幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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物欲サーチ&デストロイ

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「ただいまライナ。依頼分の薬草を出すね。」

「おぅ、リーファ。おかえりーいぇー!」

「うぇーい!」

私は意気揚々とライナとハイタッチした。するといつも通りグレンが声をかけてくれた。おや、何か持ってるなぁ。何だろ?

「よぅ、今日はどうだったんだ?」

「今日の狩りはさっぱりだったよ、収穫は薬草だけ。ねぇグレン、そのピカピカの防具ってどうしたの?」

「お、気になるか?いいだろ。」

「うん、それ格好良いね。良いなー。」

そういう動きやすい防具って憧れるよー。私なんてただの服だもんなぁ。これじゃちっとも冒険者っぽくないよ。

「じゃあお前試してみるか?おい、ライナ。ちょっとリーファの着装手伝ってやれ。」

「えっ、良いの?」

「リーファ、こっちこっち。」

ライナが手招きしてくれる先に向かうと鏡のある小部屋だった。

「ここを調節して丁度だな。サイドで多段階調節できるから、成長して身体が大きくなっても使えるんだぜ。」

「うわぁ、軽いよライナ。このチェストアーマー、レザーと金属の組み合わせなんだ。チェーンメイルも付いてるんだね。」

「しかも強い衝撃には瞬間的に固くなる特殊なレザーなんだぜ。だから刺突や斬撃にも耐えられるんだ。」

「デザインも可愛いし、欲しいなぁ。」

鏡に映る姿はまさしく冒険者そのものじゃないか。そうだよ、私に足りないのはこれだったんだ。欲しい、絶対欲しい!試着を終えて小部屋の外に出るとグレンと目があった。

「何だ、欲しいのかリーファ?」

むっ、グレンも精神感応のスキルでもあるのか?私の考えが読まれてるじゃないか。

「でも私には手が届かないほどお高いモノなんでしょ?こんな新品、私じゃ買えないよ。」

「まぁ新品価格だと金貨20枚ってところだろうな。」

「げぇ、そんなするのか!無理だぁ。」

値段を聞いてしょげかえった私にグレンがにこやかな顔を見せている。何だろう、グレンの期待通りの反応を見せたってことなのか。貧乏って残酷なんだね。

「だがよぉ、諦めるにゃまだ早いってもんよ。実はここだけの話、これ中古品なんだぜ。」

「え、こんなピカピカなのに?どこをどう見ても新品だよ。あっ、でもよーく見ると小さい傷はあるね。一か所だけか、この程度じゃ新品と変わらないよ。」

「だろ?この俺がすみずみまでキッチリ整備してやったから品質は折り紙つきだ!金貨6枚で売りに出そうかって思ってる。」

何と!金貨6枚?私にもチャンスがめぐって来たってことなのか。ここで逃したら二度と出会えないだろうなぁ。

「うーん、狩りも頑張れば届くかもしれない。」

実際、ライナが持ってきた時はロクな整備がなされぬまま放置されていたのがありありとわかる代物だった。しかし装備の整備を欠かさなかったグレンの手にかかれば古くなった部品の交換・金属部分の磨き上げ・皮革のリファインなどプロ顔負けの腕前でレストアできるのだ。整備費用を上乗せすればどう考えても金貨12枚を下回ることなど無いだろう。前所有者のライナもあまりの変化に目が飛び出るほど驚くレベルだ。グレンは自信をもってリーファに購入をうながして見せた。

