幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

文字の大きさ
上 下
9 / 167

ギルドからの要請

しおりを挟む
ギルドに戻ると冒険者が集合していた。ゴブリンの大群を討伐するため緊急召集がかけられたようだ。ギルド全体が騒然としている。

「リーファ、無事だったんだな。良かったぁ、心配させるなよ。」

「ライナ、あれは討伐部隊なの?」

「そうなんだ。ゴブリンの目撃証言はちらほら出ていたが、まさかこんな大規模だったとはな。」

ライナと会話していて気づかなかったが、ギルドの奥が騒がしい。何だろうと椅子に上ってのぞくと、居並ぶ冒険者を前にギルドマスターのグレンが現在の状況を伝えるとともに発破をかけていた。

「必ずどこかに集落があるはずだ。冒険者の誇りに賭けて草の根分けても探し出せ!ここで対処しないと手遅れになる、気合入れてぶっ潰すぞ。」

「私も行くよ。」

「お、おい。やめとけよリーファ。待てってば。スカーレット!ちょっと来てくれ。リーファが討伐に参加するって聞かないんだ。」

私の参加宣言にライナが目を白黒させている。向こうからスカーレットが飛んで来たじゃないか。

「何ですって?待ちなさいリーファ。行ってはダメよ。」

「私も冒険者だ、自分の身は守って見せるよ。」

せっかく武器防具もそろえたんだ。そう簡単にやられたりしない。すると突然うしろから意外な人間が叫んだ。

「おい、お前は!」

「えっ?」

その声に振り向くとそこには見覚えのある顔があった。たしかこの人、スアレスとか言ったか?私がスアレスに向き直ると、いきなりがっしりと両肩をつかまれた。隣にはエルフのお姉さんもいる。

「やっぱりそうだ。お前だろ?俺たちを助けてくれたのは。」

「どういうことですかスアレス?」

駆け出し冒険者にすぎないリーファが上位ランクのパーティーを救出したと聞いたスカーレットが卒倒せんばかりに驚きの声を上げる。

「どういうことも何もこの嬢ちゃんがゴブリンに包囲されて全滅寸前の俺たちを救ってくれたんだ。」

「スカーレット、一体この子は何者なのですか?私は三百年以上生きてきましたが、一度たりとてあれほど摩訶不思議な戦闘を見たことはありません。正直なところ今でも信じられないのです。」

今までリアンの口から冗談が吐かれるなど一言も聞いたことが無い。そのリアンまでもが口をそろえるなどあり得るのかとスカーレットはさらに驚愕の表情を浮かべている。

「今の話は本当なのですかリアン!?」

「スカーレット、あなたもご存知ないとは。どういうことだ?」

二人の間で疑問が飛び交う。話が先に進まないことに業を煮やしたスアレスが話に割って入った。

「とにかく嬢ちゃんの実力は俺が保証するぜ、スカーレット。もしかするとゴブリンどもは急ごしらえの討伐隊じゃ対処できねぇ数かもしれねぇ。そうなりゃ嬢ちゃんのスキルが必ず必要になるはずだ。」

そもそもこの二人がこんな時に冗談や嘘を言うはずが無いのだ。スカーレットは覚悟を決めて、彼らの言い分を飲み込むことにした。

「スアレスがそこまで言うなら実力は本物なのでしょう。わかりました、当ギルドはリーファ=クルーンに討伐隊への参加を緊急要請いたします。受けていただけますね?」

「もちろん!行ってくる。」

「必ず帰って来るのよ。」

ギルドから正式な要請を受けて私はグレン率いる討伐隊を追いかけた。まったく私が参加する前に出発なんて、なってないぞグレン。

「リーファ様、先ほどの戦闘でレベルが上がっております。」

「おっと、いま確認するよ。えーっと、ホーネット=ランサーとハニービー=ディフェンダーか。これは?」

「毒針は体表面の浅い部分しか貫かないので、通常は分厚い表皮を持つ魔物には攻撃が届かないのです。ランサーの能力は刺した際に生じる衝撃波により敵を貫き通す効果が付与されます。」

