幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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立ちのぼる煙

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「コーエンの野郎、ムルグに頭下げてガウスの下で下働きすることになったらしいぜ?」

「あれから顔見せやがらねぇと思やぁ、こっそり足抜けってか?ナメやがって。」

「どうするゲランド?」

「ガウスの預かりになっちまえば、こちとら手も足も出ねえよ。」

「くそっ!ムカつくぜ。ナメられたら終わりだっつーのによぉ。周りに示しがつかねぇが・・・さすがに諦めるしかねぇか。」

コーエンをボコボコにするのは容易いが、ガウスの面目をつぶす真似をしでかして無事でいられるわけがない。手出しできないイラだちにバルシスが顔を歪める一方で、カマルはニヤついていた。

「まぁ・・・今はな。」

「今は?何かあるのか、カマル?」

「どうせあの根性なしはすぐに音を上げてガウスの下から逃げ出すはずだ。そん時ゃあキッチリ落とし前つけてやる。」

「なるほどな、楽しみだぜ。」

ハナから根性があればいつまでもEランクでくすぶっているわけはない。ムルグみたいな例外はあるにせよ、コーエンがその例外になれるとは誰も信じてはいなかった。

「じゃあ、あのガキどもはどうする?」

「コーエンがガウスへの手土産に強奪の目論見をチンコロしてるかもしれねぇ。今回は見送りだ。」

「ちっ!」

「まぁ胸クソわりーけどよぉ、スカッとする話も仕入れて来たんだ。」

「何だ?聞かせろよバルシス。」

「クソ野郎ぞろいのゴメスパーティーの死体がヒバート大森林で見つかったらしいぜ。道に迷った旅人が偶然見つけたんだとよ。」

「大金強奪してどっかに豪遊しに行っただの、追捕命令が下って逃亡しただの憶測が飛び交ってたからなぁ。アイツらに金巻き上げられて来たが、くたばってやがったとなりゃあ喜ばしい限りだぜ。」

「そう言やぁよぉ、ゴメスが失踪する直前にリーファってガキをしめてたっけか?」

「あぁ、俺も見たぜ。あいつからも上納金ふんだくろうとしてたんだろ?まぁソロのガキなんざ格好のカモだからな。」

「はっはっは、あの外道どもと考えるこたぁ一緒だな!どうしたゲランド、何か気になるのか?」

「ゴメスの野郎・・・ヒバート大森林?」

「あ?何かおかしいのかよ?」

「おかしい・・・どう考えてもおかしい。考えても見ろ、あいつらが森林に何の用がある?」

「え?そりゃあ・・・薬草でも採りに行ったとか?」

ゲランドは今聞いた話に何かがひっかかっていた。あと一息でつながりそうなのに、何かがわからず気持ちが悪い。

「あのクソ袋どもが?本気で薬草なんぞ真面目に採取するとでも思ってんのか?」

「あり得ねーな。」

「そういやぁギルドの把握している薬草の自生地は刈り尽くされて全く生えてないって聞いたことがあらあな。北方の戦争激化で買い占めも起こったからなぁ。」

「そんなの知らねーヤツなんざグラムスにいねーはずだ。じゃあ尚更あいつらそんなところに何の用があるってんだ?」

何だ?森の奥に行った、そしてくたばった。理由も無くそんなマネするか?ピクニックじゃあるめーし、何かをしに行ったんだ。

「たしかにそうだ。」

「そういやリーファってガキも薬草採取してなかったか?」

「!?」

「そうだなぁ・・・しかもあいつ必ず依頼の量を採取してたべ?どこで採取してたんだ?」

「馬鹿、そこじゃねーだろバルシス。」

「はぁ?そこじゃねーって、じゃあどこなんだよゲランド?」

俺としたことがとんだ勘違いをしてたぜ。森の奥に用事があったのはあのリーファってガキの方だ。そう考えれば合点が行く。

だとしたらこうだ。何かトラブって逆上したゴメスパーティーはガキを追いかけた。結果を見れば同じ森に分け入ってゴメスたちはくたばり、ガキだけ戻ってきた。原因と結果をつなぐ因果関係は・・・事故もしくは事故に見せかけた罠?

「ひょっとするとあのガキ・・・ゴメスたちをハメたんじゃねーのか?」

「まさか。たった独りであのボケナスどもをまとめてぶっ殺したってか?考えすぎだぜゲランド。」

「いや、弱みをつかめりゃ金を脅し取れるかもしれねぇ。調べてみる価値は」

ゲランドの推測を受けてカマルが身を乗り出す。すると言葉の途中で後ろのテーブルで飲んでいた男が近づいて声をかけた。

「実に興味深い話じゃないか、兄ちゃんたち。」

「あぁ?なに盗み聞きしてやがんだこの野郎。ちょいと表ぇ出ろや。」

話を立ち聞きされて逆上したゲランドが椅子から立ち上がった。しかし話題に飛び入りした男はゲランドたちと同じテーブルに腰かけてにこやかに続ける。

「まぁまぁ、ここの支払いは俺がもつよ。あんたらリーファって冒険者が気に入らねぇんだろ?」

「何だ、オメー少しは話がわかるじゃねーか。何者だ?」

「いやぁ、恥ずかしながら少し前にヤツに煮え湯を飲まされてね。個人的に恨みがあるんだ。もしも本当に弱みがあるなら是非とも集めたい。」

金になりそうだと踏んだカマルがニヤつく。

「ま・・・タダとは行かねえよなぁ。」

「そうかい。俺たちの手足となって働いてくれるんなら報酬も出そうじゃないか。」

***

「というわけで、今日はバッチリ弱みをつかんじゃうことにします。」

「何がというわけなのティナ?」

どういうわけか朝早くにティナに叩き起こされたリーファはワケもわからず急かされるまま着替えを済ませていた。これから一体何が始まるというのか?

「うふふー、それはねぇ・・・ヌイユ・エトランゼにお菓子部門を創ろうっていう私のナイスな提案を黙殺したマルテに快く承諾をもらうためなんだよぉ。」

「それって、快くって言うのかなぁ?」

「何言ってるのかこってりわからないんだよリーファ?」

「私もぽっくりわからないんだけど・・・。」

「今日はマルテが休みの日だから、おめかししてどこかに行くはずなんだよ。」

「そう言えば、ダンジョンでそんな話してたね。」

すっかり忘れていた。一緒にマルテの恋人(予想)を見てみようって約束していたんだ。でも言い出しっぺのティナも今の今まで忘れていたんじゃなかろうか。

「もうリーファってば忘れてたんだね?そう、マルテの秘密を暴くついでに交渉を有利に進めようってリリカルな作戦なんだよ。」

「悪意に満ち満ちてるね。」

「私に対する仕打ちの数々を聞けばこの程度のこと何てこと無いんだよ。聞いてリーファ、ひどいんだよみんな。」
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