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踏んだり蹴ったり吐いたり飲んだり
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「シカトしてんじゃねぇぞコラァ!」
「痛たた・・・、もー何なのー?」
ティナがワケも分からず腰をさすりながら立ち上がると、そこにはとてもお友達にはなれそうもない見知らぬ顔が並んでいた。
「オメー羽振りが良いんだってなぁ?俺たちそのことで話があってよぉ、ちょっとばかしツラ貸せや?」
「やだよ。私これからお菓子部門創設で忙しくなるから時間ないもん。」
「ないもん・・・じゃねぇクソガキ!おろっ?」
カマルが怒りにまかせて振りかぶった拳は見事に空振りする。今度はそれを見たバルシスがティナに襲いかかった。
「なに避けてやがんだ!このっ!」
「オラー!くっ!」
狭い空間でスウェーバックやダッキングを駆使するティナが華麗に舞う。身体も小さい分、余計に的も絞りづらかった。
「もぅ、やめてよね。あんまりオイタが過ぎると私だって怒るんだよ?」
「はぁはぁ、こいつ・・・速えっ!」
いにしえのチンピラ軍師さまの編み出した4人囲いタコ殴りの陣がまったく通用しない事態にゲランドたちも驚愕の表情を隠せない。ティナはあれだけ避けまくって息一つ切らしていないではないか。それにとどまらずスルリと包囲の外に抜け出てしまった。
「ハーフリングのくせしやがって、ヒュームさまに楯突く気か?」
「あー、そんなこと言ったらちょっとお姉さんも傷ついちゃうんだよー。」
「誰がお姉さんだチビスケ!」
「むっきー!チビって言ったなぁ、トサカに来たんだよー!えいっ」
激昂したティナが右腕を上げる。
「痛ってー!」
「どうしたカマル!」
目の前のチビスケが手を上げた瞬間、侮辱を加えたカマルが叫び声を上げて地面にうずくまる。それを見たゲランドは街中にも関わらず剣を抜いてティナに襲いかかった。
「このアマ!ぶっ潰してやぅギャアー!」
「ゲランドー!!」
立てつづけにゲランドが戦闘不能になってしまった。ゲランドはリーダーでパーティーのエースでもあるのに、たかだかガキンチョにのされるとは・・・。
「残るはあんたたち2人だけど・・・続ける?」
「クソが!ぐぅっ!」
「もぅ・・・気が短いなぁ。下手に動くとそこの人みたいに転がしちゃうよ?」
「バルシスまで?チクショー、何しやがったんだ?」
ティナは護身用にいくつか暗器を忍ばせていた。それというのも今日のような休日に丸腰で街をうろついていた時に、いきなり後ろから袋をかぶせられて奴隷商にさらわれた経験があるからだ。
さすがにいざと言うときに武器の一つでも持ち歩かないと抵抗も脱出もままならないことを思い知っていた。
「私ねー、さっきチビって言われたんだけどー?どういうことかなぁ?」
「ひぃっ!・・・な、何かの間違いだと思います。どうか・・・どうか許してください、キレイなお姉さま。」
「そうだよねー?間違いじゃなかったら、その人はたぶん目が腐ってるんだよ。じゃあエグるのは無しかなぁ。でも許すのは今回だけだからね?次は容赦できないんだよ。」
「は・・・ははははは。」
「これ解毒剤。死にはしないだろうけど、4時間以内に飲まないと後遺症が残っちゃうかもなんだよ。はーい、3錠ね。失くしちゃダメなんだぞ?」
あどけない顔してとんでもないモノを持ち歩いていることにコーエンはもはや笑うことしかできなかった。余計なことを口走って少しでも機嫌を損ねようものなら残った自分もやられてしまいかねない。
「は?・・・あは・・・あははは。」
「痛ぇー、気持ち悪いー」
「早くくれぇー、コーエーンー」
「おえぇぇぇっ」
先ほど飲み食いしたものを派手に吐きちらしているのに、仲間はこの錠剤を吐き出さずに飲み込めるのかと独りコーエンは途方に暮れた。
***
「くそぉ、あのチビが強えなら強えって言えよムルグの野郎!」
「ヒデー目にあったぜチクショーが。うぅっ、まだ気持ち悪さが抜けねぇ。」
「解毒が錠剤とかどんな拷問だよ?頭狂ってんじゃねぇか、あのチビ?あぁ、また吐きそう。」
ティナにもらった錠剤は効いてはいるものの、錠剤を吐き出しては地面に落ちた錠剤を飲み込むという地獄のサイクルを繰り返したため薬効成分の3割くらいは摂取し損ねた。
「どうする?もうやめとくか?」
「馬鹿野郎!ナメられっぱなしで退けるかよ。無事なのはコーエン、テメーだけだ。別のガキさらって来るか、せめて情報だけでも集めて来い。」
「えぇー!ひ、一人でか?」
「一人だけケツまくって俺たちを売ったんだ、それくらいやれや!」
「俺が降参して謝ったから解毒できたし、介抱もできたんだ。そんな言い方」
「ゴチャゴチャうるせぇんだよ裏切り者!」
「とっとと言ってこいや!」
「わ・・・わかったよ。」
助けた仲間たちに追い立てられて、コーエンはしぶしぶ街中でリーファたちの姿を探す。しかし段々とおさえようのない馬鹿馬鹿しさがこみ上げて来て、ついにはやっていられなくなった。コーエンは立ち止まって、心の中で毒づく。
ちぇっ、そもそも楽勝だっつーから乗ったってのによぉ。あいつがあんだけ強けりゃ、もう一人の狐娘も強えんじゃねーのか?