「おそるべし。じゃあディフェンダーは?」

「ハニカムウォールで相手の攻撃を弾き返します。」

「最強の矛と最強の盾だね。」

ようやく追いついた私が隊列の後ろでバトラーと話していると、その声に気づいた最後尾の冒険者と目があった。

「おい、何でガキがついて来ているんだ?」

「ガキじゃないぞ。ギルドからも緊急要請を受けているんだ。」

「嘘つけクソガキ!おっ死ぬ前にとっとと帰んな。」

くっ、この野郎。まったくどいつもこいつも私をガキ扱いして。今に見ていろよ。

「ふん。バトラー、ゴブリンの集落を探して。」

「かしこまりました。その前にリーファ様、そこの不届き者を無礼打ちにしてもよろしいでしょうか?」

「それはダメ。言い方はむかつくけど、こいつなりに私を心配してくれたんでしょ。私は大人だからこれくらい受け流すよ。」

討伐隊は襲撃を受けたメンバーの一人に案内されて現場にたどり着いた。そこには既にゴブリンの姿はなく、見るも無残な亡骸だけが残されていた。

「こいつはひでえな。オスカーもこれじゃ浮かばれねぇよ。」

「こっちはケイマンだ。昨日はともに酒を酌み交わしたってのによぉ。ちくしょー!」

スアレス一行の犠牲者は三人だ。あれだけのゴブリンを相手に三人の犠牲で済んだのは彼らの実力あってのことだが、決して納得の行くような話ではなかった。
私も一歩間違えればああなっていたんだろう。

「おい、リーファじゃねぇか?何でこんなとこに。」

「グレン。」

「何てこった。スカーレットは何をやってるんだ!いますぐかえ」

「おい、お前!無事だったんだなぁ。助けてくれてありがとよ。」

「れって・・・、おい、マイク。今なんつった?」

自分の聞き間違いなのかグレンは不安になり、思わずマイクに聞き返す。

「俺たちはこいつに救われたんだよ。」

「私だってスカーレットから緊急要請を受けて来たもん。」

「な・・・、何ぃっ!?」

叫んだまんまの姿で固まっている。どうした?大丈夫なのかグレンは。

「おい、リーファじゃねぇか。ん、グレンは何一人で遊んでんだ?」

「こんちわガウス。」

スカーレットが要請したってことはおそらくリーファの実力が本物だという確証を得たってことなんだろう。冒険者を狩るような組織的謀殺を演じて見せた手強い群れを押し返して、ベテラン上位パーティーを救出するとはなぁ。タダ者では無いという直感はあったが、まさかここまでとは。
幻術士の戦闘には正直なところ俺も興味がある。スキルを問い詰めるのはご法度だが、戦闘中にこの目で確認するのは誰はばかることなくできるってもんだ。

「ふぅ、あまりの驚きに戻って来られなかったぜ。要請があったってこたぁ分かってるなリーファ。俺の指揮下に入れ。」

おや、何も聞かされていないグレンは激怒するかと思ったのにあっさり参加を認めたぞ。

「うん、わかった。」

「よし、グレンもああ言ってることだ。気張って行くぞリーファ。」

「私はやるぞ、ガウス!」

するとバトラーが何かを察知したのか急に割り込んできた。

「リーファ様、ゴブリンどもの集落を発見しました。風景を送りますので目を閉じてください。」

「んあ?目を閉じればいいの?って何じゃこりゃ!」

目を閉じると上空から俯瞰するような風景が見えるじゃないか。まるで鳥になったかのようだが、そんなの今はどうでもいい。何じゃあの数のゴブリンは?

「斥候で出ているホーネットが見ている風景です。かなりいますね。五百は下らないと思われます。確認しただけでも数十体のホブゴブリンと数体のゴブリンメイジがおります。」

「どうしたリーファ?急に独り言言い出して。」

「ゴブリンの集落を発見したよ!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

だらだら生きるテイマーのお話

めぇ
ファンタジー
自堕落・・・もとい楽して生きたい一人のテイマーのお話。目指すのはスローライフ!

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

処理中です...