幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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木を隠すなら森の中

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「聖教国の思惑もそうだが、セイジロウの動きも不気味ではある。手がかりは残されたモノだけだ。ところで一つ気になったのだが」

「どうしたリアン?」

「バトラーが言う燃え盛る炎を封入した水晶球というのはもしや・・・伝え聞くダンジョンコアなのではなかろうか?」

「ダンジョンコアにはいくつか記録はあったな。オーブとのことだが・・・なるほどそれらの記述と合致する。しかし・・・」

「左様、ダンジョンを抜け出た瞬間にコアは消滅するというのが我らの共通認識だ。地上に持ち帰ることができるという話は聞いたことが無い。」

「リアン、リーファは空間収納スキルの使い手だ。だから持ち出せたんじゃないか?」

「しかしグレン、ダンジョンコアを空間収納して持ち出す試みは既にいくつもの前例がある。それらは全て失敗だったはずだ。バトラー、あなたの話では取り出せないとのことだがオーブは現時点で確かに保有しているのか?」

「リアンさま、私の管理するパントリーには現在もオーブが存在いたします。」

「ふむ・・・」

リーファの特異性はバトラーを介して間接的に空間収納を用いていることが鍵なのかもしれぬな。まさかダンジョンコアを外に持ち出す方法があろうとは・・・。

「リアン、ひょっとするとダンジョンコアではないのかもしれないぞ。そうと断定する材料もあるまい。」

「なあトーラス、ダンジョンマスターの置き土産について何か気づいたことは無いか?」

「ん?いきなりどうしたんだスアレス、俺は謎かけを好まない。言いたいことがあるならハッキリと・・・あっ!」

「どうした?」

「そう言えば帰路では25階層へ向かっている時よりもはるかにダンジョンの抵抗が少なかった。おかしいとは思っていたが、そういうことか!」

どういうことだよトーラス?ダンジョンコア?置き土産?誰でもいいから私にもわかるように説明してくれ。

「なるほど。帰る段階で実はリーファが密かにダンジョンコアを所持していたから、置き土産の発動がそこで停止されたってことか。そう仮定すると帰路の謎にうまく説明がつく。やっぱりリアンの言う通り、それダンジョンコアなんじゃねーのか?」

ダンジョンコアがあるとダンジョンの抵抗が少なくなるのか・・・って、ティナならともかく何故シンディーがそんなこと知っているんだ?

「どうしてセイジロウの持ち物を回収したことを黙っていたんだ、リーファ?」

「え?あぁそうか。全くダンジョンコアの話も知らなくて、こんな重要なことなんだって気がつかなかったんだ。ご・・・ごめんなさい。」

私はマキアスに問われて今さらながら気づいた。たしかに知らぬこととは言え、私が伝えていれば帰路は憂い少なく帰ることができたはずだ。私は何でその時に伝えなかったんだっけ?

「リーファは冒険者になって日が浅い、知らないのも当然だろう。むしろ事前にそのことを教えていなかった我ら先輩冒険者の落ち度。リーファを責めるのは酷と言うものだ。」

「うげっ姐さん、決してリーファを責めてるわけじゃないんだ。俺はその頃気を失ってサミュエルに抱えられて退避してたから、単純に状況を知りたかっただけなんだよ。断じてそんなつもりは無いんだ。頼む、信じてくれ。」

「あ、あぁ。どうやら私の勘違いのようだなマキアス、先の発言は取り消そう。」

「ふぅ・・・よかった。言葉って難しいぜ。」

マキアスの必死の弁明にリアンも少しばかり驚いている様子だ。機を逃すまいとリーファは先ほどから気になっている事を切り出した。

「もしもダンジョンコアだったとして、取り出せないまま持ちつづけたら私とバトラーはどうなっちゃうのかなぁ?」

「それは・・・」

「リーファ、残念だがそれは誰にもわからない。」

「そ、そうだよね。ごめん、変なこと聞いちゃって。」

リーファも明確な答えを期待していたわけではなかった。そもそもこんなイレギュラーな出来事なのだからこそ、最初からずっと推測ばかりだったではないか。答えは予測していたはずなのに、漠然とした不安がリーファの顔を曇らせる。
リーファの心情を読み取ったリアンが柔和に微笑んで語りかけた。

「だが安心しろリーファ。何があろうと私がいつでも側にいて力になろう。」

「ありがとう、リアン。」

「おいおい、リアンだけじゃないぜ。俺たちも忘れんなよ。なぁスアレス!」

「いいこと言うじゃないかマイク。だが・・・いいことを言うのは本来俺の役目だからあまり出しゃばらなくていいぞ。」

「ゴホンっ!ん、ううん。リーファが是非にと言うなら、このトーラスも力添えせんでもないぞ。」

「うん、みんなに助けてもらえると嬉しいなぁ!ねぇ、バトラー?」

「どうかお力添えいただきますよう伏してお願い申し上げます。」

「妖精に頼まれちゃぁ俺も断れねぇやな。だが俺たちの抱えている話は揃いも揃って災厄をもたらす危険な代物だぜぇ。」

「ガウスの言う通りだ。一般人なら荒唐無稽な話だって耳を傾けるはずはないが、西方審問騎士団は違う。今だって手段を選ぶことなく、どんな情報でも血眼になって集めてるに違いない。ヤツらは帝国の一地方都市にだって乗り込んで来るだろう。」

「ここでの話は一切口外してはならないな。」

「今日ここでの話は完全に秘密にできるが、他の救難隊のヤツらだって俺たちがダンジョンマスターと対峙したことくらいは知ってるんだ。レダムたちが何とかなるとしても、救難隊全員に口止めは・・・。」

「人喰い坑の真相については情報撹乱しよう。」

「どういうことだ、リアン?」

「人の口に戸は立てられないということだ、スアレス。であれば、むしろ大いに話してもらおう。幸い、セイジロウを直接目にした者たちは極小数だ。24階層に留まった者たちはほとんど詳細を知らない。いくつもの異なる偽の情報を流布し、真相を闇に葬るのだ。」

こんな事を平然と言ってのけるとは・・・恐ろしい女だ。だがその冷徹かつ豪胆な部分も、このトーラスのライバルには相応しい資質と言える!リアン=シルバ、俺はお前を超えて見せるぞ。・・・ちょっと待て。これじゃ俺が負けているみたいじゃないか。

「脚色ばかりが膨れ上がった与太話にしちまうのか。」

「あぁ、田舎にありがちなアレな。みんなてんでバラバラで、聞くほどにとっ散らかってく伝承みたいな?」

「そうか、しばらくはギルドの酒場に入り浸りだ。これが無くとも決まりきったことだがよぉ。」

「丁度どいつもこいつも懐があったけーから何は無くとも酒場に集まるはずだぜ。」

「いっちょ派手に話を盛りまくってやるか。地下深くに眠っていた巨大ミミズとの死闘!」

「西方審問騎士団の介入は断固阻止だ。グラムスにはユグルト伯爵家の後ろ盾があるにしても面倒なことになるのは確実だからなぁ。頼むぜ、お前ら。」
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