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華氏3632
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「さて、十分休養をとってくれたことと思う。俺たちはダンジョンマスターを討伐した、よってこれからダンジョンコアを捜索しなければならない。」
グレンはそう告げると目の前の冒険者たちを見渡す。グレンはそのままガウスに顔を向けると、こりゃダメだとばかりにガウスがお手上げのジェスチャーを返した。だがそれも彼らにとっては想定通りの反応に過ぎない。
「と・・・いうのが本来の建前だが、俺たちには必要な物資が不足している。ダンジョンマスターの置き土産も発動していると思われる現状での捜索は困難を極める、てかぶっちゃけキツイからグラムスに帰るぞ。異論もあるだろうが帰ってからいくらでも聞いてやる。俺に命を預けろ。」
「正直早く帰りたい。」
「あれだけのことがあってココに留まりたいヤツなんているのか?」
「帰ろうぜグレン。」
「そうだ、もう帰るぞ。何の立ち会いなんだよこりゃー?」
「引っ込めー!」
ブーたれる冒険者たちを前にグレンががなり立てる。
「バカヤロー、こういうのはその場できっちりコンセンサス取っとかねーと決まって後からモメんだよ。揃いも揃ってシケたツラしやがって、お前らの厭戦ムードなんざ百も承知しとるわ!言っとくが、こういうの全部記録に残さにゃならねぇんだからな。」
「ギルマスおつ。」
「大変だなグレンも。」
「この場で異論は出なかった、いいかお前ら!」
「良いよそれで。」
「引っ込めー!」
「おい誰ださっきから引っ込めって言ってるヤツ。ったくこれだからお前らはよぉ。」
ふんぞり返って冒険者たちから距離をとるようなギルドマスターではなく、普段から冒険者たちとコミュニケーションを取りつづけたグレンが築き上げた冒険者ギルドの気風だ。冒険者たちもそんなグレンを認めているからこそギルドのトップに対しても言いたいことは言える。
「ようやくこんなところからオサラバできるんだな。帰ったらしばらくゆっくりしようぜリーファ。」
「うん。私たちも十分稼いだし、誰にも文句は言われないよね。」
「ふっふっふ、地上に戻ったらさっそく・・・。」
「何だよチビッ子?お前何かやること決まってるのか?」
「え?別に~。」
「何だ?怪しい・・・。リーファ、ティナが何か隠してるぞ。お前何か知ってるか?」
「ふぇ?えーっとー・・・何かな?」
「リーファも知らねーのか・・・。おい教えろよチビッ子!」
「ふんだ!あんたみたいないじめっ子になんて教えてやんないもん。」
「んだよつまんねーな。」
仲間外れにするようで気が引けるけど、シンディーがマルティナの話に入ってきたら店のみんなを巻き込んでの騒動になることは目に見えている。それはそれでマズいことになるよね。ここは黙っておくのが最善の選択肢のはず・・・。
リーファたちの取るに足らないやりとりの一方で、ダンジョンと休息地を分かつ壁の前へと冒険者たちは集合していた。ドワーフのハイデルンが土魔術でダンジョンに作り上げた分厚い壁のおかげで、安全な閉鎖空間が構築されていた。
換気口兼偵察用の穴を覗くと、分厚い壁を隔てた向こう側には驚くべき数のモンスターが集まっているらしい。どの道、この壁を崩さないことには地上に戻ることはできないことなどモンスターたちもお見通しのようだ。私たちを仕留めるために待ち構えているのだろう。結構なピンチの割にグレンは普段と変わらない様子だ。いったい何をするつもりなんだ?
「準備は良いかハイデルン。」
「あぁ、いつでも行けるぜグレン。」
「上等だ、やれ。」
「あるべき姿へ戻れ土くれども。」
「ヘルファイア!」
ドワーフのハイデルンが分厚い土壁を瓦礫にすると間髪入れずリアンが超特大の火炎放射を見舞った。ダンジョンの通路を余すところなく炎の奔流が襲いかかっているのが見える。あんなの浴びせられたら一体どうなってしまうんだ?
