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雪原の覇者
レッツ修行の旅
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「へぇー、風魔術を足の裏にまとわせて少しだけ浮かせるの。それにしてもユーキはよくこんなこと思いつくわね。こんな使い方をこの世の誰も思いつかないと思うわ。」
ハヤテに騎乗して北へと移動しているソフィアが目を丸くして驚いている。それというのも俺はいつもの如くホバー走行していると、しきりにソフィアが種明かしを求めて来たのだ。もちろん隠すまでも無いことだから教えてやったわけよ。
「そうだろ?これが俺のクリエイティブな才能ってやつなんよ。」
「ねぇ、どうやるの?」
「へ?」
「これが単なる風魔術なら私にもできると思うの。」
簡単に見えるってのはわからなくはない。でもそれは俺が使いこなしているからであって、誰でも簡単にできるわけじゃないんだ。
スケートとかって他の人が滑っているのを見ると、あんなの自分にもできるって思うじゃん?でも見るとやるとじゃ大違いなんだよね。しかもこれ、身体のバランス感覚が大事だけどそれだけじゃない。さらに魔術を使うんだから。
「いやいや、こういうのは頭でっかちなソフィアちゃんには向かないんじゃないの?思い通りに動くには微細な魔術コントロールが必要なんだぜ。」
「言ったわねユーキ?」
「俺は仕組みを理解して空気の流れを最適化することでホバー走行を会得してるんだ。物理を理解していないソフィアにゃちょっとむずかしいんじゃねーの?」
「ブツリがなんなのかよくわかんないけど、あんたがこれをマスターするまでに要した時間は?」
「まともに走れるまで練習は2日間を要した。」
「じゃあ私も2日間でマスターしてみせるわ。」
「無理無理、やめとけ。」
煽ってるように聞こえるけど違うよ、そんな短期間の設定だと大ケガ待ったなしだから。教えるのはやぶさかではないが、無茶して危ないことしようってんなら別の話。
「自信たっぷりね、炊事洗濯当番3日間賭ける?」
「上等、やってやんよ。盛大に吠え面をかくがいいさ。」
と、まぁこんな具合で始まったソフィアの特訓なわけだが座学の方は秀才ソフィアだけあって飲み込みが早かった。身体にまとう風の渦も図示して懇切丁寧に説明したら、何と小一時間で再現しやがったんだよね。
俺が手探りで編み出したのに、こんな簡単にこなされるとオジサンのプライドもズタズタよ。
「キャアー」
「ま、そう簡単には行かんのよな。」
見るとソフィアはフィギュアスケートのようにグルグルと高速回転している。左右で風の出力を少しでも間違うと怪人・高速回転コマ人間になってしまうんだ。俺も最初はそうなったからよくわかる。
練習に夢中のソフィアには盗賊から剥ぎ取った兜で簡易的に作ったヘルメットやニーパット、エルボーパットを装着させてはいるがケガだけはすんなし。
「うげぇ、気持ち悪い。だめ・・・吐きそう。」
「回転し始めたらその瞬間に制御を断念して魔術を解除せにゃ。ソフィアも悔しいだろうけど、ムキになって立て直そうなんて考えないことだよ。」
実は俺の場合、魔術制御の大部分は指輪が担ってくれている。しかしソフィアは自分で魔術を行使して、さらに微細な出力のコントロールまで行わなければならない。
そう、もうわかったよね?つまりはそもそものスタートラインが全く違うんだよ。ソフィアと違って俺は随分とゴールまでの距離が短いんだなぁ。
まぁ炊事洗濯当番を3日も申し出てくれたんだからソフィアの心意気を俺も買わないわけには行かないわけ。ホバー走行に必要なノウハウは余すところ無く伝えたし、決して陰湿な罠ではないよ?つーわけでそこんとこだけはヨロシク!