「俺ぁもうやりたかねぇや馬鹿馬鹿しい。やめだやめ、ギルドの酒場で飲み直すべ。三馬鹿にゃあ明日にでも適当ぶっこいときゃ済むだろ?」
スッパリ仲間を切り捨てたコーエンがギルドの入り口をくぐり、酒場に入っていくとどこかから酔っ払いの声が聞こえてきた。
「ほらリーファも飲めよ、アタシの酒が飲めねぇってのか?あん?」
「ん?リーファだと?」
声のする方向を見ると例の2人が食事をしているようだった。
「うぜぇシンディー、弱いんなら最初っから酒なんか飲むなよ。」
「何だとー?ホント可愛い顔しやがってこんにゃろ、ほらチューだ。」
「ホラチューダ?何だそりゃ?」
「アタシがチューしてやっからこっち向け」
「マジでうぜぇ。死ね!助けてよライナ。」
「放っとけよリーファ。酔っ払いはそのうち寝ちまうから一人にしちゃいな。」
おいおい、これって願ってもねぇチャンスじゃねぇのか?あの酔っ払った狐娘をそのまんまさらっちまえば大金ゲット。上手く行きゃあ俺だけで独り占めも・・・。
いや、報復のことも考慮に入れるとなりゃあゲランドたちも巻き込んだ方がいいのか?癪だがしかたねぇな。
「痛たた・・・、もー何なのー?」
ティナがワケも分からず腰をさすりながら立ち上がると、そこにはとてもお友達にはなれそうもない見知らぬ顔が並んでいた。
「オメー羽振りが良いんだってなぁ?俺たちそのことで話があってよぉ、ちょっとばかしツラ貸せや?」
「やだよ。私これからお菓子部門創設で忙しくなるから時間ないもん。」
「ないもん・・・じゃねぇクソガキ!おろっ?」
カマルが怒りにまかせて振りかぶった拳は見事に空振りする。今度はそれを見たバルシスがティナに襲いかかった。
「なに避けてやがんだ!このっ!」
「オラー!くっ!」
狭い空間でスウェーバックやダッキングを駆使するティナが華麗に舞う。身体も小さい分、余計に的も絞りづらかった。
「もぅ、やめてよね。あんまりオイタが過ぎると私だって怒るんだよ?」
「はぁはぁ、こいつ・・・速えっ!」
いにしえのチンピラ軍師さまの編み出した4人囲いタコ殴りの陣がまったく通用しない事態にゲランドたちも驚愕の表情を隠せない。ティナはあれだけ避けまくって息一つ切らしていないではないか。それにとどまらずスルリと包囲の外に抜け出てしまった。
「ハーフリングのくせしやがって、ヒュームさまに楯突く気か?」
「あー、そんなこと言ったらちょっとお姉さんも傷ついちゃうんだよー。」
「誰がお姉さんだチビスケ!」
「むっきー!チビって言ったなぁ、トサカに来たんだよー!えいっ」
激昂したティナが右腕を上げる。
「痛ってー!」
「どうしたカマル!」
目の前のチビスケが手を上げた瞬間、侮辱を加えたカマルが叫び声を上げて地面にうずくまる。それを見たゲランドは街中にも関わらず剣を抜いてティナに襲いかかった。
「このアマ!ぶっ潰してやぅギャアー!」
「ゲランドー!!」
立てつづけにゲランドが戦闘不能になってしまった。ゲランドはリーダーでパーティーのエースでもあるのに、たかだかガキンチョにのされるとは・・・。
「残るはあんたたち2人だけど・・・続ける?」
「クソが!ぐぅっ!」
「もぅ・・・気が短いなぁ。下手に動くとそこの人みたいに転がしちゃうよ?」
「バルシスまで?チクショー、何しやがったんだ?」
ティナは護身用にいくつか暗器を忍ばせていた。それというのも今日のような休日に丸腰で街をうろついていた時に、いきなり後ろから袋をかぶせられて奴隷商にさらわれた経験があるからだ。
さすがにいざと言うときに武器の一つでも持ち歩かないと抵抗も脱出もままならないことを思い知っていた。
「私ねー、さっきチビって言われたんだけどー?どういうことかなぁ?」