リアンからは少し離れているのに、ちょっとした熱気を感じる。前にも見たことがあるけど恐怖すら覚える凄まじい威力だ。
「石の表面が溶けてるぞ・・・。」
「ものすごい数のモンスターがいたよな。」
「あぁ・・・通路の突き当たりまですっかり何も無いぜ。たぶん跡形もなく燃え尽きたんだろう。」
「これがキルゾーンってヤツなのか・・・リアンめ、やるじゃないか。それでこそ俺のライバルだ。」
「トーラス、お前まだそんなこと言ってるのか。もう少し客観的に自分を」
「うるさい。今に俺の実力が」
「はいはい、わかったよ。」
相当な数のモンスターが燃え尽きたようだ。私たちが窒息しないように数人の魔術師たちも風の防壁を形成していたが、大掛かりな作戦だった。それだけのことができるのが大部隊の強みなんだろう。
***
幸先の良いスタートを切った私たちは往路と同じくグレンとガウスが率いる分隊に別れてダンジョンを押し通っている。遊撃部隊の私たちもここまでそれほど活躍する場面が無い状況に、肩透かしを喰らったような心持ちだ。
「思っていたよりも抵抗は激しくないな。こんなものなのか?」
「たしかに早くも18階層に入ってしまった。だが油断はできないぞスアレス。」
「あぁ、そうだなリアン。強力なコボルトといい、考えてみればおかしなダンジョンだ。俺たち遊撃隊がしっかりしないと前衛が崩れちまう。」
すると何やら前を進んでいたガウス隊が何やら様子がおかしい。先頭を進んでいる冒険者が立ち止まったみたいだ。
「おいアレって・・・」
「何だ?どうして止まった?」
「クリスタルゴーレムだ!」
その叫びと同時に全体が色めき立った。
「何だとっ!」
「うおぉぉぉっ!」
「うわっ!何だよこりゃ?」
見ると前衛が陣形を崩してバラバラに駆け出して行くじゃないか。いったい何が起きてるんだ?
グレンはそう告げると目の前の冒険者たちを見渡す。グレンはそのままガウスに顔を向けると、こりゃダメだとばかりにガウスがお手上げのジェスチャーを返した。だがそれも彼らにとっては想定通りの反応に過ぎない。
「と・・・いうのが本来の建前だが、俺たちには必要な物資が不足している。ダンジョンマスターの置き土産も発動していると思われる現状での捜索は困難を極める、てかぶっちゃけキツイからグラムスに帰るぞ。異論もあるだろうが帰ってからいくらでも聞いてやる。俺に命を預けろ。」
「正直早く帰りたい。」
「あれだけのことがあってココに留まりたいヤツなんているのか?」
「帰ろうぜグレン。」
「そうだ、もう帰るぞ。何の立ち会いなんだよこりゃー?」
「引っ込めー!」
ブーたれる冒険者たちを前にグレンががなり立てる。
「バカヤロー、こういうのはその場できっちりコンセンサス取っとかねーと決まって後からモメんだよ。揃いも揃ってシケたツラしやがって、お前らの厭戦ムードなんざ百も承知しとるわ!言っとくが、こういうの全部記録に残さにゃならねぇんだからな。」
「ギルマスおつ。」
「大変だなグレンも。」
「この場で異論は出なかった、いいかお前ら!」
「良いよそれで。」
「引っ込めー!」
「おい誰ださっきから引っ込めって言ってるヤツ。ったくこれだからお前らはよぉ。」
ふんぞり返って冒険者たちから距離をとるようなギルドマスターではなく、普段から冒険者たちとコミュニケーションを取りつづけたグレンが築き上げた冒険者ギルドの気風だ。冒険者たちもそんなグレンを認めているからこそギルドのトップに対しても言いたいことは言える。
「ようやくこんなところからオサラバできるんだな。帰ったらしばらくゆっくりしようぜリーファ。」
「うん。私たちも十分稼いだし、誰にも文句は言われないよね。」
「ふっふっふ、地上に戻ったらさっそく・・・。」
