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お家へ帰ろう
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祭りを楽しみ尽くした私たちは翌日、グラムスへの帰還の途についた。グレンやトマソンはそれぞれまだグラムスには帰れないようだ。偉くなるってのも忙しくて大変なんだね。
「グラムスも随分と久しぶりな気がするね。」
「そうだな、ロミア。食べ物は美味しかったけど、やっぱ慣れ親しんだ街が一番だよ。ニコたちにもお土産を買い込んだから喜んでくれるといいなぁ。」
「セバルも楽しかったよな。留守番の連中を連れ出して案内してやりたいくらいだぜ。」
シンディーの言うことも一利ある。私たちも仕事は仕事なんだけど、セバルを満喫する時間が長かった。私たちだけ楽しんで来たみたいで、ちょっと申し訳ない部分もある。店の仲間たちもどこかに連れてってやりたいもんだね。
私たち冒険者を乗せた馬車の一団がグラムスの城門をくぐると、冒険者ギルドが近い広場に停車した。
「到着したみたいだな。私は冒険者ギルドに顔を出して行くからシンディーとロミアは先に帰ってて。」
グレンに言われた通り、到着したら真っ先に冒険者ギルドに向かうことに決めていた。怒られるかもだけど、心配かけたんだからその程度は覚悟しなきゃね。頭ではわかってるけど、やっぱり少し怖いってのが正直な気持ち。
私がギルドの入り口をくぐると、ちょうど荷物を運んでいる犬耳の職員と目があった。
「リーファ!」
「えへへ・・・久しぶり、ライナ。」
「お前元気だったかよ?ちっとも顔見せないから本当心配してたんだぜ。ほら、スカーレットにも元気な顔見せてやりな。」
「うん。」
見るとスカーレットは受付で冒険者とやり取りをしている。割り込んで仕事の邪魔をする訳にもいかない。私もスカーレットのカウンターに並ぶことにした。
「次の方、どうぞ。」
「お願いします。」
「リーファ・・・元気そうで安心したわ。セバルでの活躍ぶりは私も聞いているわよ。」
怒られると思っていたけど、予想に反してスカーレットの反応は優しいものだった。私は安堵する一方で疑問が浮かぶ。
「え?何でスカーレットが知っているの?」
「グレンの報告がグラムスに届いていたから、もちろん知っているわよ。あなたがトラブルに巻き込まれてギルドに顔を出せなくなっていたこともね。」
なるほど、グレンが事前にスカーレットの心配を和らげてくれてたんだね。何の報告も無く、いきなり顔を出したらスカーレットの反応はまったく違うものだったんじゃないか?グレンにもあらためてお礼を言わないとね。何にしても大切な人に心配をかけちゃいけないんだ。
「心配かけてごめんね、スカーレット。」
「そうよ、リーファ。本当に心配したんだから。でもあなたの元気そうな顔を見ることができて安心したわ。」
「まったく、用事が無くても顔出せよな。スカーレットなんてお前のことが心配で仕事能率が下がったんだぜ。おかげで私の仕事が増えたんだ。私のためにも頼むぜ、リーファ。」
「あら、少し仕事量をセーブしてライナを鍛えようかしら。」
「マジ勘弁してくださいスカーレット先輩!」
「ふふふ、これからもよろしくね。」
「ところでリーファ、その子たちは?」
いつものやりとりを見て帰ってきたことを実感してるのもつかの間、スカーレットが何やら気になることを言いだした。私が振り返ってスカーレットの視線の先を見ると。
「シンディー?帰ったんじゃないの。」
「バカ言え、お前だけ置いて帰ったら店のみんなからしばかれるわ。」
「そうだよ、きちんとリーファを連れ帰るのが私たちの仕事なんだからね。」
