98 / 167
城内生活の一幕
しおりを挟む向かい合うように座ったままの俺たち――俺はまたユンファ様に口付け、その甘い舌を舐めて、絡めとってやりながら。
ユンファ様の首元を覆っていた白い布、彼のうなじにある紐をほどき、緩めて――すると案外容易く、はらりとそれは、取り払うことができた。
そうして俺が脱がせるなりユンファ様は、は…と唇を自ら離し――その顔を伏せ気味に…それでいて嬉しそうに頬を染め、微笑んでいる。
「…そういえば…先ほど僕は、清いのは唇だけだなんだと言いましたが…ソンジュ様、実はまだ…――僕の首にも、ジャスル様の唇は触れておりません…、先ほどは、首布をしたままでしたから……」
「…おぉそうですか…、それは何より嬉しく思います。――ふ、では…失礼いたします、ユンファ様……」
ユンファ様はどこか緊張したように「はい…」と答えながら、その首を横へ反らして俺に差し出してくる。
俺はユンファ様の、まだ踏み荒らされていない新雪…その白く、流れるような美しい首筋を上からそっと鎖骨まで、つー、と指先で掠め撫でた。…意外にもしっかりと喉仏が、孤島のように浮かんでいるのが何とも官能的だ。
ひく…とわずかな反応を示した彼に、俺はその人の首筋へ顔を寄せ――口付ける。
「…ふ、…ん…っ♡」
ふにゅりと俺の唇が触れれば、ゾクゾク、と先ほどより反応を強め、ユンファ様は俺の肩をきゅうと掴んでくる。…甘く小さな声をもらしたユンファ様、カタカタと震えているその手、ぬくもりの濃いなめらかな白肌は粟立ち…――もう片手は自分の口元を押さえた彼、
「あっ、なっなんて声を…! ごめんなさい、く、擽ったくて……」
「…ふ…本当にそれだけですか、ユンファ様…? とても艶やかで、可愛らしい声でしたよ…。どうか堪えず、あるがままに声を出してくださいませ……」
どうせもう、誰ぞに聞かれたところで今更よ、ならば思うままにつがい合うほうがよい…俺はユンファ様の首筋にそう囁き――それから、舌を出してつぅと擽ればビクリ、ひっとよりあらわな反応を見せるユンファ様。
なんと初々しく、可愛らしい反応か…――。
つー…と舌でなぞり、軽く吸い付き、ペロペロと舐める…甘く、芳醇な桃の香も濃い――桃の味もまた、濃い。
「…ん…♡ …んぅ…♡ は、あ、くっ擽ったい…、ぁぁ…♡」
ひくん、……ひくん、と小さく跳ねるユンファ様の体は、俺を誘う。…擽ったい、などと言いながら甘い声を出しているこの人は、未知の快感にそう言っているだけなのだ。
「…ぅぅ…♡ そ、ソンジュ様…ぁ……」
ちろちろとその甘い肌を舐め、ちゅうと軽く吸い付きながら――するりと彼の衿元を撫でるよう割り、ユンファ様の肩のほうへ下げてゆく。
「…ソンジュ様…、あの……」
「…綺麗だ……」
あらわになった白い鎖骨は、くっきりと浮き――首の筋に繋がって、華奢な影を落としている。…というのもユンファ様は、先ほど思い切って自分の胸元を俺に見せ付けてきたわり、…胸板の中央まで衿元を掴んで引き上げ、胸を隠し、俯かせた顔を真っ赤にしているのだ。
しかし、その人の黒髪がさらりとかかる白い肩は、すっかり晒され――今曲げられている肘まで、その薄桃色の着物も、中の襦袢も下ろされている。
「…はは、むしろ…そのほうが艶やかでございますよ、ユンファ様……」
「……? それは、どういう…」
すかさずその鎖骨にちゅっと吸い付けば、ぁ、と息を詰めたユンファ様。
ならばと俺は、ユンファ様の帯を解いてゆく。…幸い、俺にとってこの装束は勝手知ったるという構造であり、俺がこの帯を解いてゆくのは、それこそ鎖骨を舐めながらでもできるほど、あまりにも簡単である。
――甘く香る芳醇な桃の熟れた匂い…若桃に、かぷりと甘噛み。…つまり、その鎖骨にやわく歯を立てると、ぴくんっとユンファ様の体が小さく跳ねる。
「…ッ♡ ソンジュ、様……」
そのあとは、鎖骨のくぼみを舌で擽る。…ユンファ様の、自分の着物を握ったその手にきゅうと、力が入る。
するりと、かかる髪を避けるように撫で付けたその人の肩――俺の手のひらは、ユンファ様の意外にも筋肉質な、それでいて細い二の腕をなめらかに、滑りゆく。
「…はぁぁ……♡ ソンジュ様、僕…幸せでございます…」
すると、それだけでふるふるとしたユンファ様の体がじんわりと熱くなり、内側からしっとりと湿ってくる――。
「……俺も、愛しのユンファ様に触れることが許され、今、至上の喜びを感じております……」
「……、ふふ…」
斜へ伏せられた、その端正な顔は頬が紅潮し、はにかんでほのかに笑う。――着物の衿元を持ち上げて胸元を隠し、やや竦められた白い肩、それによってよりくっきりと浮かんだ妖艶な鎖骨と…上部のみ覗く、平たく雪のように白い胸板。…艶美な黒髪がさらさら落ちて、いくらかまたその白い肩に、胸板にかかる。
可憐でありながら、何とも妖艶な人だ――男として、貪欲となるほどに。
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました
言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。
貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。
「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」
それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。
だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。
それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。
それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。
気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。
「これは……一体どういうことだ?」
「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」
いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。
――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる