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背教者の遺産
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「何で?どうやってあの場所から?」
「お前たちのような存在だけが超常的な力を行使できると思わぬことだな。毒にはそれを超える猛毒で対処するのが我ら同胞団だ。」
私が構えると同時にバルトロメオも詠唱を始めた。どういうことだ?バルトロメオに攻撃したホーネットが次々とどこかへ消えてしまうぞ。
「消えた?うわぁっ!」
ホーネットがどうなったのか考えているのもつかの間、バルトロメオまでもが私の視界から消えてしまったのだ。人間のもっとも無防備なのはその背中、目を離してはならない敵が消えた時に無性に不安になるのが背後というもの。とっさに振り向いた私の背後にワーウルフが立っているではないか!
「ふははは、どうした?先程までの威勢はどこへ行った!喰らえ!」
「くっ!あっぶねー・・・ぐはぁっ!」
「リーファさま!」
リーファはバルトロメオが至近距離で放つウィンドブレードを紙一重でかわし、そのまま距離を取ったはずだった。それなのに何故か回避した先で死角から蹴り飛ばされたのだ。
どうせ先程のように理解不能な瞬間移動でもしたのだろう。ハニカムウォールも間に合わずに地面に転がった。
くっ・・・苦しいっ、呼吸が・・・できない・・・。
「あっ・・・あっ・・・うぅ」
「リーファさま・・・おのれ、許さない。必ずすり潰してやる!」
「ほぅ・・・お前は精霊か?どうやらお前は私の想像をはるかに超えていたようだ、リーファ=クルーン。思わぬ収穫になったものだよ、聖下もさぞやお喜びになられることだろう。」
ふぅ、ハニービー=キュアで何とか呼吸も落ち着いた。バトラーは感情がたかぶるとハニービー=ミラージュの制御に失敗して姿を現してしまうようになったんだよねぇ。まぁ、それもこれもあのダンジョンコアが原因なんだが・・・これだけは秘密だ。
しかしあの瞬間移動は厄介だぞ。ホーネットもどうやらアイツに攻撃をした瞬間にどこかへ強制移動されているようだ。これも攻防一体なのかよ・・・どうすりゃいいんだ?
「私は穀物じゃないんだ、収穫なんてされてたまるか。そんでもって・・・その瞬間移動は何なんだよ?お前ズルいぞ!」
「私をワーウルフに変えたお前がズルいと言うか?」
涼しい顔したバルトロメオが事も無げに言い放つ。まぁトンデモ攻撃するのは私も他人のことをとやかく言えた義理じゃない。むしろそれが無ければ私にそもそも勝ち目なんて無い場面なんていくつもあったじゃんよ。わかってるよ、わざわざ痛いとこ狙って突いてくんなし。
「ちっ、それを言われちゃ言い返せないや。」
「どうやら精霊という奥の手を披露してもらったのだ、返礼に私もお前に教えてやろう。クロヴィウス=エルメシウスを知っているか?」
敵にしては話せるじゃないか。ニコからも注意されたけど、アレに対応するヒントを引き出さないと。
「クロ・・・メシルス?・・・うん、知らん!」
「クロヴィウスは神に背いた大罪人だ。」
「そのクロヴィウスが何なんだよ?」
「その背教者は不遜にも強大な力を秘めた魔道具を遺したのだよ。これはその中の一つ、エリア・ディストーションだ。」
「エリア・ディストーション・・・何だそりゃ?」
「お前も既に味わっただろう?私は距離を自在に操れるのだ。」
この野郎!そんなズルいことしてやがったのか?断固抗議するぞ!
「やっぱズルじゃないか!」
「まあ、そう言うな。お前が思っている以上に制御困難で、実は使い勝手が悪いのだよ。範囲だって極めて限られているからなぁ。だがお前を封じ込めるには十分な力だ。」
距離・・・しかも短い。そうか・・・ホーネットたちが消えても一向に数が減っていかないのは、近距離転移だからすぐに戻って来れるんだ。ホーネットもかなり困惑しているみたいだけど無事なら問題なし。
「何だよ、神に背いた人が作った魔道具なんて信者が使っちゃダメだろ!」
「凡俗はそう考えるだろう。だが神の偉業を貫徹させる使命の前ではそんなもの些事に過ぎない。手段を選ぶこと無く邁進することが許されているのが同胞団だ。この魔道具も聖下より授けられし力なれば、身を穢しても全身全霊で使いこなすまで。」
「何でもありかよ、参ったなぁ。」
まぁ、その程度で魔道具を放棄させられたら面倒は無いわなぁ。そもそも私の口車に乗るようなヤツが軍隊を率いているはずないよね。ニコはグラムス城門の加勢に注力しているし、私だけで何とかしないといけないんだよなぁ。どうすべぇ?
「軍門に下るべし、リーファ=クルーン。その力をアシュケナム=ラウファンティス教皇聖下に捧げよ!」
「お前らこそさっさとグラムスから退けよ。」
「残念だがそれは無理だ。私の部下が聖戦の徴を打ち上げてしまったからな。」
「何で無理なんだよ?お前は西方審問騎士団を引き連れて来たお偉いさんなんだろ?」
「遺憾ながら私の指示なく聖戦が宣言された。本隊は免罪の霊薬を飲んだだろうよ、もはや私の制御を離れたに等しい。同胞団以外の生命体全てを殺さない限り、兵士自らの死のほかに止まらぬのだ。あれは私の部隊が使った加護の霊薬の比ではないぞ。」
服用してそのまま死んだヤツもいたはずなんだが?あれのおかげで身体能力と同時に凶暴性も上がったようだけど、仲間がワーウルフに変わった瞬間を直接見てるはずなのに躊躇なく殺してる狂戦士もいたよね。あの薬よりもヤバイのを飲んだってのか?集団全体で?・・・マジでイカれてるよあんたたち。
「クソ、何てことしてくれるんだ!もしかして、これってミハイルの言ってた最悪の事態ってヤツじゃないのか?」
「ミハイル?そう言えば、グラムスに我らを呼びつけたのもたしかそんな名前だったか?・・・なるほど、おおかた芸人風情が我らを裏切っていたのだろう。我らがいくら脅しつけようと都市首脳部が一向に怯まなかったのは、事前に何通りも対応を想定していたということだな?」
ぐっ、するどい!
西方審問騎士団がグラムスに到着する数日前にミハイルが投降したおかげで対策を練ることができたのはたしかだけど・・・そんな簡単に喝破すんなし。ミハイルの名前を出したのは失策だった。
「裏切り者には死によって報いるのが慣わしだ。が、今はそんな小者などどうでも良い。投降せよ、お前に勝ち目など無いぞ。」
「私の大事なもの全部奪い去って、あまつさえ言うことを聞けだって?ふざけんな!」
「部下にも見せていない切り札を披露したのだ、これで投降しないというならやはりお前の死体を持ち帰るほか無さそうだ。」
「さっきから勝手なことばかり言いやがって!私の死体なんてどうするつもりだ?」
「これほどの力を持つ者を活用できないのは深刻な損失だが、お前ならよしんば死体であろうと異世界からの召喚に必要な供物として申し分無かろうよ。ひょっとするとモンストルム・サケルをはるかに超えるかもしれん。」
「供物?」
「おっと、つい話し過ぎたか?私としたことが冥土の土産としては過ぎた宝を施したものだ。それでは自らのために祈れ、なるべく楽に殺してやる。」
死んでたまるか。何か良い方法は無いもんか?もう予め全方位にハニカムウォールを展開しておくという手も無くはないんだが、そもそもバルトロメオに攻撃が通らないのが痛い。
ヤツが力尽きるまでじっくり待っている時間なんて無いし。う~ん・・・、やばいな。そろそろ攻撃態勢に移るぞ!ん?
