上 下
42 / 166

ダンジョンへの突入

しおりを挟む
「そっち行ったぞ、ガウス!」

「まかせろ、おらよっ!」

「ぐぎゃぁー!!」

私たちはダンジョンに潜入し、猛スピードで進行している。それというのもグレンが救難隊をガウスが率いる第一分隊とグレンが率いる第二分隊、そしてスアレスパーティーと私たちの遊撃部隊に分けて力押ししているからだ。
さっきから大戦槌をオモチャのように振り回してモンスターを粉砕していくガウスの姿ばかり目につく。

「それにしてもこんなデカいトロルを一撃で仕留めるんだね。ガウスの戦闘は圧倒的だ。さっきなんてフルスイングでオーガを遠くにかっ飛ばしたよ。」

「あぁ、ガウスの打撃力はおそらくグラムスの冒険者の中では一番だろう。ダテにトップランカーをしているのではないよ。リーファもよく見ておくと良い。」

「グレンも大胆なことするよなぁ。今回もグラムスでC級以上の冒険者をまるごと抱えるなんて。俺が言うのもなんだがゴブリンのスタンピード以来いくら金をつぎ込んだんだ?」

「マイク、金はあとからどうとでもなる。値崩れを起こさないよう市場に流していないアイテムはギルドに残っているからな。だからここで金に糸目をつけるなんてケチなマネはしねぇよ。必ず救い出すんだ。」

スタンピードの時はグレンも戦闘に参加していたけど、私は別行動だったからグレンの戦いぶりをほとんど見ていないんだよね。

「今回はグレンも戦闘に参加するつもりなの?」

「そのつもりだぜ、リーファ。ギルドマスターになる前は俺がグラムスのトップランカーだったんだ。今もガウスには負けるつもりはねぇよ。あともう少ししたら前線で救難隊を引っ張っているガウス隊と交代する。俺の戦いぶりも目に焼き付けておけよ。」

「グレン、あなたに何かあっては冒険者のためにならない。今回は私たちに任せてもらえないだろうか?」

「リアン、心配してくれるのはありがたいが今は一刻を争う。ダンジョン探索は俺みずからがメンバーを指名して、俺名義で依頼を出した案件だ。せめて責任は取りたい。」

「探索隊がギルドに残してくれた24階層までの地図とモンスターの情報があるから大丈夫さ。少なくとも俺たち救難隊の手に余る障害は確認できないだろ?」

「その点についちゃ俺もスアレスと同感だ。しかしグレン、ダンジョンの公開前に探索の最前線への地図を救難隊全員に公開しても良いのか?手癖の悪いやつが勝手にダンジョンに潜りだすかもしれねぇぜ。」

「遭難を防ぐために探索隊以外の立ち入りは禁止してたんだ。腕利きばかりをそろえた探索隊の遭難を承知で無断潜入するヤツは勝手にすると良い。そいつらに救難隊は出さないだけさ。」

「なるほど、自業自得だからそりゃあ当然だ。おっ?あれが15階層への入り口らしいな。」

探索隊の定期報告で毎回地図や内部情報が更新されていた。そのおかげで私たちは迷うことなく、安全に最短経路で進むことができる。そして15階層からは次第にモンスターが手強くなって行くことも把握している。

「15階層からは強化種も多い。だが足止めを喰らっている場合じゃねぇ。ガウス!ここで交代だ、後方で身体を休めてくれ!」

「何だ?これからが良いところだってのによぉ。大将の命令だからしゃあねぇ。下がって休憩だ、野郎ども!」

「第二分隊、全速力で突っ切るぞ!」

<オォー>

グレンの掛け声とともに勢いづいた第二部隊を追っていくと薄暗いダンジョンにも関わらず、辺り一面が草木に覆われた密林に飛び込んだ。ここの密林はトラップも満載らしく、経路を外れると被害が多発するので注意が必要とある。マップマンとコンパスマンさえ機能していれば楽勝だ。

「何だ!15階層は密林なのか?ヘビとか苦手だから嫌だなぁ。」

「私もだよシンディー。本当に出そうな雰囲気だよ・・・怖いなぁ。」

「何だよ、ヘビって美味いじゃん。獲って帰ろうかなぁ。」

「ひぃぃっ!リーファ、お前ヘビなんて食うのか?意外に恐ろしいヤツだなぁ。」

「昔は毎日ひもじい思いをしてたからな。でも味付けして焼けばけっこうイケるんだコレが。私からすればごちそうだったよ、ニコも大好きなんだぜ。よく一緒に分け合って食ったよなぁ・・・じゅるり。」

笑顔でほおばるニコの姿を思い出したらまた食べたくなって来たなぁ。まぁそんなことしてる時間なんて今は無いけどね。

「た・・・たくましいんだね、リーファとニコって。」

「そんな事は無いぞティナ。冒険者であれば荒野で食糧が尽きることもある。食べられるものを確保して生存するのも重要なスキルだ。肉はあまり好かないが、私もヘビを口にすることは今までに何度もあった。」

私はスラムで生活してたから窃盗してる時以外はほぼ食い物を探す生活だったけど、まさかリアンもヘビを食べていたとは。何かちょっと嬉しい。

「まさかリアンが?全然そんなイメージねーよ。アタシにも食えるかなぁ・・・やっぱ厳しいぜ。」

「私は絶対無理。」

ティナとシンディーの顔が青ざめている。よほど苦手なんだろう。

「ふふふ、だが背に腹は代えられないという場面はあるかもしれない。まぁ頭の片隅にでも置いておけば良い。あの時ヘビを口にしなければ私はこの場にいなかっただろう。」

「血抜きやら内蔵処理やら調理法さえ間違えなけりゃけっこうイケるんだぜ。何なら俺が作ってやるよ、シンディー。」

「そんなのいらねーよ、マイク。アタシがヘビを食うのは餓死しそうな時だけだ。」

だったら私がティナとシンディーにもいつか食わせてやる。お前らも冒険者なんだからなぁ、美味しく調理してやるから楽しみにしとけよ。ちなみにお残しは許しません。

<ズドォーン>

「何の音だ!」

「前方を見ろ、何人も倒れているぞ!」

「全周警戒!」

「グレンの声だ、あいつは無事だな。第一分隊、前進やめ!現在地にて戦闘態勢で待機。」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

男とか女とか

N
恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:450

USBで幼馴染たちの「管理者権限」を所得する

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:28

【本編完結】貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:12,703pt お気に入り:10,067

不感症の僕が蕩けるほど愛されちゃってます

BL / 完結 24h.ポイント:255pt お気に入り:1,188

処理中です...