幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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ローグパラディズム・イン・ザ・ダークact4

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旧都冒険者ギルドマスタードミニクハウプクスが指定したアジトに集合したのは8人足らず。だが皆一様に覆面をしているあたりはそうせねばならぬ後ろめたい理由があるからだ。

「これで全部か。そろいもそろってずいぶんと頼りねえもんだなぁ」

元Aランク冒険者ニール=ハイダーは味方の覆面に不満があるようにボヤいて見せた。すると目の前の男が得物をチラつかせて恫喝する。

「俺に文句があるなら相手になるぜ」

「ガキはバイナラじゃ。」

「あぁ?ナメてるとゴボアッ!?・・・あ、アレェ?」

言葉の途中で派手に吐血した覆面男がワケもわからず下を向くと、脇腹がゴッソリと無くなっていた。

「おい、何してんだ!」

他の覆面が叫んだ次の瞬間、脇腹から肋骨あたりまで失った男は白目を向く。そのまま顔面から倒れて動かなくなってしまった。脈を取ったところで時すでに遅し。

「・・・ダメだ、くたばってる。」

「ちっ、タダでさえ戦力が限られてるってのに」

その惨殺を目撃したリーダーのホルドが忌々しげに言葉を吐き捨てる。

「だってよぉ、小悪党風情が俺にカバチたれたっちゅーんならよぉ、漢っちゅーもん見したらにゃあ」

だが当のニールは事も無げに子供じみた口調で言い訳をした。この場の誰もかもをおちょくっているとしか思えない態度だ。

「アンタがこの場で一番強いってのはわかった。ズールーニール、だからもう俺たちの間で殺しは無しだ。」

ホルドの苛立ちを尻目にニールは他の覆面たちを挑発するように見回す。

ヴィクトリーホルド、お前さんはわきまえとるのはわかる。じゃけど周りのボンクラどもがよぉ~お?」

どうやらあの無意味な惨殺はニールの示威行動だったようだ。サル山でボス猿決めるんじゃねえんだぞ。狂ってやがるのか、このクズは?

「アンタの実力は十分わかった。俺程度じゃアンタにゃあ敵わないよ。」

「おーおー、素直じゃのう坊主。よっしゃ、気に入った!黒いの、おめえ名前は?」

顔はわからないがどうにも若造のようだ。ここにいるってことはコイツも裏の仕事を請け負っているってことだが・・・

「ニンジャとでも呼んでくれ。」

「ニンジャ?いなげな名前じゃのう・・・まあええ。んで、お前らはどうなんな。俺から青じでももろうてくか?」

「いや、勘弁願おう。どうあっても青アザでは済まない。」

「こらガキ!モノ言うんじゃったら名を名乗らんかダボが!」

「すまなかった。俺はタンゴだ。」

「文句ある奴ぁ今のうちに言うとけよ?俺が相手になるけぇ」

他の覆面からも異論が出ることはなかった。満を持してニールがこの場を仕切ろうと両手を大げさに広げて部屋の中心に歩み出ていく。

「ほいなら決まりじゃのう。俺が」

「待て!」

ニールに異を唱える声・・・言うまでもなくその場に緊張が走る。鬼の形相でニールが相手をにらみつけた。

「何じゃあ!名乗れ言うたじゃろがい・・・ん?ヴィクトリーホルドか。」

「俺の指示には従ってもらうぞズールーニール。ドミニクさんにも言われただろう?」

「そがなケツの穴の小さいこと言わんでもわーあっとる。ヴィクトリーホルドの言うことは俺の言うことじゃ思うて励め、ええな」

さもつまらんといった表情でニールが手を振る。さすがにパトロンがいなくては怠惰な潜伏生活を送れないとあって、ドミニク=ハウプクスの言いつけを無下にはできない。彼の名代であるホルドの言うことにひとまず従う構えのようだ。
その場を仕切ることに成功したホルドが本題を切り出す。

「時間など無いから自己紹介は無しだ。覆面で彼我を識別しろ。敵はもう動いている。」

「敵?おいおい、俺たちは目的すら聞いてないぜ。」

「敵はスタンバッハ公爵家のクレイモアと帝都Aランク、ヴァイス=タラントだ。」

覆面デルタが自らの質問の答えを聞いて恐れおののく。冷静に考えて勝てる相手ではないだろう。だが、ズールーだけは意に介さずやる気のようだった。

「ほう・・・」

「おい、そいつらを殺せってのか?そりゃあまりにも」

「早合点するな。お前らに殺してもらいたいのはヴァイスの連れているエルフの女だ。それ以外は無視して良い。奴らはそのエルフをめぐってぶつかり合うだろう、そこが勝機だ。」

何故かはわからないがクレイモアとヴァイス双方の動きを読んでいるあたり、雇い主であるドミニクの入れ知恵でもあるのだろう。ドミニクの依頼はすべてヤバいものばかりだが、どれも指示に従いさえすれば成功裏に終えることができた。今回もそれを信じるほかないとデルタが腹を決める。

「エルフねえ・・・ちぃとばかし味見してもエエんじゃろなあ?」

「ダメだ。見つけ次第かならず殺せ。いいか、先に言っておく。お前らも変な気を起こすと身のためにならんからな。」

「ちぇっ」

一人だけ随分と緊張感に温度差があるニールに辟易しながらホルドは手近なテーブルに地図を広げる。指を差した先は広大な旧都の中で北部にある商業区中心街だ。

「ヴァイスはここに逗留している。」

「まあ一流の宿なんざあのガキにゃあもったいないのお。じゃあメスガキは好きにしてエエっちゅうこっちゃな?」

「エルフをブチ殺したら後はお前の好きにしろ。その代わりもしやるのなら徹底的に痛めつけて殺せ。」

「ヴィクトリー・・・俺と初めて意見がおうたじゃないの。お前も見どころあるもんじゃのお。」
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