒気がして身震いした。

「早く行こうぜ」

「あ、うん!」

石田ナイス!

タイミング良く声をかけてきた石田に心の中で感謝して歩き出した。




「お、あの子可愛くね?」
「でも連れいるぞ」
「いけるだろ」
「いやイケメンすぎて俺らじゃ無理だって」

そんな会話が近くで聞こえる。
化粧が上手くできたので自分のことかと少し気になったが、目の前にいる玲を見てただの気のせいだと悟る。

「雪」
 
「えっ?」

突然滝本に腰を引き寄せられる。

「と、突然どうしたの?」

玲と石田からの視線を感じ急いで離れようとしたものの、身体のバランスを崩して完全に寄りかかってしまっていた。

あれ、他の人の前でも名前呼びなの? 
ていうかこの距離感に慣れないんだが…! 

どうしようもなくなりそんなことを考え始める。


「やっぱ男いるじゃねえか」
「まあ仕方ないな。
 つか隣にいる女より少し離れた所にいる女の方が男と似合ってね?」
「たしかに、そっちの女は芸能人レベルに可愛いしな。
 男のレベルが高すぎて隣の女が釣り合ってないんだよ」

会話が聞こえてきていたたまれなくなる。

やっぱ周りから見てもそうだよなー…。
いやでも可愛いって思われてるだけまだいいのか…?

複雑な気持ちになり少し滝本と距離を取ろうとすると、腰に回されている手に少し力が込められた。

「お、おい行こうぜ」
「ああ…」

こちらを見た途端焦ったような顔をして二人組の男が去っていく。

何を見たのかと思い滝本を見上げるときょとんとした顔をされた。

「ねえ、滝本くんと雪ちゃんって付き合っているの?」

玲が口を開き、石田がそれに驚いた。

「そうなのか!?」

「あー…うん、まあ」

玲に不思議そうな顔をされたが笑ってごまかす。
滝本からの視線も感じたが、どういう顔をすればいいか分からなかったので気付かないふりをした。

二人にだけは伝えようと最初から思っていたけど反応が怖いな…。

恐る恐る二人の様子を窺うと喜んでいるようだった。

「やっと付き合ったんだね、おめでとう!」

「清水おめでとう!」

「二人ともありがとね」

祝ってもらえてよかった…。

「実はね、私と彰くんも付き合うことになったんだ」

玲が石田と腕絡めて言った。

「え!?聞いてない!」

「雪ちゃんには直接言いたかったんだ」

「そうなのね!二人ともおめでとう!!」

「彰も西野も良かったな」

「ああ」

「ありがとね」


「まさか同じ日に付き合うとは思わなかったよな」

「そうだよね、私も滝本くんと同じタイミングだとは思わなかった」

玲と滝本が話しているのを横目に石田に耳打ちする。

「石田良かったね、両思い祝いは明日の四人でのプールになりそう!」

「そうだな」

石田が心底嬉しそうな笑みを浮かべる。
それを見て幸せな気分になった。

「雪、そろそろ行こう?」 

「え、あ、うんっ!」

流れるように滝本に恋人繋ぎをされてときめいてしまう。
先程の二人組の会話を気にしていることを気づかれたのだろうか。

ほんとに滝本ってずるい…。

滝本に微笑まれ、恥ずかしいながらも微笑み返した。

「彰くん、私達も行こう!」

「お、おう」

石田は照れて動きが固くなっている。

それを見て少し和んだ。



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