「ひぃっ!・・・な、何かの間違いだと思います。どうか・・・どうか許してください、キレイなお姉さま。」
「そうだよねー?間違いじゃなかったら、その人はたぶん目が腐ってるんだよ。じゃあエグるのは無しかなぁ。でも許すのは今回だけだからね?次は容赦できないんだよ。」
「は・・・ははははは。」
「これ解毒剤。死にはしないだろうけど、4時間以内に飲まないと後遺症が残っちゃうかもなんだよ。はーい、3錠ね。失くしちゃダメなんだぞ?」
あどけない顔してとんでもないモノを持ち歩いていることにコーエンはもはや笑うことしかできなかった。余計なことを口走って少しでも機嫌を損ねようものなら残った自分もやられてしまいかねない。
「は?・・・あは・・・あははは。」
「痛ぇー、気持ち悪いー」
「早くくれぇー、コーエーンー」
「おえぇぇぇっ」
先ほど飲み食いしたものを派手に吐きちらしているのに、仲間はこの錠剤を吐き出さずに飲み込めるのかと独りコーエンは途方に暮れた。
***
「くそぉ、あのチビが強えなら強えって言えよムルグの野郎!」
「ヒデー目にあったぜチクショーが。うぅっ、まだ気持ち悪さが抜けねぇ。」
「解毒が錠剤とかどんな拷問だよ?頭狂ってんじゃねぇか、あのチビ?あぁ、また吐きそう。」
ティナにもらった錠剤は効いてはいるものの、錠剤を吐き出しては地面に落ちた錠剤を飲み込むという地獄のサイクルを繰り返したため薬効成分の3割くらいは摂取し損ねた。
「どうする?もうやめとくか?」
「馬鹿野郎!ナメられっぱなしで退けるかよ。無事なのはコーエン、テメーだけだ。別のガキさらって来るか、せめて情報だけでも集めて来い。」
「えぇー!ひ、一人でか?」
「一人だけケツまくって俺たちを売ったんだ、それくらいやれや!」
「俺が降参して謝ったから解毒できたし、介抱もできたんだ。そんな言い方」
「ゴチャゴチャうるせぇんだよ裏切り者!」
「とっとと言ってこいや!」
「わ・・・わかったよ。」
助けた仲間たちに追い立てられて、コーエンはしぶしぶ街中でリーファたちの姿を探す。しかし段々とおさえようのない馬鹿馬鹿しさがこみ上げて来て、ついにはやっていられなくなった。コーエンは立ち止まって、心の中で毒づく。
ちぇっ、そもそも楽勝だっつーから乗ったってのによぉ。あいつがあんだけ強けりゃ、もう一人の狐娘も強えんじゃねーのか?
「俺ぁもうやりたかねぇや馬鹿馬鹿しい。やめだやめ、ギルドの酒場で飲み直すべ。三馬鹿にゃあ明日にでも適当ぶっこいときゃ済むだろ?」
スッパリ仲間を切り捨てたコーエンがギルドの入り口をくぐり、酒場に入っていくとどこかから酔っ払いの声が聞こえてきた。
「ほらリーファも飲めよ、アタシの酒が飲めねぇってのか?あん?」
「ん?リーファだと?」
声のする方向を見ると例の2人が食事をしているようだった。
「うぜぇシンディー、弱いんなら最初っから酒なんか飲むなよ。」
「何だとー?ホント可愛い顔しやがってこんにゃろ、ほらチューだ。」
「ホラチューダ?何だそりゃ?」
「アタシがチューしてやっからこっち向け」
「マジでうぜぇ。死ね!助けてよライナ。」
「放っとけよリーファ。酔っ払いはそのうち寝ちまうから一人にしちゃいな。」
おいおい、これって願ってもねぇチャンスじゃねぇのか?あの酔っ払った狐娘をそのまんまさらっちまえば大金ゲット。上手く行きゃあ俺だけで独り占めも・・・。
いや、報復のことも考慮に入れるとなりゃあゲランドたちも巻き込んだ方がいいのか?癪だがしかたねぇな。
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