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攻防
(3)
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「滝本遅くなっちゃってごめ……」
部屋の扉を開けると滝本がソファに座って寝ていた。
昨日あまり寝られなかったみたいだし寝かせとくか。
今日は暖かいとはいえ身体を冷やして風邪でも引いたら大変だと思い、毛布をベッドから持ってきて滝本の上にかける。
大人一人が余裕で横になれそうな広さのソファである。
寝るのなら横になった方が良いだろう。
起こさないように細心の注意を払い、少しずつ滝本の身体を横に倒す。
「…できた…!」
なんとか横にならせることに成功した。
どうせなら枕もあった方がいいかな…。
一度気になるととことん気になるタイプだ。
滝本に快適な睡眠をしてもらうためにどうすればいいのだろうと真剣に考えていた。
……にしても本当に綺麗な顔してるよね。
寝ているのをいいことに滝本をじっと見つめる。
まつ毛は長く一つ一つのパーツが整っている。
髪は柔らかそうでいい匂いがする。
これはもう私負けてるわ。
予想していたことではあったがそれでも何故か敗北感はある。
好きな人をここまでしっかり見る機会なんて滅多にない。
しっかり堪能しようと決意したものの見る度に自分と比較してしまい心が削られた。
諦めて観察するのを止め、枕のことを再び考える。
ベッドの枕を使ってもいいんだけど、ソファの方がベッドより沈み込むから高さが気になるんだよね。
それで首が痛くなったら良くないし…。
正直あまり変わらないが、それでも最高の睡眠にしたいのだ。
どうしたものかと考えていると膝枕をするという案が頭に浮かぶ。
恋愛経験豊富な友達から普通の枕より膝枕の方が良いと言われていたのだ。
そんな根拠は勿論存在しない。その友達にからかわれたのに気づかず、真に受けてしまっているだけである。
そして恋愛経験が少ないため漫画や映画での恋人のやりとりに夢を見ていることも、膝枕をするという案を後押しした。
普通ならこんなことなど考えもしない。
そもそも好きな人と一緒に住むこと自体夢物語だと思っていたのだ。
その上相手が目の前でぐっすり寝ている。
少し触りたいと思う人は少なからずいるはずだ。
好きな人であろうとなかろうと、目の前で人が寝ていたら毛布をかけたり近くの物を片付けたりといった気遣いは普段からする。
だがそれだけだ。
好きな人と一緒に住むこと、そして昨日同じベッドで寝たことで距離感が完全にバグっていた。
雪その1「流石に現実的じゃなさすぎる」
雪その2「でもさっき滝本の身体を横にした時少しも反応しなかったよね…?」
雪その3「眠りは深そうだし、膝枕をしても目を覚ます前に止めればいけるよ!」
滝本が寝ていて動かないのをいいことに、好き勝手に脳内会議をしてしまう。
最終的に、目を覚ますまでは膝枕をするということで会議は終了した。
「失礼します…」
滝本の頭の横に座った後、ゆっくり頭を持ち上げて自分の太腿の上に置いた。
……膝枕、できちゃった…。
特に問題もなくすんなり成功したので気が抜けてしまった。
自分の太股の上で好きな人が寝ている。
その事実に恥ずかしさで死にそうになったがなんとか堪えた。
時間もあるしどうしようかと迷った結果、あまり場所を取らず動きも少ない用事や課題を済ませることにした。
途中で足が痺れたが、気持ちよさそうに眠っている滝本の顔を見たら我慢しようという気になれた。
そして二時間程してその状態でできる全ての作業が終わった。
どうしよう、食材を借りてご飯でも作ろうかな。
台所を好きに使ってくれて構わないとは言われているけど、一応使っても大丈夫そうなものを選ばないと…。
起こさないように気をつけながら、移動するために滝本の頭を手で支えて少し持ち上げる。
すると滝本が身じろぎして太腿に片手を置いた。
擽ったいのが大の苦手な身としては身体を触られるのには慣れていない。
触られて平気なのはせいぜい腕か頭くらいだ。
そんな中で太股を触られたのでビクッと反応してしまった。
あ…マズい…。
「…ん…」
急いで退くと確実に起こしてしまうが、今の揺れで滝本の目が覚めかけている。
