幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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3分一本勝負!お宝つかみ取り大会

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「俺たちも行こうマイク。」

「こうしちゃいられねぇ、行くぞ!」

クリスタルゴーレムの名前を聞いた瞬間、スアレスの顔色が変わった。と思ったらマイクと飛び出して行っちゃった。

「スアレスまでどうしたんだ?」

「何言ってんのリーファ?私たちも行くよ!」

その一言が聞こえると同時にティナが私の手を引っ張って走り出す。私はワケもわからず転びそうになりながら、何とか体勢を立て直した。

「わわっ、待ってティナ。引っ張らないで!どうしたの?」

「お宝つかみ取りのチャンスだよ。クリスタルゴーレムの一部だけでも削り取ればかなりもうかるんだ。」

「何だよ、私も連れて行けや!」

ふと隣を見るといつの間にかシンディーも一緒に走ってついて来ていた。

「言っとくけどシンディー、魔術は通用しないからね。打撃だけしか通らないんだから。」

「えー!そんなぁ。だからリアンは微動だにしなかったのか。」

ついていくだけ無駄と悟ったシンディーがとぼとぼと戻って行く。前方を見やると槍を構えた男が何かを手にしながら雄叫びを上げているようだ。

「しゃー、欠片げっとー!」

「くそぉ、固え!剣が折れちまった。うおっ!」

「マズい、逃げられる!」

「うわぁ!」

たどり着いた先では透き通った体躯のゴーレムが群がる冒険者をそこかしこにぶっ飛ばしながら距離をとろうとしているようだった。一通り冒険者を蹴散らすとその場にしゃがみ込む。
すると次の瞬間、信じられないことに天井へと跳躍して手足を天井へと突き刺したではないか。目ん玉飛び出るくらいの信じられない出来事が起こってしまった。

「どへぇぇぇ!あのデカブツ、あんなことできるの?ねぇティナ!ティナってば!」

「うわぁん、せっかく走って来たのに間に合わなかったよお。」

ダメだ、ティナは地面に膝をついて半べそかいてる。

「くそっ!天井に張り付きやがった。何て跳躍力だ!」

「あぁなっちまったらもうダメだ・・・誰も手を出せねぇ。」

「欠片を採ったのは・・・トーラスだけかよ。ちくしょー!」

周りのみんなも呆然とゴーレムを見送っている。さっきまでの馬鹿騒ぎはいったい何だったんだろう?すると残念そうにティナがつぶやく。

「あぁ・・・天井に埋まって行くのを指を加えて見てるだけなんて。」

「まだ攻撃しても良いの?」

「何言ってるのリーファ!できるんなら早く攻撃して!お願いっ!」

「バトラー、ランサーだ!」

「かしこまりました。」

<パキッ!>

何かが割れたような音を最後にしてクリスタル=ゴーレムの姿は天井の中に埋もれて消えてしまった。

「リーファが何かやったみたいだぞ!」

「本当か?で、どうだったんだ?」

「うわ、何だよお前ら。一斉に集まって来るなよ。」

目が血走った鼻息の荒い冒険者たちに囲まれてさすがのリーファも思わずたじろぐ。いくらなんでも必死すぎないか?

「どうなんだリーファ?採れたのか?」

「ダメだったのか?」

「隠すなよ、なぁ?」

「頼む・・・採ったと言ってくれ!」

「だぁぁ、うるせぇ!わかったから落ち着けっての。」

「リーファさま、欠片は既に回収しております。パントリーから取り出して、ご覧になりますか?」

うん、こいつらがどうにも気にしてるみたいだから取り出すことにしよう。寄ってたかって質問攻めにされるのも正直うっとうしいからなぁ。

「これのことか?うおっ、予想してたよりも大きいし・・・重い!」

私が手のひらを広げた瞬間、パンプキン程度の大きさの欠片がズッシリと手の上にのしかかった。片手だとさすがにキツいな。

「デケー!今までこんなのお目にかかったことなんてねぇぞ!」

「今ドコから取り出したんだ?」

「すごいよリーファ!やったぁ!」

ティナが私に飛びついて来る。だがそんなことどうでもいいとばかりに冒険者たちは目の前のお宝に目を輝かせていた。そのリーファたちの一方で、もう一つの人だかりではトーラスが自慢げに獲物を冒険者たちに披露している。

「ふふん、どうだ。これがクリスタル=ゴーレムの欠片だ。」

「やったな、トーラス!」

「さすがだぜ!」

「ありがたく思えよお前ら。俺がいたからこそ」

「おい、そんなチンケな欠片よりもリーファの方がすげーぞ!」

「本当か?」

「行ってみようぜ。」

欠片の一つも手にすることができないくせに、俺の獲物を馬鹿にするとは無礼なヤツだ。ふざけやがって!まぁ・・・そんな愚か者の言うことで激昂するような俺ではないさ。俺以外にも欠片を手にしたヤツがいるなら見てやろうじゃないか。

「俺の欠片よりもデカいとは言え、いくら何でもそこまでの差は無いだろう?」

リーファと言うと・・・あぁ、リアンの取り巻きに加わったルーキーの小娘だったか?まったく、ビギナーズラック程度で沸き立ってるあたりは先輩としていかがなものか。まぁ褒めるべきは褒めてやるのも先輩の度量を示すことにもつながるのはわかるが、どうにもお前らには先輩としての矜持が見えんな。つくづく情けないやつらめ。

「どれ、俺の勝ち取ったものと比べて・・・!?」

余裕の表情を浮かべながら人だかりに加わったトーラスが絶句する。

リーファの獲得した塊を前にしては、俺のなんて好意的に評価してもせいぜいクルミ程度の大きさの欠片に過ぎないじゃないか!

トーラスは思わず欠片を後ろに隠してしまった。もはや比較どころの話ではない。

「おい、トーラスも取ったんだろ?見せてくれよ。」

冗談じゃないぞ!こんなのと比べられたら俺の成果なんて霞んでしまうどころか笑いものもいいとこだ。
ひきつった笑みを浮かべながらトーラスは何とか先輩冒険者の体面を保つ言葉を絞り出す。

「お、俺のはもうポーターに預けた。ま・・・まぁ、俺のよりも少しばかりデカいようだな。やるじゃないかリーファとやら。」

「え?ありがとう?えーっと」

「トーラスだ。グラムスの冒険者で俺を知らないなんてモグリもいいところだぞ。よーく覚えておけ。」

「??・・・うん。」

ふぅ・・・危うく恥をかくところだった。ま・・・まさか!リアンめ、この俺の才覚を妬んで俺を罠にかけようと小娘をけしかけたのでは?ふふふ・・・恐ろしい女だ。だがこの俺にかかればお前の策略など全てまるっとお見通しだ!どうやら今回は引き分けのようだな。
だが必ずしもお前の思い通りには事が運ばないことを思い知ったことだろう。その一点で俺の優位は揺るがないことだけは付け加えておく。うん。

「アイツ誰だ?」

「トーラスだってさ。気になるのかシンディー?」

「いや、アイツ・・・からかい甲斐のあるアホの貫禄があるような・・・。」

「アホはお互いさまだろ?」

「何だとリーファ!」

「いてて、にゃにすんだ?顔を引っ張るのは反則だじょ!んにゃろ」

「痛い!はにゃせよリーファ、シンディーちゃんのビューティーフェイスが横ににょびる!」
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