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本編
123:答え合わせ
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「まず一つ。わたしが適当な御業で、誤魔化していたのがいけなかったんだよね?」
「正解だ」
ノルは伸ばした手をひっこめた。
「食事を取りに行くとき、周りに見られないよう御業で解毒するのは一般的な方法だ。君もそれを知っていただろう?」
「うん、知ってた。ノルくんもそれをわかって、嫌そうにわたしに頼んでくれもんね」
ノルがぬいを使い走るようなまねはしない。いつも自分でやってしまうか、逆に世話される始末である。
「あまつさえ僕の分まで身を張るなど……もっと自分の身を大事にしてくれ。さらに具合が悪そうになって帰ってきたとき、君をどうにかしてやろうかと思った」
矛盾したことを言い放つ。悪そうな表情を浮かべるが、もちろん以前のような嘲りはない。どういった意味を含んでいるのか、理解したぬいは顔を赤らめる。
顔を逸らすことなど、許されるわけもなく、頬に手を当てられる。そのままノルの顔が近づき、反射でぬいは目を閉じた。しかし、いくら待ってもなにもされない。おそるおそる見開くと、目の前にノルの顔が迫っていた。どこかしまりのない表情で、まっすぐに見つめている。
「っふ、急に目を閉じてどうした?僕になにかされるかと思ったのか?」
「その返しは意地悪だと思うんだけど」
頬を膨らませると、それをおさえるためか柔らかく押してくる。さらに不満が募ったぬいは拘束された両手を使って、ノルの手を掴んで引き下ろす。そして残り僅かだった距離を縮めると、唇を押し付ける。それだけではなく、いつもノルがするように角度を変えてみる。
「やめてくれ」
肩を掴むと引きはがされた。ぬいよりも頬が赤く、息が上下している。
「こうされると思ったんだよ。悪い?」
ノルの真似をして言ってみると、掴まれた肩に力を入れられた。
「悪い。誘惑するなと、さっき言っただろう」
「いたずらするノルくんが悪いんだよ?」
たしなめるように言うと、ノルはなにも言い返せなくなったのか言葉に詰まる。肩から手を離すと、背中を向けた。
「ああ、確かにそうだな。もう無理だ。これ以上なにかされたら、君を押し倒してしまいそうだ」
丸々背中を見たぬいは同じように背を向けると、もたれかかった。その瞬間ノルの体がびくりと震えるのが分かり、小さく笑みをこぼす。
「っく、まだだめだ……はぁ、家から出ない生活を送りたい」
引きこもり発言を受け、ぬいは背中をぐりぐりと押し付けた。
「それはもう送ったよね?結婚したあと……その、うー……えっと、もうそろそろお家に帰ろうか。これだけ時間が空いちゃったから、今更戻れないし」
新婚後のことを思い出し、ぬいは照れ隠しから誤魔化そうとする。もしノルがその表情を見ていたら、ただでは済まなかっただろう。幸いなことに今は背中合わせの状態である。
「だめだ、話が終わっていない。ヌイ、君は自分の食事を一気に運んで手元に置いた。なにが悪かったかわかるか?」
ぬい自身に言わせる方針はどうやらやめたらしい。
「取りに行くとき、御業を使って解毒しに行けないからだよね?」
「不正解だ」
バッサリとノルに言い切られる。ぬいは少し考えるが、見当もつかなかった。
「本当はもっと助けられたらよかったが……君の対応はそつなく、あまりにも完璧すぎた。よく僕のことをほめるが、ヌイの方こそなんでもできると思う」
「それは違うよ!偶々ノルくんが不得意なところが、できただけってあって」
「は?なにを言っている。君の方こそ……いや、今回の対応だけであって、確かに完璧ではないな」
ノルは自分の失言に気づいたのか、申し訳なさそうに言う。
「うん、そうだね。ノルくんも。すぐに顔に出ちゃうところとか、貴族の人たちは嫌そうにするけど。わたしにとっては、好きなところだし」
「っく……ヌイ。だから……」
何度か深呼吸する音が聞こえると最後に息を吐く。
「あくまで貴族たちにとっては、非の打ち所がないように見えた。だから余裕と思われ強い毒を盛られた。そのことに覚えはあるか?」
通常仕込まれる毒は、焼け付ような痛みが主流である。即倒れてしまうような、わかりやすい毒を仕込む真似はしない。どの者たちも、相手を殺したいのではなく、苦しめたいだけだからだ。
「あったね。あの時ノルくんが来てくれなかったら、倒れていたと思う」
「本当は僕が現れず、倒れた方が奴らも理解できたと思うが……君を床に横たえさせるなど、出来るわけがない」
相反する思いから、苦しそうにノルは言う。
「これを耐えきったことにより、貴族の間で疑念が浮かんだ。もしかしたら異邦者は、毒が効かないのではないかと」
以前のぬいであったら、その通りである。だが今はアルコール類はもちろん、毒も有効である。
「貴族に異邦者が加わることなど、ここ数百年なかったことだ。彼らは信徒であっても神官ではない。異邦者を極端に敬うべからず。それは神ではない。最早ただの人間だという、教えの根本は知っているが。理解が全く足りていないんだ」