まぁそんなこんなで、北への移動もこなしながらソフィアには休憩時と帰宅後に練習を続けてもらった。そして迎えた約束の2日後・・・
「ふっふっふ。約束の2日間が過ぎたようだが、首尾はどうかねソフィアちゃん?」
「ぐっ・・・あともう少しなのに。悔しい!」
「炊事洗濯掃除当番3日あざーっす!」
「ちょっと!炊事洗濯は約束したけど、こっそり掃除まで盛らないでくれる?」
「ちっ、ノリでイケると思ったんだがなぁ。ひょっとしてソフィアって鋭い?」
「あんた、私を馬鹿にしてんの?・・・もぅ、でも考えが甘かったのは反省すべきよね。」
「いやぁ、でもソフィアは俺と違って魔術の基礎も応用も積み上げているから俺の予想をはるかに上回る出来だったってこたぁ認めるよ。俺も内心は少し焦ってたんだぜ?」
いやこれホント。あともう少しでコツをつかめそうなんだ。惜しいって思う場面は何度もあったからね。末恐ろしいとはこのことなのか?
「え?やだ、いきなりホメられると照れるわね。でも私もかなり手応えは感じてるの。」
「そうだな、それこそもう2日もありゃ曲りなりにホバー走行できそうだ。」
「曲りなりにって何よ。」
さっきまで嬉しそうな顔してたのにぶんむくれだ。ソフィアはコロコロと感情の変化が顔に出る。
「そりゃ地面にゃ起伏や傾斜ってもんがあるから、それに合わせた微細なコントロールが上に乗っかって来んの。俺だって魔物だらけの森でハヤテと猛特訓したんだからな。」
「先は長いわね。」
「だろ?」
初めこそホバー走行の伝授には消極的だった俺だが、ソフィアが緊急離脱手段を持つことは極めて望ましいことだって気づいたんだよね。
そんなこと絶対に起こっちゃいけないんだけど俺からはぐれたり、最悪俺が死んだ場合には必要な技術だから。それこそソフィアには是非ともホバー走行を極めてもらいたい。きっと助けになるだろう。
まぁ取り越し苦労だろうがね。
ハヤテに騎乗して北へと移動しているソフィアが目を丸くして驚いている。それというのも俺はいつもの如くホバー走行していると、しきりにソフィアが種明かしを求めて来たのだ。もちろん隠すまでも無いことだから教えてやったわけよ。
「そうだろ?これが俺のクリエイティブな才能ってやつなんよ。」
「ねぇ、どうやるの?」
「へ?」
「これが単なる風魔術なら私にもできると思うの。」
簡単に見えるってのはわからなくはない。でもそれは俺が使いこなしているからであって、誰でも簡単にできるわけじゃないんだ。
スケートとかって他の人が滑っているのを見ると、あんなの自分にもできるって思うじゃん?でも見るとやるとじゃ大違いなんだよね。しかもこれ、身体のバランス感覚が大事だけどそれだけじゃない。さらに魔術を使うんだから。
「いやいや、こういうのは頭でっかちなソフィアちゃんには向かないんじゃないの?思い通りに動くには微細な魔術コントロールが必要なんだぜ。」
「言ったわねユーキ?」
「俺は仕組みを理解して空気の流れを最適化することでホバー走行を会得してるんだ。物理を理解していないソフィアにゃちょっとむずかしいんじゃねーの?」
「ブツリがなんなのかよくわかんないけど、あんたがこれをマスターするまでに要した時間は?」
「まともに走れるまで練習は2日間を要した。」
「じゃあ私も2日間でマスターしてみせるわ。」
「無理無理、やめとけ。」
煽ってるように聞こえるけど違うよ、そんな短期間の設定だと大ケガ待ったなしだから。教えるのはやぶさかではないが、無茶して危ないことしようってんなら別の話。
「自信たっぷりね、炊事洗濯当番3日間賭ける?」
「上等、やってやんよ。盛大に吠え面をかくがいいさ。」