「どうなさいましたか、リーファさま?」
「いや、ちょっと思いついたんだよ。」
「お前たちのような存在だけが超常的な力を行使できると思わぬことだな。毒にはそれを超える猛毒で対処するのが我ら同胞団だ。」
私が構えると同時にバルトロメオも詠唱を始めた。どういうことだ?バルトロメオに攻撃したホーネットが次々とどこかへ消えてしまうぞ。
「消えた?うわぁっ!」
ホーネットがどうなったのか考えているのもつかの間、バルトロメオまでもが私の視界から消えてしまったのだ。人間のもっとも無防備なのはその背中、目を離してはならない敵が消えた時に無性に不安になるのが背後というもの。とっさに振り向いた私の背後にワーウルフが立っているではないか!
「ふははは、どうした?先程までの威勢はどこへ行った!喰らえ!」
「くっ!あっぶねー・・・ぐはぁっ!」
「リーファさま!」
リーファはバルトロメオが至近距離で放つウィンドブレードを紙一重でかわし、そのまま距離を取ったはずだった。それなのに何故か回避した先で死角から蹴り飛ばされたのだ。
どうせ先程のように理解不能な瞬間移動でもしたのだろう。ハニカムウォールも間に合わずに地面に転がった。
くっ・・・苦しいっ、呼吸が・・・できない・・・。
「あっ・・・あっ・・・うぅ」
「リーファさま・・・おのれ、許さない。必ずすり潰してやる!」
「ほぅ・・・お前は精霊か?どうやらお前は私の想像をはるかに超えていたようだ、リーファ=クルーン。思わぬ収穫になったものだよ、聖下もさぞやお喜びになられることだろう。」
ふぅ、ハニービー=キュアで何とか呼吸も落ち着いた。バトラーは感情がたかぶるとハニービー=ミラージュの制御に失敗して姿を現してしまうようになったんだよねぇ。まぁ、それもこれもあのダンジョンコアが原因なんだが・・・これだけは秘密だ。
しかしあの瞬間移動は厄介だぞ。ホーネットもどうやらアイツに攻撃をした瞬間にどこかへ強制移動されているようだ。これも攻防一体なのかよ・・・どうすりゃいいんだ?
「私は穀物じゃないんだ、収穫なんてされてたまるか。そんでもって・・・その瞬間移動は何なんだよ?お前ズルいぞ!」
「私をワーウルフに変えたお前がズルいと言うか?」
涼しい顔したバルトロメオが事も無げに言い放つ。まぁトンデモ攻撃するのは私も他人のことをとやかく言えた義理じゃない。むしろそれが無ければ私にそもそも勝ち目なんて無い場面なんていくつもあったじゃんよ。わかってるよ、わざわざ痛いとこ狙って突いてくんなし。
「ちっ、それを言われちゃ言い返せないや。」
「どうやら精霊という奥の手を披露してもらったのだ、返礼に私もお前に教えてやろう。クロヴィウス=エルメシウスを知っているか?」
敵にしては話せるじゃないか。ニコからも注意されたけど、アレに対応するヒントを引き出さないと。
「クロ・・・メシルス?・・・うん、知らん!」
「クロヴィウスは神に背いた大罪人だ。」
「そのクロヴィウスが何なんだよ?」
「その背教者は不遜にも強大な力を秘めた魔道具を遺したのだよ。これはその中の一つ、エリア・ディストーションだ。」
「エリア・ディストーション・・・何だそりゃ?」
「お前も既に味わっただろう?私は距離を自在に操れるのだ。」
この野郎!そんなズルいことしてやがったのか?断固抗議するぞ!