「何か唐突にシンディーたちがくっついて来たけど、そういう事情だったのか。何だかんだうちの店の仲間たちも私のことを心配してくれてるんだね。」
「そゆこと。お前ひとりだと心配だから、アタシもついでに冒険者登録しとくかな。」
「ロミアも?」
「わ、私は冒険者なんて無理だよぉ。」
「仲間がいるなら私も少しは安心よ、登録を済ませましょう。リーファの仲間ということはあなたがシンディー=アロアね、海賊討伐での活躍は報告を受けているわ。」
「いやぁ、シンディーちゃんも有名人の仲間入りってことかな。うひゃぁ!」
「ふふ、リーファの仲間かぁ。よろしくな!私はライナ、わからないことがあれば何でも聞いてくれよ。」
「わ、わかったよライナ。よろしく。」
シンディーはライナに後ろから抱きつかれてグリグリ頭をなでられている。私もライナと知り合った当初はアレやられたっけ。シンディーはこういうの苦手っぽいから困ったような顔をしている。
***
「そんで結局、シンディーは適性は何だったの?」
「私は魔術師だったよ。海賊討伐もあったからレベルも上がった状態からのスタートだ。」
シンディーの冒険者登録を済ませた私たちは歩いてようやく我が家にたどり着いた。何気に歩くから馬車を頼んでもよかったかもしれない。
「到着。」
「こんな辺鄙なところにあるのに、相変わらずうちの店は繁盛してるよな。」
「あそこに何か木材が置いてあるぜ。誰か建物でも建てるつもりかよ。」
「そう言えば途中、道路を作り始めてもいたみたいだぞ。ここら辺も便利になるのかねぇ。」
トマソンがチラッとそんな話してたよなぁ。クラウスも力を貸してくれるみたいだったし、さっそく動き出しているってことか。ここが便利になることは私たちにとって、願ってもないことだよ。
「おい、リーファたちが帰って来たぞ。」
居住区画の窓辺でくつろいでいたハーフリングのティナが私たちに気づいたようだ。ぞろぞろとお出迎えが集まって来たぞ。
「セバルは楽しかったか?」
「お土産も土産話もいっぱい持ち帰ったぜ。」
「よし、今日はかなり早いが客がはけたら店じまいしよう。パーティーだ!」
「グラムスも随分と久しぶりな気がするね。」
「そうだな、ロミア。食べ物は美味しかったけど、やっぱ慣れ親しんだ街が一番だよ。ニコたちにもお土産を買い込んだから喜んでくれるといいなぁ。」
「セバルも楽しかったよな。留守番の連中を連れ出して案内してやりたいくらいだぜ。」
シンディーの言うことも一利ある。私たちも仕事は仕事なんだけど、セバルを満喫する時間が長かった。私たちだけ楽しんで来たみたいで、ちょっと申し訳ない部分もある。店の仲間たちもどこかに連れてってやりたいもんだね。
私たち冒険者を乗せた馬車の一団がグラムスの城門をくぐると、冒険者ギルドが近い広場に停車した。
「到着したみたいだな。私は冒険者ギルドに顔を出して行くからシンディーとロミアは先に帰ってて。」
グレンに言われた通り、到着したら真っ先に冒険者ギルドに向かうことに決めていた。怒られるかもだけど、心配かけたんだからその程度は覚悟しなきゃね。頭ではわかってるけど、やっぱり少し怖いってのが正直な気持ち。
私がギルドの入り口をくぐると、ちょうど荷物を運んでいる犬耳の職員と目があった。
「リーファ!」
「えへへ・・・久しぶり、ライナ。」
「お前元気だったかよ?ちっとも顔見せないから本当心配してたんだぜ。ほら、スカーレットにも元気な顔見せてやりな。」
「うん。」
見るとスカーレットは受付で冒険者とやり取りをしている。割り込んで仕事の邪魔をする訳にもいかない。私もスカーレットのカウンターに並ぶことにした。
「次の方、どうぞ。」
「お願いします。」
「リーファ・・・元気そうで安心したわ。セバルでの活躍ぶりは私も聞いているわよ。」
怒られると思っていたけど、予想に反してスカーレットの反応は優しいものだった。私は安堵する一方で疑問が浮かぶ。
