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地上までの道のりは
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「リーファさま、あのコボルトのアジトらしき場所を見つけました。」
おっと・・・そうだった。このダンジョンにはあのコボルトの拠点が必ずあるはずだから探そうって、バトラーが提案してくれたんだったよね。拠点を消し去って力を削いでやろうって算段だったけど、思った以上に決着が早くついちゃったなぁ。
「もうあのコボルトは消えちゃったし、探してくれた蜂たちは帰っておいでよ。」
「手強い敵と見ましたが、リアンさまの奥の手が功を奏しました。それはとても良いことなのですが、私どもはすっかり無駄足になったようですね。ですがリーファさま、ここには使えそうなモノもありそうです。いかがいたします?」
ふーん、どれどれ?ここで生活してたのかなぁ。うーん、何に使うのかわからないものだらけだぞ。見たことないものばかりで・・・本当に役に立つんだろうか?
「バトラーに任せるよ。現地のホーネットと視覚を共有して見たけど・・・私には何が使えそうなものかも全くわからないや。」
「かしこまりました、パントリーに収納いたしますので後でご覧ください。」
「うん、ありがと。」
「ねぇリーファ、ちょっといい?」
あっちでグレンたちが何やら相談してるけど、後は地上に帰るだけだから話に加わるまでもないか。
「何、ティナ?」
「知ってる?最近マルテがオシャレしてどこかに出かけてるんだよ。これはひょっとしてひょっとするかもなんだよ。」
そりゃ私たちだってオシャレの一つもするさ。みんなには十分な給金だって行き渡ってるはずだもん。何の不思議も無いような・・・。
「え?話が見えないよティナ。」
「もー、鈍いなぁリーファは。」
「わかんないから教えてよティナ。」
「ふふふ~、やっぱり私みたいなお姉さんでもなきゃ気づかないもんだよね。あんなおめかし、恋人ができたとしか思えないんだよ。」
「ここここ・・・恋人?」
まぁマルティナだったらそりゃあ言い寄って来る男なんていくらでも居るよね。そうかー・・・姉を取られるような寂しさもあるけど、そもそも17歳にもなれば結婚するような年齢だもんね。
「リーファってば動揺しすぎだよ。私だって」
「え!ティナにもいるの?」
「うぇ?えーっとーいない事もあったりなかったりー・・・その件につきましては関係各所と調整のうえ検討に拳闘を重ねてーかかか回答を判断いたしたく」
「何言ってるかさっぱりわかんないんだけど・・・。」
「とにかく、帰ったらマルテの恋人がどんな人かは調べて見る必要があると思うんだよ!」
そんな力いっぱい言われたって・・・。どんな人か見てみたい気持ちも無いわけじゃないけど、そこは土足で踏み込んじゃいけないような気もするし。もし私が同じことされたらイヤだもんなー。
「そんな身辺を嗅ぎ回るようなマネしちゃぁマルティナに悪いよー。」
「甘ーいっ!干しぶどうなんかよりも激甘なんだよリーファ!マルテが悪い男にダマされててもいいの?」
「えー!そんなヤツだったら絶対にぶちのめしてやるけど・・・でも。」
「もう、もっとシンプルに考えてよぅ。リーファは気にならないの?」
「そ、そう言われると・・・気になる。」
「でしょー?」
リーファたちが帰った後のことを話している一方、グレンたちは帰る算段を詰めていた。
「ダンジョンマスターの置き土産か・・・。ガウスはどう見る?」
「ダンジョンコアを捜索する余力が問題だ。もともと医薬品が不足している中での強行軍だった。回復術師にこれ以上の無理を要求するのも酷だぞグレン。」
「ねぇ、置き土産って何なの?」
話に加わっていたシンディーが隣のスアレスに疑問をぶつける。
「ダンジョンマスターが倒された場合、それがきっかけとなってダンジョン内のモンスターが通常よりも強化されることがあるんだ。つまりは冒険者を生きて帰さない仕組みだな。」
「陰湿な・・・。でも必ずそうなるわけでもないんだろ?もしかしたら今回は無いってことも」
「シンディーの言う通りだったら問題は無いんだ。だが既に発動した可能性が高い。」
「何でわかるんだ?」