「やっぱズルじゃないか!」
「まあ、そう言うな。お前が思っている以上に制御困難で、実は使い勝手が悪いのだよ。範囲だって極めて限られているからなぁ。だがお前を封じ込めるには十分な力だ。」
距離・・・しかも短い。そうか・・・ホーネットたちが消えても一向に数が減っていかないのは、近距離転移だからすぐに戻って来れるんだ。ホーネットもかなり困惑しているみたいだけど無事なら問題なし。
「何だよ、神に背いた人が作った魔道具なんて信者が使っちゃダメだろ!」
「凡俗はそう考えるだろう。だが神の偉業を貫徹させる使命の前ではそんなもの些事に過ぎない。手段を選ぶこと無く邁進することが許されているのが同胞団だ。この魔道具も聖下より授けられし力なれば、身を穢しても全身全霊で使いこなすまで。」
「何でもありかよ、参ったなぁ。」
まぁ、その程度で魔道具を放棄させられたら面倒は無いわなぁ。そもそも私の口車に乗るようなヤツが軍隊を率いているはずないよね。ニコはグラムス城門の加勢に注力しているし、私だけで何とかしないといけないんだよなぁ。どうすべぇ?
「軍門に下るべし、リーファ=クルーン。その力をアシュケナム=ラウファンティス教皇聖下に捧げよ!」
「お前らこそさっさとグラムスから退けよ。」
「残念だがそれは無理だ。私の部下が聖戦の徴を打ち上げてしまったからな。」
「何で無理なんだよ?お前は西方審問騎士団を引き連れて来たお偉いさんなんだろ?」
「遺憾ながら私の指示なく聖戦が宣言された。本隊は免罪の霊薬を飲んだだろうよ、もはや私の制御を離れたに等しい。同胞団以外の生命体全てを殺さない限り、兵士自らの死のほかに止まらぬのだ。あれは私の部隊が使った加護の霊薬の比ではないぞ。」
服用してそのまま死んだヤツもいたはずなんだが?あれのおかげで身体能力と同時に凶暴性も上がったようだけど、仲間がワーウルフに変わった瞬間を直接見てるはずなのに躊躇なく殺してる狂戦士もいたよね。あの薬よりもヤバイのを飲んだってのか?集団全体で?・・・マジでイカれてるよあんたたち。
「クソ、何てことしてくれるんだ!もしかして、これってミハイルの言ってた最悪の事態ってヤツじゃないのか?」
「ミハイル?そう言えば、グラムスに我らを呼びつけたのもたしかそんな名前だったか?・・・なるほど、おおかた芸人風情が我らを裏切っていたのだろう。我らがいくら脅しつけようと都市首脳部が一向に怯まなかったのは、事前に何通りも対応を想定していたということだな?」
ぐっ、するどい!
西方審問騎士団がグラムスに到着する数日前にミハイルが投降したおかげで対策を練ることができたのはたしかだけど・・・そんな簡単に喝破すんなし。ミハイルの名前を出したのは失策だった。
「裏切り者には死によって報いるのが慣わしだ。が、今はそんな小者などどうでも良い。投降せよ、お前に勝ち目など無いぞ。」
「私の大事なもの全部奪い去って、あまつさえ言うことを聞けだって?ふざけんな!」
「部下にも見せていない切り札を披露したのだ、これで投降しないというならやはりお前の死体を持ち帰るほか無さそうだ。」
「さっきから勝手なことばかり言いやがって!私の死体なんてどうするつもりだ?」
「これほどの力を持つ者を活用できないのは深刻な損失だが、お前ならよしんば死体であろうと異世界からの召喚に必要な供物として申し分無かろうよ。ひょっとするとモンストルム・サケルをはるかに超えるかもしれん。」
「供物?」
「おっと、つい話し過ぎたか?私としたことが冥土の土産としては過ぎた宝を施したものだ。それでは自らのために祈れ、なるべく楽に殺してやる。」
死んでたまるか。何か良い方法は無いもんか?もう予め全方位にハニカムウォールを展開しておくという手も無くはないんだが、そもそもバルトロメオに攻撃が通らないのが痛い。
ヤツが力尽きるまでじっくり待っている時間なんて無いし。う~ん・・・、やばいな。そろそろ攻撃態勢に移るぞ!ん?
「どうなさいましたか、リーファさま?」
「いや、ちょっと思いついたんだよ。」
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