「何だよチビッ子?お前何かやること決まってるのか?」
「え?別に~。」
「何だ?怪しい・・・。リーファ、ティナが何か隠してるぞ。お前何か知ってるか?」
「ふぇ?えーっとー・・・何かな?」
「リーファも知らねーのか・・・。おい教えろよチビッ子!」
「ふんだ!あんたみたいないじめっ子になんて教えてやんないもん。」
「んだよつまんねーな。」
仲間外れにするようで気が引けるけど、シンディーがマルティナの話に入ってきたら店のみんなを巻き込んでの騒動になることは目に見えている。それはそれでマズいことになるよね。ここは黙っておくのが最善の選択肢のはず・・・。
リーファたちの取るに足らないやりとりの一方で、ダンジョンと休息地を分かつ壁の前へと冒険者たちは集合していた。ドワーフのハイデルンが土魔術でダンジョンに作り上げた分厚い壁のおかげで、安全な閉鎖空間が構築されていた。
換気口兼偵察用の穴を覗くと、分厚い壁を隔てた向こう側には驚くべき数のモンスターが集まっているらしい。どの道、この壁を崩さないことには地上に戻ることはできないことなどモンスターたちもお見通しのようだ。私たちを仕留めるために待ち構えているのだろう。結構なピンチの割にグレンは普段と変わらない様子だ。いったい何をするつもりなんだ?
「準備は良いかハイデルン。」
「あぁ、いつでも行けるぜグレン。」
「上等だ、やれ。」
「あるべき姿へ戻れ土くれども。」
「ヘルファイア!」
ドワーフのハイデルンが分厚い土壁を瓦礫にすると間髪入れずリアンが超特大の火炎放射を見舞った。ダンジョンの通路を余すところなく炎の奔流が襲いかかっているのが見える。あんなの浴びせられたら一体どうなってしまうんだ?
リアンからは少し離れているのに、ちょっとした熱気を感じる。前にも見たことがあるけど恐怖すら覚える凄まじい威力だ。
「石の表面が溶けてるぞ・・・。」
「ものすごい数のモンスターがいたよな。」
「あぁ・・・通路の突き当たりまですっかり何も無いぜ。たぶん跡形もなく燃え尽きたんだろう。」
「これがキルゾーンってヤツなのか・・・リアンめ、やるじゃないか。それでこそ俺のライバルだ。」
「トーラス、お前まだそんなこと言ってるのか。もう少し客観的に自分を」
「うるさい。今に俺の実力が」
「はいはい、わかったよ。」
相当な数のモンスターが燃え尽きたようだ。私たちが窒息しないように数人の魔術師たちも風の防壁を形成していたが、大掛かりな作戦だった。それだけのことができるのが大部隊の強みなんだろう。
***
幸先の良いスタートを切った私たちは往路と同じくグレンとガウスが率いる分隊に別れてダンジョンを押し通っている。遊撃部隊の私たちもここまでそれほど活躍する場面が無い状況に、肩透かしを喰らったような心持ちだ。
「思っていたよりも抵抗は激しくないな。こんなものなのか?」
「たしかに早くも18階層に入ってしまった。だが油断はできないぞスアレス。」
「あぁ、そうだなリアン。強力なコボルトといい、考えてみればおかしなダンジョンだ。俺たち遊撃隊がしっかりしないと前衛が崩れちまう。」
すると何やら前を進んでいたガウス隊が何やら様子がおかしい。先頭を進んでいる冒険者が立ち止まったみたいだ。
「おいアレって・・・」
「何だ?どうして止まった?」
「クリスタルゴーレムだ!」
その叫びと同時に全体が色めき立った。
「何だとっ!」
「うおぉぉぉっ!」
「うわっ!何だよこりゃ?」
見ると前衛が陣形を崩してバラバラに駆け出して行くじゃないか。いったい何が起きてるんだ?
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