「モンスター分布が当初の報告とはガラリと変わっちまっただろ?あれはおそらくダンジョンマスターの置き土産の亜種だ。滅多に聞かないが倒される前にも関わらず発動するものもあるらしい。ここに到着するまでまったく原因がわからなかったが、マキアスがあのコボルトと戦っていたことでハッキリした。」
シンディーはボロボロにされながらも戦いつづけていたマキアスの姿を思い出す。皮肉なことにあの戦いが置き土産を発動していたなんてマキアスが聞いたらどんな顔するだろう。
「なるほど、そういうことか。でもあのコボルトを倒したことで更に強化されるってことは無いんだろ?」
「その可能性は捨てきれないな。」
「そりゃマズいぜスアレス、これまでだってヤバかったのに。」
24階層に残っているキャンプに更なる危険が迫っているかもしれない。アタシたちが合流しようとした時には既に全滅してましたなんてシャレにならん。そうなったらシンディーちゃんが地上に帰還する可能性がもっと低くなるぜ。
「まぁキツいよな。ただ、一つ抜け穴があるんだ。」
「もったいぶるなよスアレス。早く教えて。」
「さっきからグレンたちが話しているダンジョンコアを押さえるんだ。それさえあれば置き土産の発動を停止させることができる。」
「じゃあ是非もないだろ、さっさと取りにいこうぜ。んで、それってどこにあるの?」
方針は決まったとばかりに勇むシンディーに対してスアレスが残念そうにかぶりを振る。
「それがわかれば苦労は無いさ。」
「マジかよ、でも探さないと帰るのだって死に物狂いだぞ。」
「探そうにも強化されたモンスターたちを相手にしながら探すことになる。」
「キツい・・・しかもここは迷宮区じゃないか。」
この広間を抜けた先にも迷宮が広がっているはずだし、迷って時間を費やしてたら仲間がどんどん脱落しかねない。ちくしょー、シンディーちゃんの賢いオツムをもってしても八方塞がりじゃないか!
「だからこそグレンもガウスも今後のことを協議してるのさ。探すべきか、探さずに全力で脱出するか。まぁダンジョンコアを残してしまうと新たなダンジョンマスターも現れるから、本来なら回収すべきなんだろう。いずれの判断が下るにせよ、疲弊している俺たちは覚悟しなけりゃならんな。」
「まぁここは世界で一番地獄に近い場所だからな。」
「いきなり横から変なこと言うなよマイク。つまんねぇこと言ってっとその口縫いつけちまうぞ。」
「ったく、ちょっとした冗談なのに怖ぇなぁシンディーは。」
おっと・・・そうだった。このダンジョンにはあのコボルトの拠点が必ずあるはずだから探そうって、バトラーが提案してくれたんだったよね。拠点を消し去って力を削いでやろうって算段だったけど、思った以上に決着が早くついちゃったなぁ。
「もうあのコボルトは消えちゃったし、探してくれた蜂たちは帰っておいでよ。」
「手強い敵と見ましたが、リアンさまの奥の手が功を奏しました。それはとても良いことなのですが、私どもはすっかり無駄足になったようですね。ですがリーファさま、ここには使えそうなモノもありそうです。いかがいたします?」
ふーん、どれどれ?ここで生活してたのかなぁ。うーん、何に使うのかわからないものだらけだぞ。見たことないものばかりで・・・本当に役に立つんだろうか?
「バトラーに任せるよ。現地のホーネットと視覚を共有して見たけど・・・私には何が使えそうなものかも全くわからないや。」
「かしこまりました、パントリーに収納いたしますので後でご覧ください。」
「うん、ありがと。」
「ねぇリーファ、ちょっといい?」
あっちでグレンたちが何やら相談してるけど、後は地上に帰るだけだから話に加わるまでもないか。
「何、ティナ?」
「知ってる?最近マルテがオシャレしてどこかに出かけてるんだよ。これはひょっとしてひょっとするかもなんだよ。」
そりゃ私たちだってオシャレの一つもするさ。みんなには十分な給金だって行き渡ってるはずだもん。何の不思議も無いような・・・。
「え?話が見えないよティナ。」
「もー、鈍いなぁリーファは。」
「わかんないから教えてよティナ。」
「ふふふ~、やっぱり私みたいなお姉さんでもなきゃ気づかないもんだよね。あんなおめかし、恋人ができたとしか思えないんだよ。」
「ここここ・・・恋人?」
まぁマルティナだったらそりゃあ言い寄って来る男なんていくらでも居るよね。そうかー・・・姉を取られるような寂しさもあるけど、そもそも17歳にもなれば結婚するような年齢だもんね。
「リーファってば動揺しすぎだよ。私だって」
「え!ティナにもいるの?」
