幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

文字の大きさ
上 下
37 / 167

エビで鯛を釣る

しおりを挟む
「まったく、ひどい目にあった。」

「リーファさま、やはり我々がお止めした方がよろしかったのでは?」

いや、またマキアスにわしづかみにされても面倒だよ。こりゃぁ接近注意だな。どうもマキアスとは相性が悪い。
私がバトラー相手にボヤいていると、グレンが気になることを話し出した。

「そう言えばマキアス、またダンジョン探索に戻るのか?」

「あぁ、対ユグルトの緊急召集は終わるしな。人喰い坑に戻って探索再開しねぇと。」

人喰い坑!これまた随分とパワーワードだなぁ。マキアスは今回の遠征で初めて見たけど、あまりグラムスに帰って来ていないのかもしれない。

「今どのくらいなんだ?」

「24階層だ。なかなか手強いよ、次の階層に手が届かねぇ。」

「進んだとは言え、全貌が明らかになるのはまだまだ先ってことか・・・。」

「そろそろ俺たちの力では探索にも限界が近づいている。ダンジョン踏破が先か探索隊の限界が先かってな。まぁ正直なところ踏破は分の悪い賭けと言わざるを得ない。儲けはデカいが、キリの良いところで手を引くのもアリっちゃアリだ。俺も暗い地の底で魔物の腹の中に収まりたくねぇしよ。」

何か面白そうな話だし、私もさっきから話に飛び込む機会をうかがっていた。マキアスのボヤきでいったん区切りがつきそうだ。

「ねぇ、ダンジョンって?」

「そうか、最近冒険者になったばかりのリーファは知らねぇよな?数年前に地表面の大規模な陥没が起きたんだが、それがダンジョンだってことが判明したんだ。グラムスから2マイルの距離だから、マルトリス同盟の支援の下に冒険者ギルドが危険性調査と探索を継続しているんだ。マキアスは探索隊の主力として活躍している。」

そう言えば目に見えないホーネットを素手で捕まえるなんて離れワザは、暗い地の底で研ぎ澄まされた感覚によるものなんだろう。なるほど、ようやくマキアスの正体が見えて来たぞ。

「リーファ、お前も興味あるのか?なんだったら俺が連れてってやるぜ。オジキ、こいつの実力は?」

えぇっ!マキアスと一緒に行ったらまたひどい目にあわされそうで嫌だなぁ。

「リーファの実力は俺が保証するけどよぉ・・・。」

「何だよオジキらしくねぇなぁ。不都合でもあんのかよ?」

「お前もわかるだろ?リーファを人喰い坑に放り込むなんて言ってみろ、スカーレットがどんな顔するか想像できねぇお前じゃあるまい。今度は冗談抜きで自決を迫られかねん!」

「スカーレットさんかぁ・・・こっちも手強いな。吟味の厳しさはある意味ダンジョン以上だ。まぁスカーレットさんのおかげで冒険者の早死には年間1~2件に激減したんだから、誰も口ごたえなんざできねぇわな。」

たしかにスカーレットが首を縦に振る場面を想像しがたい。実力がどうあれ、私がそんなことを口にしたら正座させられてお小言をもらいかねないぞ。スカーレットの言い分は一から十まで正しいから反論の余地すら見出せないんだ。

美味しい料理や酒とともに会話を楽しんでいる私たちのテーブルに気づいた老紳士がこちらに歩みを進めて来るのが見える。あれはクラウスだ。

「やぁ、楽しんでいるかね?」

「モーゼルトの旦那、見ての通りみんな羽を伸ばすどころか羽目をはずしてますよ。旦那もここで俺たちと一杯どうです?」

「いやすまないグレン、実はこの後も予定があってね。お酒は遠慮しておくよ。」

「こんにちわ、クラウスさん。」

「あぁ、リーファくんじゃないか。私のことはクラウスと呼んでくれ、その方が君らしくていい。今回は君の活躍で人繰りが一気に楽になったよ、ありがとう。」

「人繰り?」

「あぁいかんね、話を急ぐのが私の悪い癖だ。海賊や貸し倉庫での件と言い、想定ではもっと人員を投入して長期化することを見込んでいたんだ。だがリーファくんの獅子奮迅の活躍によって、セバルに配置した冒険者を短期決戦の工作に全て投入することができたのだよ。今日この日にお祭りができるのはリーファくんの働きによるところが大きい。」

「くぅー、良かったじゃねぇかリーファ。旦那にここまでほめられるのもなかなか無いぜ。」

「ひひひ。」

私はグレンにブンブン振り回すほど頭をなでられた。まるで我が事のように喜んでくれるのは私も本当に嬉しくなる。

「今回の短期決戦はグレンとトマソンの進言で決まったことだ、君たちにも感謝している。工作を統括したガウスくんとマキアスくん、陽動を指揮したリアンくんにもね。我がグラムスに優秀な冒険者の諸君が集まってくれたことが最大の勝因だよ。」

貸し倉庫の件・・・、敢えてストレートに贋金と言わないあたりはまだ解決していないのかも。後でどうなったかこっそり聞いてみよう。

「何かそう持ち上げられると悪い気はしねえぜ。なぁオジキ。」

「あぁ、まったくだ。」

「そう言えばダンジョンの話をしていなかったかね。そろそろ一般開放も考えているのだろう?」

「えぇ。これまでに集まった情報を分析するかぎり、エントリーレベルを絞れば11階層までは一般開放しても大丈夫だと見積もってます。旦那にうかがうための資料も街に戻れば」

「いや、急かそうとしているワケじゃないんだ。仕事の話は祭りの後にしよう。まぁ冒険者ギルドの方針はいつも手堅いから心配はしていないよ。思うとおりに進めてくれ。」

「なるほど、エントリーレベルさえ満たせば潜れないこともないんだなぁ。一回くらい行ってみるのもいいかも。」

リーファがダンジョンに興味を持つような発言をすると、途端にマキアスが上機嫌でリーファに応じて見せた。
先のお願い通りマキアスがリーファに目をかけてくれるようになったことで、リアンも思わずにこやかな表情を浮かべる。

「お、乗り気になったみてぇだなリーファ。いつでもマキアス様がダンジョンを案内してやるからよぉ。」

「ダンジョンはあまり好かぬが、リーファが行くというなら私も行って見るとしよう。その時は私もよろしく頼む、マキアス。」

「まかせてください、姐さん!」

いよぉぉっっしゃぁぁ、想定どおりっ!リーファを焚きつければ姐さんも動くと踏んでたぜー。ここでバッチリいいとこ見せねぇとなぁ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。 だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。 仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。 素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。 一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

処理中です...