幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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乗っ取り屋

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「ロミア、ありがとう。帰宅者を送り届けるのは大変だったろう。」

「ぜんぜん大変じゃなかったよ。おいしい食べ物や飲み物で毎日お祭り騒ぎだったから、道中は楽しかったんだ。野盗なんかカーネルがあっと言う間に撃退しちゃったよ。」

ロミアには帰宅支援の馬車五台を指揮をしてもらうために、ホーネットとハニービーを一部あずけていた。バトラーから説明を受けたのだがホーネットのカーネルを指揮官として付き添わせたため、出先でもハニカムパントリーが利用できた。
パントリーは一つなので、ハニービーを同行させれば共用できるらしい。つまり路銀だけでなく、グラムスで作られた料理をパントリーに収納すれば帰宅組にも提供できるのだ。これは使えるなぁ。

「カーネルも、ご苦労さま。ゆっくり休んでくれ。」

「ありがたきしあわせ。」

「気の毒だけど、この4人は帰宅がかなわなかったよリーファ。」

「帰れなかったのは残念だが、私たちは人手がほしくてたまらなかったんだ。私たちは戻ってきたお前たちを歓迎するよ。どうか力を貸してくれないか?」

「こちらこそ、お世話になります。」

リーファが手を差し伸べると群がるように4人はその手をとった。

「はっはっは、お前たちは運が良い。うまくやれば前よりも良い生活ができるぞ!今日はパーティーだ。」

「今日もだろ、エルマ。まぁ楽しいことは結構なことだ。ただし片付けを終えるまでがパーティーだからな。腹一杯になったからって勝手に寝るなよ。」

新たな仲間を加えることができてこちらも満足だ。新たな支店を出すのも良いかもしれないぞ。本店で調理したものをパントリー経由で提供できるしなぁ。場合によっては他の都市に店が出せるってことだ。
ところがせっかく気分がよかったのに、翌朝またしても招かれざる客が来たのだった。

「さて、返事を聞かせてもらおうか。」

「また来たのか。ソ・・・、ソントンドっ!」

「やっと思い出せたかのように言うな。まったく違わい!ワシはトマソン=ボーネランドだ。ワシにこの店を譲るんだな?」

「馬鹿を言うな。」

「そうか、ならばワシの息子をこの店の店長に・・・ん?お前、いま何と言ったのだ?」

「邪魔だから帰れと言っているんだ。」

「何だと?お前、正気か?おい、そこのお前も年長者ならこのガキに何が正しいのか教えてやれ。」

「客じゃないならとっとと出て行きな。あんたのせいで待たされているお客さんだっているんだ。」

「はぁ?お前らそんなこと言ってると後悔することになるぞ?良いのか?」

「話にならないな。」

「そうか、よし。お前には金貨20枚やろう。はっはっは、ガキの割にはうまく交渉したものだなぁ。ではワシの息子を」

「もうあきらめて帰れ。そんなはした金をいくら積まれたところで店は手放さないんだよ。」

しつこいオッサンだな。おや、何だこのヒョロっちい男は?

「パパ、こいつらに思い知らせてやろうよ。すぐに泣いて僕らに頼み込むに決まってるんだ。」

「それもそうだな、ガノフ。こいつらも頭を冷やせば何が最も得なのかわかるだろうよ。よし、ワシがひとつお前らに勉強させてやろう。もうワシは頼まれたってわざわざこんなところまで来てやらんからな。用があるならお前らが顔を出せ。」

やっと出て行ったよ。まったく何をどう思い知らせるってんだ?私がそう思っていたらボーネランドが帰ってすぐにガラの悪い客がやって来て怒鳴り始めた。

「何だ?こんなマズいメシ出しやがって。こんなので金とるのか、この店は?」

「他のお客さんの迷惑になるからやめてくれ。もう勘定はいいから帰ってくれよ。」

今までもタダ食いしようとしてわめく奴は何人かいたが、そいつらがどうなったか知らないようだな。ちょっとしたお仕置きで、タダ食いはことごとく失敗しているんだぞ。

「あぁ?文句あんのかこのガキ!おいっ、もう一回言ってみろ。あれ、身体が動かない?」

「おーい、ちょっとこのテーブルのやつら運ぶの手伝ってくれ。」

「またかよ、馬鹿はやることがワンパターンだよなぁ。」

こんな事をしでかしたのに運の良いやつらだ。さすがにこんなところで手荒なマネなんてできないからなぁ。本当ならいまごろはヴェノムでトドメを刺されていたんだぜ。応接室へ3名様ご案内。

「聞くまでも無いが誰の差し金だ?」

「うるせぇ。」

「そうか、まぁいいや。あんたたちの身体がこのまま動かなくなっても誰も困らないし。」

「おい、何をした?俺たちはどうなる?」

「最後の情けだ、人が通りかかる場所までは送ってやるよ。後はボーネランドにでも一生介護してもらうんだな。じゃあ運ぼうぜ。」

「待ってくれ!こんな身体じゃぁ、もうどうやったって生きて行けねぇよ。俺たちを雇ったのはボーネランドさんだ。」

「お前らはどうなんだ?」

「あぁ、俺たち全員そうさ。認めるから助けてくれ。」

もう面倒なことするなよな。お前らなんてまとめてかかって来ても、どうせ返り討ちになるんだからさぁ。ボーネランドに突っ返してやれば理解してくれるかなぁ?多分、無理だろうね。

「二度とこんなマネするなよ。迷惑料だ、きちんと勘定してから出ていけ。」

「待ってくれ。金は払うから、せめて料理の残りを食わせてくれよ。」

「はぁ?マズいんじゃなかったのか?」

「あれは芝居だ、正直うまかった。へへへ、また来てもいいかな?」

再びゴロツキまがいをテーブルに案内して食事をさせたところ、気をよくしたのか聞いてもいないことをペラペラと話し出した。

「この店にいたくご執心なのはガノフってドラ息子さ。この店が若い娘ばかりだから自分にはべらせたいんだとよ。」

「女子供のやってる店だから大したことねぇだろうと思ってたんだが、うまいメシが食えるここを台無しにするなぁもったいねぇなぁ。」

「でも気をつけろよ。商業ギルド加盟の店と取引できなくしてライバルを廃業に追い込んだことだってあるんだ。おそらくは食材の仕入れが難しくなるぞ。」

別にロミアに各地で食材をしこたま買い込んでもらったから問題無いんだよなぁ。そもそもグラムスで食材を仕入れたことは無いからどうでもいいよ。当面はどうとでもなる。

「この手の嫌がらせはまだまだ続くってことか。」

「俺たちよりもタチの悪い奴らに誘拐させるってこともある。くれぐれも人気の無い場所は気をつけた方がいいぞ。」

「まぁお前らも十分タチは悪いんだけどな。」

「よせよリーファ、ここは大事なところだからチャカしちゃなんねぇよ。いくらなんでも俺たちは殺しはしねぇぜ。だが誘拐するようなやつらは始末も請け負うんだ。」

それについては既に手を打ってある。従業員一人ひとりにホーネットとハニービーを付けてあるからなぁ。襲った瞬間に返り討ちにあうのがオチだ。どれくらいの罰が妥当なのかは迷うなぁ。死なない程度の毒で苦しんでもらうのが良いか。うん、そうしよう。
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