「うぇ?えーっとーいない事もあったりなかったりー・・・その件につきましては関係各所と調整のうえ検討に拳闘を重ねてーかかか回答を判断いたしたく」
「何言ってるかさっぱりわかんないんだけど・・・。」
「とにかく、帰ったらマルテの恋人がどんな人かは調べて見る必要があると思うんだよ!」
そんな力いっぱい言われたって・・・。どんな人か見てみたい気持ちも無いわけじゃないけど、そこは土足で踏み込んじゃいけないような気もするし。もし私が同じことされたらイヤだもんなー。
「そんな身辺を嗅ぎ回るようなマネしちゃぁマルティナに悪いよー。」
「甘ーいっ!干しぶどうなんかよりも激甘なんだよリーファ!マルテが悪い男にダマされててもいいの?」
「えー!そんなヤツだったら絶対にぶちのめしてやるけど・・・でも。」
「もう、もっとシンプルに考えてよぅ。リーファは気にならないの?」
「そ、そう言われると・・・気になる。」
「でしょー?」
リーファたちが帰った後のことを話している一方、グレンたちは帰る算段を詰めていた。
「ダンジョンマスターの置き土産か・・・。ガウスはどう見る?」
「ダンジョンコアを捜索する余力が問題だ。もともと医薬品が不足している中での強行軍だった。回復術師にこれ以上の無理を要求するのも酷だぞグレン。」
「ねぇ、置き土産って何なの?」
話に加わっていたシンディーが隣のスアレスに疑問をぶつける。
「ダンジョンマスターが倒された場合、それがきっかけとなってダンジョン内のモンスターが通常よりも強化されることがあるんだ。つまりは冒険者を生きて帰さない仕組みだな。」
「陰湿な・・・。でも必ずそうなるわけでもないんだろ?もしかしたら今回は無いってことも」
「シンディーの言う通りだったら問題は無いんだ。だが既に発動した可能性が高い。」
「何でわかるんだ?」
「モンスター分布が当初の報告とはガラリと変わっちまっただろ?あれはおそらくダンジョンマスターの置き土産の亜種だ。滅多に聞かないが倒される前にも関わらず発動するものもあるらしい。ここに到着するまでまったく原因がわからなかったが、マキアスがあのコボルトと戦っていたことでハッキリした。」
シンディーはボロボロにされながらも戦いつづけていたマキアスの姿を思い出す。皮肉なことにあの戦いが置き土産を発動していたなんてマキアスが聞いたらどんな顔するだろう。
「なるほど、そういうことか。でもあのコボルトを倒したことで更に強化されるってことは無いんだろ?」
「その可能性は捨てきれないな。」
「そりゃマズいぜスアレス、これまでだってヤバかったのに。」
24階層に残っているキャンプに更なる危険が迫っているかもしれない。アタシたちが合流しようとした時には既に全滅してましたなんてシャレにならん。そうなったらシンディーちゃんが地上に帰還する可能性がもっと低くなるぜ。
「まぁキツいよな。ただ、一つ抜け穴があるんだ。」
「もったいぶるなよスアレス。早く教えて。」
「さっきからグレンたちが話しているダンジョンコアを押さえるんだ。それさえあれば置き土産の発動を停止させることができる。」
「じゃあ是非もないだろ、さっさと取りにいこうぜ。んで、それってどこにあるの?」
方針は決まったとばかりに勇むシンディーに対してスアレスが残念そうにかぶりを振る。
「それがわかれば苦労は無いさ。」
「マジかよ、でも探さないと帰るのだって死に物狂いだぞ。」
「探そうにも強化されたモンスターたちを相手にしながら探すことになる。」
「キツい・・・しかもここは迷宮区じゃないか。」
この広間を抜けた先にも迷宮が広がっているはずだし、迷って時間を費やしてたら仲間がどんどん脱落しかねない。ちくしょー、シンディーちゃんの賢いオツムをもってしても八方塞がりじゃないか!
「だからこそグレンもガウスも今後のことを協議してるのさ。探すべきか、探さずに全力で脱出するか。まぁダンジョンコアを残してしまうと新たなダンジョンマスターも現れるから、本来なら回収すべきなんだろう。いずれの判断が下るにせよ、疲弊している俺たちは覚悟しなけりゃならんな。」
「まぁここは世界で一番地獄に近い場所だからな。」
「いきなり横から変なこと言うなよマイク。つまんねぇこと言ってっとその口縫いつけちまうぞ。」
「ったく、ちょっとした冗談なのに怖ぇなぁシンディーは。」
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