幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

文字の大きさ
上 下
55 / 167

3分一本勝負!お宝つかみ取り大会

しおりを挟む
「俺たちも行こうマイク。」

「こうしちゃいられねぇ、行くぞ!」

クリスタルゴーレムの名前を聞いた瞬間、スアレスの顔色が変わった。と思ったらマイクと飛び出して行っちゃった。

「スアレスまでどうしたんだ?」

「何言ってんのリーファ?私たちも行くよ!」

その一言が聞こえると同時にティナが私の手を引っ張って走り出す。私はワケもわからず転びそうになりながら、何とか体勢を立て直した。

「わわっ、待ってティナ。引っ張らないで!どうしたの?」

「お宝つかみ取りのチャンスだよ。クリスタルゴーレムの一部だけでも削り取ればかなりもうかるんだ。」

「何だよ、私も連れて行けや!」

ふと隣を見るといつの間にかシンディーも一緒に走ってついて来ていた。

「言っとくけどシンディー、魔術は通用しないからね。打撃だけしか通らないんだから。」

「えー!そんなぁ。だからリアンは微動だにしなかったのか。」

ついていくだけ無駄と悟ったシンディーがとぼとぼと戻って行く。前方を見やると槍を構えた男が何かを手にしながら雄叫びを上げているようだ。

「しゃー、欠片げっとー!」

「くそぉ、固え!剣が折れちまった。うおっ!」

「マズい、逃げられる!」

「うわぁ!」

たどり着いた先では透き通った体躯のゴーレムが群がる冒険者をそこかしこにぶっ飛ばしながら距離をとろうとしているようだった。一通り冒険者を蹴散らすとその場にしゃがみ込む。
すると次の瞬間、信じられないことに天井へと跳躍して手足を天井へと突き刺したではないか。目ん玉飛び出るくらいの信じられない出来事が起こってしまった。

「どへぇぇぇ!あのデカブツ、あんなことできるの?ねぇティナ!ティナってば!」

「うわぁん、せっかく走って来たのに間に合わなかったよお。」

ダメだ、ティナは地面に膝をついて半べそかいてる。

「くそっ!天井に張り付きやがった。何て跳躍力だ!」

「あぁなっちまったらもうダメだ・・・誰も手を出せねぇ。」

「欠片を採ったのは・・・トーラスだけかよ。ちくしょー!」

周りのみんなも呆然とゴーレムを見送っている。さっきまでの馬鹿騒ぎはいったい何だったんだろう?すると残念そうにティナがつぶやく。

「あぁ・・・天井に埋まって行くのを指を加えて見てるだけなんて。」

「まだ攻撃しても良いの?」

「何言ってるのリーファ!できるんなら早く攻撃して!お願いっ!」

「バトラー、ランサーだ!」

「かしこまりました。」

<パキッ!>

何かが割れたような音を最後にしてクリスタル=ゴーレムの姿は天井の中に埋もれて消えてしまった。

「リーファが何かやったみたいだぞ!」

「本当か?で、どうだったんだ?」

「うわ、何だよお前ら。一斉に集まって来るなよ。」

目が血走った鼻息の荒い冒険者たちに囲まれてさすがのリーファも思わずたじろぐ。いくらなんでも必死すぎないか?

「どうなんだリーファ?採れたのか?」

「ダメだったのか?」

「隠すなよ、なぁ?」

「頼む・・・採ったと言ってくれ!」

「だぁぁ、うるせぇ!わかったから落ち着けっての。」

「リーファさま、欠片は既に回収しております。パントリーから取り出して、ご覧になりますか?」

うん、こいつらがどうにも気にしてるみたいだから取り出すことにしよう。寄ってたかって質問攻めにされるのも正直うっとうしいからなぁ。

「これのことか?うおっ、予想してたよりも大きいし・・・重い!」

私が手のひらを広げた瞬間、パンプキン程度の大きさの欠片がズッシリと手の上にのしかかった。片手だとさすがにキツいな。

「デケー!今までこんなのお目にかかったことなんてねぇぞ!」

「今ドコから取り出したんだ?」

「すごいよリーファ!やったぁ!」

ティナが私に飛びついて来る。だがそんなことどうでもいいとばかりに冒険者たちは目の前のお宝に目を輝かせていた。そのリーファたちの一方で、もう一つの人だかりではトーラスが自慢げに獲物を冒険者たちに披露している。

「ふふん、どうだ。これがクリスタル=ゴーレムの欠片だ。」

「やったな、トーラス!」

「さすがだぜ!」

「ありがたく思えよお前ら。俺がいたからこそ」

「おい、そんなチンケな欠片よりもリーファの方がすげーぞ!」

「本当か?」

「行ってみようぜ。」

欠片の一つも手にすることができないくせに、俺の獲物を馬鹿にするとは無礼なヤツだ。ふざけやがって!まぁ・・・そんな愚か者の言うことで激昂するような俺ではないさ。俺以外にも欠片を手にしたヤツがいるなら見てやろうじゃないか。

「俺の欠片よりもデカいとは言え、いくら何でもそこまでの差は無いだろう?」

リーファと言うと・・・あぁ、リアンの取り巻きに加わったルーキーの小娘だったか?まったく、ビギナーズラック程度で沸き立ってるあたりは先輩としていかがなものか。まぁ褒めるべきは褒めてやるのも先輩の度量を示すことにもつながるのはわかるが、どうにもお前らには先輩としての矜持が見えんな。つくづく情けないやつらめ。

「どれ、俺の勝ち取ったものと比べて・・・!?」

余裕の表情を浮かべながら人だかりに加わったトーラスが絶句する。

リーファの獲得した塊を前にしては、俺のなんて好意的に評価してもせいぜいクルミ程度の大きさの欠片に過ぎないじゃないか!

トーラスは思わず欠片を後ろに隠してしまった。もはや比較どころの話ではない。

「おい、トーラスも取ったんだろ?見せてくれよ。」

冗談じゃないぞ!こんなのと比べられたら俺の成果なんて霞んでしまうどころか笑いものもいいとこだ。
ひきつった笑みを浮かべながらトーラスは何とか先輩冒険者の体面を保つ言葉を絞り出す。

「お、俺のはもうポーターに預けた。ま・・・まぁ、俺のよりも少しばかりデカいようだな。やるじゃないかリーファとやら。」

「え?ありがとう?えーっと」

「トーラスだ。グラムスの冒険者で俺を知らないなんてモグリもいいところだぞ。よーく覚えておけ。」

「??・・・うん。」

ふぅ・・・危うく恥をかくところだった。ま・・・まさか!リアンめ、この俺の才覚を妬んで俺を罠にかけようと小娘をけしかけたのでは?ふふふ・・・恐ろしい女だ。だがこの俺にかかればお前の策略など全てまるっとお見通しだ!どうやら今回は引き分けのようだな。
だが必ずしもお前の思い通りには事が運ばないことを思い知ったことだろう。その一点で俺の優位は揺るがないことだけは付け加えておく。うん。

「アイツ誰だ?」

「トーラスだってさ。気になるのかシンディー?」

「いや、アイツ・・・からかい甲斐のあるアホの貫禄があるような・・・。」

「アホはお互いさまだろ?」

「何だとリーファ!」

「いてて、にゃにすんだ?顔を引っ張るのは反則だじょ!んにゃろ」

「痛い!はにゃせよリーファ、シンディーちゃんのビューティーフェイスが横ににょびる!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...