「よし、お前が欲しいならお前に譲ってやろう。今ならおまけも付けてやる。」

「本当?」

「ただし、俺からの依頼をこなしてもらうぞ。」

***

「よし、レッドボア三匹とホーンラビット六羽か。やるぞ!」

私は二つ返事で依頼に飛びついた。私をご指名とはグレンもなかなかお目が高いじゃないか。私にはこの子たちがついているし、決して難しい依頼じゃないぞ。

「リーファ様、さっそく」

「ボア?ウサギ?」

「いえ、ホーンブルだそうです。いかがいたしましょう?」

「うーん、外道だけど良いや。お願い、獲って。」

「かしこまりました。」

あれから私たちもいろいろ探し回ったが、お目当てのレッドボアはどこにも見当たらなかった。もう日も暮れかけて来たなぁ。

「いないね。」

「今日に限って見当たりませんな。」

「結局獲物って?」

「ホーンブル二頭とホーンラビット二羽です。」

「くっ、今日買えると思ったのに。」

数日間の設定があるから即失敗とはならないけど残念だなぁ。負けてないのにかなりの敗北感だ。

「レベルも上がりましたし、今日は引き上げましょう。」

「ホーネット=ナイトシーカーとハニービー=トーチねぇ。何ができるの?」

「ナイトシーカーは暗闇での行動能力、トーチは光ります。どちらも夜間やダンジョンでお役立てください。」

「もしかして回復能力とか劇毒は無くなったの?だとしたらもったいないかも。」

「既にご覧の通りパントリーは今でも使えます。」

「あっ、そうだった!」

「以前の能力は進化しても残りますのでご安心あれ。」

このままレベルを上げ続けたら最後は神にでもなるんじゃないか?何でもできるようになっちゃうよ君たち。

「すごい万能蜂。」

「お褒めにあずかり恐縮です。」

「じゃあ帰ろう、バトラー!」

とりあえず明日もあるし、今日は獲物を卸して終わりにしよう。そう気楽に考えていた私だけど、ギルドに戻ってみるとグレンの反応は意外なものだった。

「よりにもよってホーンブルかよ。」

「えへへ、ダメかな?」

まさかウサギは今日中に完納しなければ依頼失敗とか言い出さないよね?

「いや、ダメじゃないんだ。むしろ無類の肉好きどもが集まるギルドの酒場じゃありがてぇもんさ。今晩やつらは金に糸目をつけず高級部位を食いあさるために酒場に殺到するぞ。市中にゃ滅多に出回らねぇからなぁ。おいジャック、例の看板出しとけ。儲かるぞこりゃあ。」

「はい、金貨十九枚と銀貨六枚な。そしてお待ちかねのコイツだよん。」

するとグレンの目配せを受けたライナが報酬とお目当ての防具を持って来た。どういうことだろう。もしかして依頼達成ってこと?

「え、何で?そもそも依頼内容とは全然違うよ。解体すらしてないのにこんな大金や防具までもらって良いの?」

「単純に牛肉の方が美味くて大人気だから圧倒的に高いんだよ。素材だってレッドボアとは比べ物にならんくらい豊富なんだ。むしろ下手な解体されてないだけ高値が付く。依頼だってレッドボアよりも格上を持って来られちゃ、まさか違約金なんてアホなこと言わねぇよ。それこそ逆に依頼主の俺が違約金払ってでも欲しい位だぜ。」

「そうなの?」

「ふふふ、違約金巻き上げちゃいなよリーファ。」

ライナがニヤニヤ笑いながら私に提案してきた。グレンの眉がピクリと反応したみたいだけど大丈夫かな。

「野生のホーンブルはこの辺じゃ本当に珍しい。今は脂が乗ってうめぇからリーファも晩飯に食って行けよ。ライナは食わなくていいぞ。」

「スカーレット、ギルドマスターが私たちにビフテキごちそうしてくれるってさ。」

「ライナ!てめぇ都合の良いデマ流してんじゃねぇよ。」

へぇ、食べたことないからわからないけど美味しいなら食べてみないと。

「ははは、グレンのおすすめなら絶対食べなきゃだね。」

「あら、じゃあ私も今日はリーファと一緒に食べて行くわ。」

横で聞いてたスカーレットがつぶやいた。みんなで楽しい食事なんてのも悪くないよ。
ギルドは夕方から酒場として営業している。夜働いている職員とは全く話したこと無いんだよね。しばらくすると私のテーブルに大きなジョッキを手にした大柄な男が近づいて来た。おお、何か怖いな。

「おめぇが牛獲って来たんだってなぁ。小っせぇのにやるじゃねぇか!おめぇ名前は?」

「リーファ=クルーン。よ・・・、よろしく。」

「俺はガウス=コルドバだ。ガウスでいい。うめぇ肉をありがとよ、リーファ。おかげで酒が進むぜちくしょー!がっはっは。」

何だ、見ために反して気の良いやつだった。今度話しかけてみよう。

「あいつは俺の元パーティーメンバーだった男だ。Bランク冒険者でうちのギルドじゃトップランカーなんだぜ。見ためはアレだが良いやつだから仲良くしてやってくれよ。」

「見ためがアレなのはグレンもだろ、なぁリーファ。」

お酒を飲みながらライナが私と肩を組む。ライナとグレンは本当に仲がいいよね。

「そういえば最初から気になっていたのですが、なぜ我々と同じテーブルで当然のように一緒に食事しているのかなライナ君?てめぇは食わなくていいって言ったろーが!」

「そりゃ自腹で食ってる客に対するもの言いじゃないぞグレン。」

みんなお酒も入っているからワイワイギャーギャー騒いでいる。私も何か楽しくなって来たよ。するとスカーレットが私に声をかけて来た。

「美味しい?」

「うん、こんな美味しいもの今まで食べたことないよ。でもみんなで食事するともっと美味しく感じるね。誘ってくれてありがとう。」

こんなに楽しい時間を過ごせるなんて夢のようだ。冒険者になって正解だったかもしれない。武器と防具も揃えたことだし、明日から冒険できるといいな。
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