幻術士って何ですか?〜世界で唯一の激レアスキルでのし上がります〜

犬尾猫目

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グラムス冒険者ギルド

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「そろそろ討伐依頼とかやりたいなぁ・・・なんて。」

チラッ。

「・・・。」

「このスティンガーウルフ5匹とかいいんじゃないかなぁ・・・なんて。」

チラッ。

「リーファ。」

「はいっ!」

やばい、スカーレットの声が怒ってるのがわかる。上目遣いでお願い作戦失敗だ。

「あなたはまだGランク冒険者でしょ。この依頼はEランクよ。パーティーメンバーとして討伐に参加するならわかるけどあなたはソロでしょ。許可できないわ。」

く・・・、怒られてしまった。だが今日び私も自分の力に手応えを感じてるんだもん。もう少し食い下がるぞ。

「ねぇ、どうやったらランク上がるの?」

「技量、人格、ギルドへの貢献度など様々な観点から多角的に評価されてランクの昇降が決まります。」

うーん、一般論でさりげなく遠ざけられた気がする。むぅ、食い下がっているのもバレたか。こうなったらアプローチを変えてみよう。

「私そんな頭良くないから分からないよ。もうそういうことじゃなくて、もっと手っ取り早く上がるほう」

「なに馬鹿言ってるのっ!」

「ひぃっ、ごめんなさい。」

うひゃあ、終わった。今日は無理だ、もうこのまま薬草採取に行くしかない。

「・・・。」

気まずいなぁ、スカーレット怒らせちゃった。

「・・・。」

「待ちなさいリーファ。」

「うん。」

もしかしてまだ話の途中だったのかな。やばい、立ち去ろうとしたことを咎められる。あわわわわ。

「今は無理をする段階じゃないわ。日々、真面目に依頼をこなして自分を磨きなさい。いつか必ず評価されるから。」

「わかったよ、スカーレット。」

スカーレットはギルドを発つリーファに優しく語りかけた。リーファは自分のことを思って語られた言葉を芯で受け止めたみたいだ。寂しそうだった顔をぱぁっと明るくしてギルドを出て行った。万が一リーファが帰って来なかった場合、叱りつけた言葉なんかを最後の言葉にしてはならないというスカーレットのまごころだ。
するとその様子を見ていた犬耳の獣人である受付嬢のライナが口を開く。

「ははは、スカーレットは厳しいな。」

「何言ってるのライナ。あなただって元冒険者じゃないの。まして受付をやっていれば冒険者の厳しさは身に浸みるほど分かっているでしょ。」

「そうだけどさ。私はあの子の大変さが想像できない訳じゃないし。実際、天涯孤独で生きるのってあの子の年齢じゃ過酷だよ。どうしても私はリーファを応援してあげたいと思っちゃうんだよなぁ。えげつない奴らだって周りにいっぱいいるしね。」

ライナも病気の母親や弟妹を養うために兄と冒険者をやっていた口だ。苦しい生活を乗りきるために危険に身を投じていた過去があるため、否応なくリーファの境遇が気になった。ライナには支え合う家族がいたから頑張れたが、リーファは支えてくれる家族だっていない。

「ライナ、お前はまだまだだな。」

「ギルドマスター、それってどういうこと?」

「生半可な同情で見極めを甘くすると死ぬのはリーファなんだ。ライナが言うようなことはスカーレットだって百も承知だぜ。」

「そんなこと言ってギルドマスターが一番リーファに甘いですけどね!」

「スカーレット、これは役割の違いってやつさ。考えても見ろ、俺みたいなのが本気であいつを止めたらそれこそ冒険者やめちまうかもしれねえ。な、だからこそお前が理、俺が情であいつを導く必要があるんだ。」

「私に損な役回りを押し付けてるだけでしょうが。」

「褒めて伸ばすのが俺の流儀なんだよ。」

グレンの言い分に聞き捨てならないとばかりにライナの耳がピクリと反応を見せた。

「スカーレット、グレン嘘ついてるよ。こないだなんて私の失敗を」

「それは怒られて当然のことです、ライナ。」

「最後まで聞いてよ。」

「最後まで聞いたって一緒だ、この馬鹿たれ。」

「あー、また馬鹿って言った。横暴だぞグレン!」

二人から自分の言い分を切って捨てられてライナは口をとがらせる。

「しかし、あの子の貧弱な装備は気になるわね。あの子生活に余裕があるわけないし、どうにかならないかしらグレン?」

「そうだなぁ。おい、ライナ。お前の使わなくなった武器防具、俺が買い取ってやるよ。」

「え?なにグレン。私の身につけていた防具で変なことするんでしょ。うげぇ、絶対やだよ。」

「そうなんですかグレン?いますぐ自身の逮捕状を発行してください。」

「馬鹿言え!お前ら変態を見るような目で俺を見るのはやめろ。今の流れでどうしてそんな話になるんだよ。」

グレンはまさかの変態扱いにうろたえる。冒険者から恐れられるコワモテのギルドマスターも一癖も二癖もある職員たちの前では形無しだった。有能な上司にあらぬ嫌疑をふっかけて、先ほどの意趣返しができたライナが痛快に笑い声を上げる。

「あっはっは、どうせリーファにあげるんでしょ。でも私のお古なんかでいいのかな?」

「リーファのステータスからすると、身軽さと敏捷性を活かした戦い方が最も適しているはずだ。その点、ライナとタイプは近いと見たね。幻術士がどんな戦い方するのか見当もつかねぇが、少なくともお前の防具はリーファと相性が良いんじゃねぇか?」

「たしかにグレンの言う通りね。」

「でもリーファが気に入らなかったらどうするの?うげぇ、もしかして私の防具を手に入れるためにリーファをダシに使ったの?」

「ゲス野郎ですね、グレン。自決用の短刀を持ってきますね。」

「だから変態を見るような目で俺を見るなっての!もし要らないようなら古道具屋にでも売り払うさ。」

「しかしいくらなんでも一冒険者に肩入れしすぎではないですか。」

冒険者ギルドは公平かつ公正中立でなくてはならない。信頼が無くなれば成り立たないというのが冒険者からの叩き上げであるグレンの信念だった。その信念はギルド職員たちも共有している。もちろん腐敗したギルドはどこにでも存在するが、ここ自由都市グラムスのギルドは帝国内で最も信頼されるギルドの一つだ。グラムス冒険者ギルドの職員であることに誇りを持っているスカーレットの懸念は至極真っ当なものと言える。

「誰もタダでやるなんて言ってねぇさ。」

「どうするの?」

「俺からアイツを指名して依頼を出す。防具は依頼の報酬だ。防具が欲しけりゃ依頼を受けるだろ?」

「なるほど。動機の点でまったく問題無しとは言えませんが、それらしい体裁は整いますね。依頼を受けるも受けないもあの子の意志次第ですから。」

「だろ?じゃぁ整備も必要だからライナ、昼休みにでも持って来いよ。」

「わかった、まかせて!でも変なことしないでよ。」

「しねぇよっ!」
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