上 下
3 / 167

初日の成果

しおりを挟む
「すごいっ!」

「リーファ様はあまねく蜂の頂点に君臨するお方。あのホーネットも例外ではございません。」

「あらためて見ると凶悪だなあ。こんな近くで見たの初めてだよ。でも私の薬草採取について来てくれるのか?」

「はい。この者はロイヤルガードとして巣から独立したのでリーファ様にお供いたします。」

「え?どういうこと。」

「常にリーファ様をお守りする使命を担っているということです。」

「そう言えばこの子もステータスに出てくるのかな?おお、ホーネットLv.1って出てる。」

「ではあらためて薬草採取に参りましょう。」

それでは気を取り直して薬草採取に向かいますか。ん、すごい音がするなあ?私が蜂の巣の方を振り向くと蜂の大群が展開しているのに気づいた。

「ぎゃー!何なのあれは?」

「我らが巣の総力を挙げてリーファ様をお守りいたします。」

「いやいや、何匹いるんだよおまえら!」

「いえ、我が主をお守りするのが我らの役目。どうかお供させてください。」

「もっと少なくていいよ。半分の、さらに半分で。」

これってやばくない?だいぶ減らしたけど絶対に百匹以上いるよ、これ。でも身の安全や依頼達成とは引きかえにできないよな。

「178匹です。」

いま何も口にしていないんだけど。何で私の疑問に答えてるの?

「何かおかしいなあとは思ってたけど、私が考えていることわかるの?」

「はい。安全と依頼達成のためリーファ様の手足となって働きます!」

これが精神感応の効力なのか?いろいろ調べないとわからないことばかりだ。
でも蜂もこれだけいれば、襲い来る魔物も対処できそうだ。ところでさすがにこんなに奥深くまで来ていいのかなぁ。

「ねえ、まだ奥に行くの?本当に大丈夫。」

「そろそろです。お待たせしました、こちらになります。」

見ると辺り一面に薬草が生えている群生地にたどり着いた。さすが蜜蜂、本当に植物の分布には詳しいみたいだ。

「わぁ!いっぱい生えてるよ。すごいねあんた。」

「光栄に存じます。」

私は一心不乱に薬草をかき集める。あのまま教えてもらった場所を探し続けても依頼の量には絶対に届かなかっただろう。こんなに早く仕事が終わるなんて思わなかった。

「これだけあれば依頼達成だ。今後のこともあるし採りすぎは禁物よね。」

「まだまだいっぱい薬草は生えております。これだけでよろしいのですか?」

「うーん、必要以上に採っても買い取り価格が下がったら意味ないし。依頼分だけでいいよ。今日、明日はベッドで寝られる。ふふん。」

「リーファ様、斥候がウサギを見つけましたがどうしますか?」

「え?どうするって、できることならそりゃぁ捕まえたいけど。」

「かしこまりました。」

「かしこまりましたって、どうするつもり?」

「どうやら仕留めたみたいです。」

「早っ!」

そんなことまでできるの?さっきから驚きばかりだ。

「向こうですね、参りましょう。」

「わぁ!本当にホーンラビットだ。これもらって良いの?」

「献上品です。」

「ギルドに買い取ってもらえるよ。やったー!」

「まさかこれほど喜んでいただけるとは!もっとご入用ですか?」

「うーん、持ち帰る手間もあるからなあ。でも、あと一匹欲しいかな。」

「おまかせください。聞いたか、お前たち!草の根分けてもウサギを探せ!」

おお、本当に王様みたいだ。聞いてたより幻術士も悪くない。これはできることを増やせば、私みたいな子供でも何とか生きていけるぞ!社会の底辺で生きてきた孤児でも這い上がって行く希望が見えてきた。
早くも狩猟採集が終わったので、私はそのままギルドに直行した。最初に入るときには躊躇したギルドの入り口も今はくぐるのが待ち遠しいほどだった。意気揚々と凱旋するとグレンが私に気づいて声をかけた。

「リーファ!早えじゃねーか。」

「うん。思いのほかすぐに依頼を達成できたよ。」

「よーし、上出来だ。ん、それ獲物か?」

ああ、そうだった。背中に背負って持ってきたんだった。これも今回の成果だもんね。

「ホーンラビット2匹。たまたま見つけたから狩って来た。」

「どれ、見せてみろ。」

「あら、ホーンラビットじゃない。まさかあなた一人で獲ったの?」

受付からスカーレットが顔を出した。私はドヤ顔でスカーレットとハイタッチした。グレンともハイタッチしようかと思ったが何か雰囲気がおかしい。

「リーファ。お前これをどうやって狩った?」

「どうって、普通にだよ。」

何だろう?悪いことしてないのに怒られそう。

「どうしたの、ギルドマスター?」

「バカ、普通だったら聞きゃあしねえよ。これ無傷じゃねーか。どんな狩り方すりゃあこんな綺麗に狩れるっつーんだよ。」

そうか。普通だったら矢だったりナイフだったり傷はあるもんだよね。魔術でも焦げたり何らかの痕跡が残るはず。どうしよう。蜂に獲ってもらいましたなんて話しても信じてもらえない気がする。ごまかさないと。

「え?えーっとー。幻術?」

「なるほど。そういや、そうだった。お前幻術士だもんな。確かに俺も含めて幻術士に何ができるのか知ってるやつなんてどこにもいねえよ。こんな狩猟向きのスキルがあるたあ知らなかったぜ。」

良かった。誰も詳しいことがわからない謎だらけの幻術士だからこそできるごまかしだよね。そもそも幻術士である私もさっぱりわからない。

「これ引き取ってほしい。」

「ああいいぜ。ただ、このままだと手数料を取られるって知ってるか?」

「え?そうなの。」

手数料か。今は小銭だって失うのはキツイ。でも仕方ないのかなあ。世の中そんなに甘くないってことだね。

「ああ、肉屋の肉がどうやって売られてるか考えればわかるだろ?豚だって解体されて初めて肉として食えるんだぜ。だから買い取りを高くするためには精肉した状態で渡せばその分高くなるってもんさ。肉以外にも革や魔石なんか金になるものが眠ってるんだ。解体は冒険者にゃ必須の技術と言ってもいいだろう。」

「それってどこで教えてもらえるの?」

「そうだな。普通はパーティーの先輩から教えてもらうのがほとんどだろうが、幻術士を迎え入れるパーティーなんて探すのも大変だろうしなぁ。」

ガーン!幻術士って一体?私は要らない子なの?
グレンが本当に冒険者になるつもりか確認したのはそういうことだった。

「そうなのか。どうしよう。」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

処理中です...