幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

文字の大きさ
上 下
56 / 167

お帰りアンブッシュ

しおりを挟む
「あーぁ、アレを独り占めできたら遊んで暮らせるぜ。今回のダンジョンでの獲物は山分けってルールだから仕方ねえけど・・・。残念だなリーファ。」

クリスタルゴーレムの欠片を入手した私にマイクが語りかける。私としては別にアレが無くてもお金には困らないだろうし。みんなの報酬に上乗せされるなら別にそれでも構わないよ。

「え?まぁいいんじゃないの。」

「ははは、欲が無ぇなぁリーファ。」

「いちいち倒したモンスターを解体してたら救助も遅れるし、救助隊ってのは得てしてそんなもんだってグレンが言ってたよ。違うの?」

「獲物が召し上げられるんだったら結局は骨折り損。抜け駆けがバレりゃあペナルティでそれこそ大損。逆にそれが救助隊の統制につながるんだ。」

実際グリフォンなどの素材は高く買い取られるらしいが、25階層への強行においてそのまま捨て置かれたというのもそういう理由だった。帰る途中で回収しようにも既に食い荒らされて、残されたものもロクなものではない。

今思うとパントリーにぶち込んどけば良かったのかもしれない。今ヘタなこと言うと周りの冒険者から恨みごとを山ほど言われそうだから黙っておこう。

「へぇ、そうなんだ。あの取り決めってそんな意味があったんだねスアレス。」

「クリスタルゴーレムが現れたのがマキアスたちを回収した帰路で良かった。でないとクリスタルゴーレムを前に素通りしなきゃならなかったんだ。」

「じゃあまた狩りに来ないとね。」

「そうしたいのは山々だが、奴は一度襲われた場所には姿を現さないんだ。そもそも何度も遭遇するようなモンスターでもない。俺も話には聞いていたが、遭遇したのは実のところ今回が初めてだ。あんなに硬いとはさすがに驚いたよ。」

「それにしても何でみんなに見せたんだよリーファ。内緒にしておけば後でシンディーちゃんと山分けできたのに。」

「仮に内緒にしたとしても私の顔を引っ張るようなヤツには口が裂けても教えないし、分けてもやらない。」

「も・・・もしかしてリーファ、まだ欠片を持っているのか?・・・いやぁ、悪かったよリーファちゃん!おっ、そういやそこはかとなくリーファちゃんって美人だよなぁ。アタシ前から薄々そう思ってたんだよ。」

「気持ち悪いからやめろよシンディー。それにしても私のホメ方がえらく雑だなぁ・・・そこはかとなくだの薄々だの。言葉の節々から心にも無いこと言ってるの丸分かりだぞ?」

「そんなこと無いよリーファちゃん。シンディーちゃんの澄みきったお目々が嘘ついてるとでも?」

お前の目を見たところで私の考えは特に変わらないんだが?

「いや、欠片はアレで全てだから・・・隠し持ってたって、現金化する時に足が着くだろ?」

「ちぇっ、じゃあしょうがねー。」

「はっはっは、変わり身早ぇなぁシンディー。」

「浅ましいよシンディーは。」

マイクが笑っている横では呆れたティナがシンディーを白眼視している。バツの悪くなったシンディーは誤魔化すようにティナに話をふった。

「何だよ良い子ぶりやがって、チビッ子だって私たちだけで山分けしたいって思っただろ?」

「そりゃちょっとはそう思うけど・・・、でも下手に同業者の恨みを買うのは怖いんだよ。冒険者は特にね。」

「そうだな、ティナの言う通りだ。分配でモメて解散したパーティーは多い。酷いのになると殺し合いなんてのもザラだ。」

「スアレスたちもモメたことあるの?」

「いいや、俺たちパーティーにはリーファも知らない鉄の掟がある。少なくとも分配でモメたことは無いな。」

「スゴいね。どうしてるの?」

「基本的には等分で山分けなんだが、貢献度によるボーナスがある。」

単純に等分だったらサボることだってできるもんね。でも欲張りがいたら自分の主張を譲らないんじゃないの?

「え?貢献度って・・・それこそモメそうだけど。」

「いやぁ・・・リアンが評価してるんだが、誰も反論できないほど緻密で的確なんだよ。6人で不満をぶつけ合っても話し合いの後にはみんなスッキリと納得してた。」

「鉄の掟って・・・リアンがいないと成立しないじゃんか。」

「はっはっは、それな。」

「先ほどから生臭い話ばかりではないか、あまりよろしくないぞお前たち。」

マズい、あまりにも私たちが金の話ばかりしてるもんだからリアンが不機嫌な顔をしている。あのシンディーですらちょっと焦ってるじゃないか。

「ほら欲張りっ子、叱られたじゃねぇか。リアンに謝れよ。」

「何言ってんのよシンディー!アンタが誰よりも強欲なこと言ってたでしょ!何で私が謝るのよ?」

私たちは互いにバカなことを話しながらも地上へと帰還することができた。スアレスとリアンは口々にダンジョンの抵抗が想定を下回ると言っていたのが少し気になるけど、そのおかげで無事に地上へ帰還できたのだから良いじゃないか。

***

「ただいまー!リーファさまのお帰りだぁ!」

私が勢いよく扉を開けて我が家に飛び込むと驚きの光景が飛び込んで来た。何やらキレイな制服姿の人たちばかりだ。どうやらここは私の家ではないらしい。

「あっ!すいません、間違いました。」

「おい何やってんだよリーファ。」

「早く入ってリーファ。疲れたんだからゆっくりさせてよぅ。」

後ろでつっかえているシンディーとティナが早く家に入れとブーたれて来るってことは・・・やっぱり私の家だなぁ。ってか、こんなデカい建物なんてココしかないし。

「え?やっぱり我が家で間違いないよな。ふぇー、それってどうしたの?」

「どうだ、すごかろうリーファ。」

「トマソン?」

「見ろよ、ダンジョンに行ってたアイツら目が点だぜ。」

「へっへっへ、可愛いだろ?」

「エルマ、服を揃えたんだね。良いよ・・・すごく良い!」

「ボーネランドさんの提案を受けて、店として一式揃えて見たんだ。デザインとかもいろいろ話し合って詰めたんだぜ。」

「素材も良いモノを使っているんだ。ワシもかなり勉強させてもらったがな。」

「はぁー、私の制服はあるの?もちろんあるんだよねぇマルテ!どこにあるの?ねぇってば!」

可愛いモノに目がないティナが必死の形相でマルティナに詰め寄っている。マルティナは一瞬口元が緩んだように見えたが見間違いだろうか。すぐに困ったような顔を見せた。

「ティナの分は・・・ごめん、忘れてた。」

「そんなぁ・・・、こんな可愛い制服が着られないなんて。何で私が店員やってる時に揃えてくれなかったの!」

「ティナはいいとして、世紀末ファッション覇王シンディーちゃんの制服は用意してあるんだよな?さっさとよこせよエルマ?」

「お前のも無ぇよ。」

「がーん」

「ほら、リーファも袖とおしてみ?」

ショックを受けるティナとシンディーの後ろで、ロミアが私の制服を持ってきてくれた。白とグリーンを基調とした華やかなエプロンドレスだ。

「私の制服もあるの?やったぁ!」

「ふざっけんな、何でリーファのはあるんだよっ!」

「そうだーっ!リーファだけズルい。」

「冗談だからそんな必死になるなよ。お前らのだってあるさ、準備しないワケがないだろ?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

だらだら生きるテイマーのお話

めぇ
ファンタジー
自堕落・・・もとい楽して生きたい一人のテイマーのお話。目指すのはスローライフ!

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

処理中です...