と、まぁこんな具合で始まったソフィアの特訓なわけだが座学の方は秀才ソフィアだけあって飲み込みが早かった。身体にまとう風の渦も図示して懇切丁寧に説明したら、何と小一時間で再現しやがったんだよね。
俺が手探りで編み出したのに、こんな簡単にこなされるとオジサンのプライドもズタズタよ。
「キャアー」
「ま、そう簡単には行かんのよな。」
見るとソフィアはフィギュアスケートのようにグルグルと高速回転している。左右で風の出力を少しでも間違うと怪人・高速回転コマ人間になってしまうんだ。俺も最初はそうなったからよくわかる。
練習に夢中のソフィアには盗賊から剥ぎ取った兜で簡易的に作ったヘルメットやニーパット、エルボーパットを装着させてはいるがケガだけはすんなし。
「うげぇ、気持ち悪い。だめ・・・吐きそう。」
「回転し始めたらその瞬間に制御を断念して魔術を解除せにゃ。ソフィアも悔しいだろうけど、ムキになって立て直そうなんて考えないことだよ。」
実は俺の場合、魔術制御の大部分は指輪が担ってくれている。しかしソフィアは自分で魔術を行使して、さらに微細な出力のコントロールまで行わなければならない。
そう、もうわかったよね?つまりはそもそものスタートラインが全く違うんだよ。ソフィアと違って俺は随分とゴールまでの距離が短いんだなぁ。
まぁ炊事洗濯当番を3日も申し出てくれたんだからソフィアの心意気を俺も買わないわけには行かないわけ。ホバー走行に必要なノウハウは余すところ無く伝えたし、決して陰湿な罠ではないよ?つーわけでそこんとこだけはヨロシク!
まぁそんなこんなで、北への移動もこなしながらソフィアには休憩時と帰宅後に練習を続けてもらった。そして迎えた約束の2日後・・・
「ふっふっふ。約束の2日間が過ぎたようだが、首尾はどうかねソフィアちゃん?」
「ぐっ・・・あともう少しなのに。悔しい!」
「炊事洗濯掃除当番3日あざーっす!」
「ちょっと!炊事洗濯は約束したけど、こっそり掃除まで盛らないでくれる?」
「ちっ、ノリでイケると思ったんだがなぁ。ひょっとしてソフィアって鋭い?」
「あんた、私を馬鹿にしてんの?・・・もぅ、でも考えが甘かったのは反省すべきよね。」
「いやぁ、でもソフィアは俺と違って魔術の基礎も応用も積み上げているから俺の予想をはるかに上回る出来だったってこたぁ認めるよ。俺も内心は少し焦ってたんだぜ?」
いやこれホント。あともう少しでコツをつかめそうなんだ。惜しいって思う場面は何度もあったからね。末恐ろしいとはこのことなのか?
「え?やだ、いきなりホメられると照れるわね。でも私もかなり手応えは感じてるの。」
「そうだな、それこそもう2日もありゃ曲りなりにホバー走行できそうだ。」
「曲りなりにって何よ。」
さっきまで嬉しそうな顔してたのにぶんむくれだ。ソフィアはコロコロと感情の変化が顔に出る。
「そりゃ地面にゃ起伏や傾斜ってもんがあるから、それに合わせた微細なコントロールが上に乗っかって来んの。俺だって魔物だらけの森でハヤテと猛特訓したんだからな。」
「先は長いわね。」
「だろ?」
初めこそホバー走行の伝授には消極的だった俺だが、ソフィアが緊急離脱手段を持つことは極めて望ましいことだって気づいたんだよね。
そんなこと絶対に起こっちゃいけないんだけど俺からはぐれたり、最悪俺が死んだ場合には必要な技術だから。それこそソフィアには是非ともホバー走行を極めてもらいたい。きっと助けになるだろう。
まぁ取り越し苦労だろうがね。
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