絶体絶命の危機を迎え、固まってしまった。
「…あれ、清水…?」
部屋の扉を開けると滝本がソファに座って寝ていた。
昨日あまり寝られなかったみたいだし寝かせとくか。
今日は暖かいとはいえ身体を冷やして風邪でも引いたら大変だと思い、毛布をベッドから持ってきて滝本の上にかける。
大人一人が余裕で横になれそうな広さのソファである。
寝るのなら横になった方が良いだろう。
起こさないように細心の注意を払い、少しずつ滝本の身体を横に倒す。
「…できた…!」
なんとか横にならせることに成功した。
どうせなら枕もあった方がいいかな…。
一度気になるととことん気になるタイプだ。
滝本に快適な睡眠をしてもらうためにどうすればいいのだろうと真剣に考えていた。
……にしても本当に綺麗な顔してるよね。
寝ているのをいいことに滝本をじっと見つめる。
まつ毛は長く一つ一つのパーツが整っている。
髪は柔らかそうでいい匂いがする。
これはもう私負けてるわ。
予想していたことではあったがそれでも何故か敗北感はある。
好きな人をここまでしっかり見る機会なんて滅多にない。
しっかり堪能しようと決意したものの見る度に自分と比較してしまい心が削られた。
諦めて観察するのを止め、枕のことを再び考える。
ベッドの枕を使ってもいいんだけど、ソファの方がベッドより沈み込むから高さが気になるんだよね。
それで首が痛くなったら良くないし…。
正直あまり変わらないが、それでも最高の睡眠にしたいのだ。
どうしたものかと考えていると膝枕をするという案が頭に浮かぶ。
恋愛経験豊富な友達から普通の枕より膝枕の方が良いと言われていたのだ。
そんな根拠は勿論存在しない。その友達にからかわれたのに気づかず、真に受けてしまっているだけである。
そして恋愛経験が少ないため漫画や映画での恋人のやりとりに夢を見ていることも、膝枕をするという案を後押しした。
普通ならこんなことなど考えもしない。
そもそも好きな人と一緒に住むこと自体夢物語だと思っていたのだ。
その上相手が目の前でぐっすり寝ている。
少し触りたいと思う人は少なからずいるはずだ。
好きな人であろうとなかろうと、目の前で人が寝ていたら毛布をかけたり近くの物を片付けたりといった気遣いは普段からする。
だがそれだけだ。
好きな人と一緒に住むこと、そして昨日同じベッドで寝たことで距離感が完全にバグっていた。
雪その1「流石に現実的じゃなさすぎる」
雪その2「でもさっき滝本の身体を横にした時少しも反応しなかったよね…?」
雪その3「眠りは深そうだし、膝枕をしても目を覚ます前に止めればいけるよ!」
滝本が寝ていて動かないのをいいことに、好き勝手に脳内会議をしてしまう。
最終的に、目を覚ますまでは膝枕をするということで会議は終了した。
「失礼します…」
滝本の頭の横に座った後、ゆっくり頭を持ち上げて自分の太腿の上に置いた。
……膝枕、できちゃった…。
特に問題もなくすんなり成功したので気が抜けてしまった。
自分の太股の上で好きな人が寝ている。
その事実に恥ずかしさで死にそうになったがなんとか堪えた。
時間もあるしどうしようかと迷った結果、あまり場所を取らず動きも少ない用事や課題を済ませることにした。
途中で足が痺れたが、気持ちよさそうに眠っている滝本の顔を見たら我慢しようという気になれた。
そして二時間程してその状態でできる全ての作業が終わった。
どうしよう、食材を借りてご飯でも作ろうかな。
台所を好きに使ってくれて構わないとは言われているけど、一応使っても大丈夫そうなものを選ばないと…。
起こさないように気をつけながら、移動するために滝本の頭を手で支えて少し持ち上げる。
すると滝本が身じろぎして太腿に片手を置いた。
擽ったいのが大の苦手な身としては身体を触られるのには慣れていない。
触られて平気なのはせいぜい腕か頭くらいだ。
そんな中で太股を触られたのでビクッと反応してしまった。
あ…マズい…。
「…ん…」
急いで退くと確実に起こしてしまうが、今の揺れで滝本の目が覚めかけている。
絶体絶命の危機を迎え、固まってしまった。
「…あれ、清水…?」
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