幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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閃光

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地図が無いためサミュエルとマグラムの記憶だけを頼りに迷宮区25階層を迷いながら進んでいた。広大な階層である24階層には唯一入り口に貴重な魔導ビーコンを埋め込んでいるが、迷宮区ではビーコンの魔力が遮断されてしまうので意味をなさないのだ。

「まだ到着しないのかサミュエル?」

「あと少しですガウスさん、確かその角を曲がると・・・。あった!この崩れた瓦礫を越えた向こう側です。」

11名の潜行部隊を指揮するグレンが最後に確認する。

「申し合わせたとおり、くれぐれも敵と打ち合うな。生存者を確保次第、即時撤退させるのがメインプランだ。行くぞ!」

「結構な瓦礫だなぁ。歩きにくくってしょうがねぇ。」

「シンディーの言う通りだな。でもこれって例のコボルトがやったんだって?だとしたら、想像以上のとんでもない力だ・・・。」

「リーファ、怖いならここで待っててくれてもいいんだ。」

「ううん、私は行くよ。心配してくれてありがとうスアレス。」

「マイクさん、あの子たちは一体・・・」

「サミュエル、あいつらの実力はここにいる誰もが認めてる。心配するな、ああ見えてすごいヤツらなんだぜ。きっと力になってくれるはずさ。」

私たちが瓦礫の山を上ると、その向こう側は広大な空間になっていた。ここは雷雲など存在しない地の底であるにもかかわらず、遠くに稲妻が見える。それも一回や二回の話ではない、ひっきりなしに続いているのだ。

「いる・・・。」

「あの閃光!あんなのと戦っているのか?」

「マキアスさん・・・。」

「確かにあのメンツであのバケモノとやり合えるのはマキアスくらいだ。しかし6日間もよく耐えたな・・・。」

グレンの言う通り、6日間も雷に打たれながら戦うなんて考えられない。早く助けてあげないと。

***

「これだけやりあって打開策もねぇと来た。お前はよく心が折れねぇもんだな。見ろよあいつらを。」

「・・・。」

マキアスはコボルトの剣を弾きながら目線を移すと、人質の向こうにある瓦礫の辺りにいくつかの人影を確認した。どうやら目の前の敵はそれに気づいていないようだ。マキアスはセイジロウの目を引くために、わざわざ余裕のないことをアピールするかのように苦々しい表情を浮かべる。

どうにかしてコイツの意識を俺に釘付けにしねぇと、救出に支障が出ちまう。

「はっ!さすがのお前もおしゃべりかます余裕もねぇか?」

「・・・。」

「まぁ、構わねぇさ。お前を簡単にねじ伏せるだけの技量を身につけるのがこのゲームの眼目だ。時間かけてキッチリと侵攻イベントを攻略してやるよ・・・っと危ねぇ。」

マキアスは饒舌なセイジロウがまばたきをした瞬間を狙って、脇腹目がけて一撃を放った。腕の隙間をすり抜けるようにナイフが入り込んだのだが・・・。

「くっ!」

「ハイざんねーん!目の付け所は良いんだがよぉ。昨日も言ったが俺にゃ加速視が備わっててなぁ、反応が遅れても見えちゃうんだわコレが。」

「あれでも外すのか・・・。」

今まで死に物狂いでセイジロウの猛攻をかわし続けながらも、目ざとく呼吸やまばたきのタイミングを読み取っていたマキアスは愕然とする。ひた隠しにして来た起死回生の秘策を難なくツブされてしまった。

だがこれで当初の思惑通りにセイジロウの意識は人質の方に向くことは無いだろう。そんなこととは露知らず、セイジロウは得意満面の顔で続ける。

「はーっ!俺にはかなわないとか言っといて、死角から殺意に満ちた一撃をねじ込んで来やがるから愉快な野郎だぜ。だがお前じゃ俺は暗殺できねぇよ。」

「ハァ・・・ハァ、俺は暗殺者じゃない。聖騎士だ。」

「あん?ハッハッハ!じゃあ一体何なんだ、その黒づくめは?聖騎士さまってなぁ白銀の鎧を着込んだ金髪なびかすいけ好かねぇ野郎かと思いきや、泥くせー忍者みてぇな格好しやがって。こりゃ傑作だ!」

今までも自分の格好については散ざん周りから馬鹿にされて来たし、それには慣れている。だが俺からすれば外見で戦っているわけじゃない。
負い目があるとすれば、この戦闘スタイルはガキの頃に一度見たキリでほぼ全て我流に過ぎない。もし知っているというなら教えてほしいもんだ。

「これは俺の目指す人をイメージしたものだ。お前はこれが何かを知っているようだな?」

「ふん、聞きたきゃ力づくで聞いて見ろや!だが一つだけ教えてやる、そいつは人じゃない。」

「人じゃない?一体何だというんだ?」

「忍者は俺の元いた世界の存在だ。そいつがこの世界にいるってことは十中八九、俺と同じ魔物だ。」

「何?お前はいったい何を知っているんだ?どういうことか俺にもわかるように説明してくれ。」

異世界からの転生とか、ニンジャとかいう俺の憧れの存在が実は魔物だとか?俺にはサッパリわからん。確かに目の部分以外を覆った何かをかぶっていたので顔を直接見た訳じゃない。あの時助けてくれたあの人は自分が魔物だから隠していたのか?

「自分で調べようともせずお手軽に真実が手に入るなんて思わねぇことさな。俺はお前のバックボーンが見えただけで満足したしよぉ。背後に人を背負って逃げるわけにいかねぇってんだろ?」

忍者もどきでも中身は聖騎士のまんまってなぁ。おそらく聖騎士は物理攻撃耐性と魔術攻撃耐性でもついてるんだろう。せいぜい小賢しい忍術で雷撃を無効にしていると踏んでたが、ハナから俺の勘違いだったってことだ。
だがこいつは忍者並みに攻撃をかわしやがるから、クリーンヒットでもない限りは一撃じゃ仕留められねぇだろうな。
話も終わったとばかりにセイジロウがマキアス目がけて斬りかかる。とにかくここ6日間防戦一方なのでマキアスは集中力を切らさないように、ひとまず救難隊のことを頭の中から排除する。

「くっ!」

「おら、俺の裏をかいて見ろよ!もっと奥の手を見せやがれ、俺が飽きたらこの余興も終わらせちまうぞ!」

マキアスが全力でコボルトの相手をしている一方、ガウスが背後から人質たちに接触する。身体を拘束されるでもないのに逃げもせず、どういうわけか全員が一か所に集まっていた。

「動くな・・・助けに来た。」

「・・・来てくれたのか。」

「あそこに横たわってるのはシアーズたちか・・・残念だが残置だ。動けないヤツはいるか?」

「問題ない、全員動ける。」

「何?じゃあこのまま撤退だ、俺たちがお前らとそっくり入れ替わる。」

「だがマキアスがまだ戦って・・・」

「生存者は軒並みかっさらう・・・そのために来た。けが人は邪魔だ、マグラムが瓦礫のてっぺんでお前たちを待ってる。」

「兄貴」

「レダム、生きてりゃ上出来だ。さっさと行け。」

「すまねぇ。」
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