「え?何でスカーレットが知っているの?」
「グレンの報告がグラムスに届いていたから、もちろん知っているわよ。あなたがトラブルに巻き込まれてギルドに顔を出せなくなっていたこともね。」
なるほど、グレンが事前にスカーレットの心配を和らげてくれてたんだね。何の報告も無く、いきなり顔を出したらスカーレットの反応はまったく違うものだったんじゃないか?グレンにもあらためてお礼を言わないとね。何にしても大切な人に心配をかけちゃいけないんだ。
「心配かけてごめんね、スカーレット。」
「そうよ、リーファ。本当に心配したんだから。でもあなたの元気そうな顔を見ることができて安心したわ。」
「まったく、用事が無くても顔出せよな。スカーレットなんてお前のことが心配で仕事能率が下がったんだぜ。おかげで私の仕事が増えたんだ。私のためにも頼むぜ、リーファ。」
「あら、少し仕事量をセーブしてライナを鍛えようかしら。」
「マジ勘弁してくださいスカーレット先輩!」
「ふふふ、これからもよろしくね。」
「ところでリーファ、その子たちは?」
いつものやりとりを見て帰ってきたことを実感してるのもつかの間、スカーレットが何やら気になることを言いだした。私が振り返ってスカーレットの視線の先を見ると。
「シンディー?帰ったんじゃないの。」
「バカ言え、お前だけ置いて帰ったら店のみんなからしばかれるわ。」
「そうだよ、きちんとリーファを連れ帰るのが私たちの仕事なんだからね。」
「何か唐突にシンディーたちがくっついて来たけど、そういう事情だったのか。何だかんだうちの店の仲間たちも私のことを心配してくれてるんだね。」
「そゆこと。お前ひとりだと心配だから、アタシもついでに冒険者登録しとくかな。」
「ロミアも?」
「わ、私は冒険者なんて無理だよぉ。」
「仲間がいるなら私も少しは安心よ、登録を済ませましょう。リーファの仲間ということはあなたがシンディー=アロアね、海賊討伐での活躍は報告を受けているわ。」
「いやぁ、シンディーちゃんも有名人の仲間入りってことかな。うひゃぁ!」
「ふふ、リーファの仲間かぁ。よろしくな!私はライナ、わからないことがあれば何でも聞いてくれよ。」
「わ、わかったよライナ。よろしく。」
シンディーはライナに後ろから抱きつかれてグリグリ頭をなでられている。私もライナと知り合った当初はアレやられたっけ。シンディーはこういうの苦手っぽいから困ったような顔をしている。
***
「そんで結局、シンディーは適性は何だったの?」
「私は魔術師だったよ。海賊討伐もあったからレベルも上がった状態からのスタートだ。」
シンディーの冒険者登録を済ませた私たちは歩いてようやく我が家にたどり着いた。何気に歩くから馬車を頼んでもよかったかもしれない。
「到着。」
「こんな辺鄙なところにあるのに、相変わらずうちの店は繁盛してるよな。」
「あそこに何か木材が置いてあるぜ。誰か建物でも建てるつもりかよ。」
「そう言えば途中、道路を作り始めてもいたみたいだぞ。ここら辺も便利になるのかねぇ。」
トマソンがチラッとそんな話してたよなぁ。クラウスも力を貸してくれるみたいだったし、さっそく動き出しているってことか。ここが便利になることは私たちにとって、願ってもないことだよ。
「おい、リーファたちが帰って来たぞ。」
居住区画の窓辺でくつろいでいたハーフリングのティナが私たちに気づいたようだ。ぞろぞろとお出迎えが集まって来たぞ。
「セバルは楽しかったか?」
「お土産も土産話もいっぱい持ち帰ったぜ。」
「よし、今日はかなり早いが客がはけたら店じまいしよう。パーティーだ!」
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