「隙がなさすぎるってのも、問題だったんだね。なるほど……」
表情が顔に出てしまうという弱点を抱えたノルは、逆に溺愛と言う一点だけを表に出すことにより、絶妙な立ち位置に着くことができた。
「もう少し今後の対応を考えないとだめだね」
「その通りだ。君は人気が出すぎたせいで、ひがまれてもいる」
すねるような、嫉妬心を含んだ声で言われると背中を離される。お腹に手を添えられると引き寄せられ、背面から抱きしめられた。
「ノルくん、この態勢好きだよね」
しかし返事は返ってこない。回された腕にさらに力を入れられる。
「ちょっと、ノルくん?」
「最後に一つ、個人的に大きな不満を抱いている。ヒントは今の君の発言だ」
「今って、ただ名前を……名前?」
呼び方を変えて欲しいと言われたことを思い出す。
「ノルベルト?」
締め付けてくる腕は外されたが、代わりに両頬をつままれ引っ張られた。どうやら不正解だったらしい。
「いたっ、いたいって」
ぬいにとってたいした痛みではないが、文句を言うとすぐにやめてくれた。
「いいか?僕は君を手にしたいと思った時から、そのままの名で呼んでいる。それに対して君はどうだ?」
「ノルくんは、ノルくんだよね」
再び頬に手を当てられ、ぬいは待ったをかける。
「ヒント!」
「僕の母が、僕のことをどう呼んでいたか覚えているか?」
「あ……う、うん。覚えて……そ、そっかあ」
急にどもりながら言い始める。その様子を不思議に思ったのか、ノルはぬいを軽く持ち上げると横抱きに変えた。目に入れたぬいはかつてないほど顔が赤くなっている。目が合うと、さらに恥じらいを見せる。
「そのさ、わたし……今まで人を呼び捨てで呼んだことって、ほとんどないんだよね」
そう呼んでいた存在は弟のみである。しかし今はその彼の名を思い出すことはない。
「嘘つけ。教皇さまのことは名で呼んでいるだろう」
嫉妬心を含んだ目でノルはにらんでくる。しかしすぐにハッと目を見開くと抑え込み、落ち着くために聖句を唱えた。
「あ、あれは。なんだろう……個体名って感じで、教皇って呼んで欲しそうじゃなかったし、本人が望んでいたから。含みはなくて、言われる今まで失念していたよ」
「だったら、そう望む。ヌイにとっての唯一は、僕だけだ」
頬に手を当てられると、強制的に上を向かされ目を合わせられる。
「うっ、わ、わかった……よ。ノ……ううう。ごめん、急には恥ずかしくて無理だよ」
口を開けては閉じを繰り返すぬいを見て、ノルは悪そうな笑みを浮かべた。
「今日の所はここまでで勘弁しておこう」
なにもしないことを示すためか、ノルは両腕を上げる。解放されたぬいは不安定なベッドの上で立ち上がろうとするが、足がもつれてそのまま倒れ込んでしまった。
柔らかい素材で作られているおかげで痛みはなく、何度か跳ね返るように体がバウンドする。確実にケガをすることはないとはいえ、なにも動かないノルのことを不思議に思い、ぬいはうつぶせのまま振り向いた。
「え?っと……ノ、その、どうしたの?」
なぜかノルはぬいの上へ馬乗りになっていた。未だに悪そうな笑みを保ち、むき出しの肩を掴んでくる。
「今の状態では手は出さないし、話し合いだって、言ってたよね?」
「何度か蓄積したあとならば控えたが、まだ許容範囲内で、睡眠と御業で回復している。それに話し合いはもう終わった」
「ここ、お家じゃないよ?」
「今更なにを言う。家以外でも……」
「うう、言わなくていいって。わかってるよ。そう意味じゃないんだよ!」
ぬいが恥ずかし気に言うと、ノルはニヤニヤと笑いながら背中に手を滑らしてきた。
「この部屋は体調不良の者だけではなく、恋人同士の逢瀬にも使われる。僕たちは夫婦だ、懸念することはなにもない」
「ちょっと待ってって。ねえ、色々あるよね……?」
「それでもと言うなら、僕のことを望んだ呼び方で呼ぶんだな」
もちろんぬいがすぐに言えるわけがない。次の日どころか、しばらくスヴァトプルク夫人が社交場に姿を現すことはなかった。
「正解だ」
ノルは伸ばした手をひっこめた。
「食事を取りに行くとき、周りに見られないよう御業で解毒するのは一般的な方法だ。君もそれを知っていただろう?」
「うん、知ってた。ノルくんもそれをわかって、嫌そうにわたしに頼んでくれもんね」
ノルがぬいを使い走るようなまねはしない。いつも自分でやってしまうか、逆に世話される始末である。
「あまつさえ僕の分まで身を張るなど……もっと自分の身を大事にしてくれ。さらに具合が悪そうになって帰ってきたとき、君をどうにかしてやろうかと思った」
矛盾したことを言い放つ。悪そうな表情を浮かべるが、もちろん以前のような嘲りはない。どういった意味を含んでいるのか、理解したぬいは顔を赤らめる。
顔を逸らすことなど、許されるわけもなく、頬に手を当てられる。そのままノルの顔が近づき、反射でぬいは目を閉じた。しかし、いくら待ってもなにもされない。おそるおそる見開くと、目の前にノルの顔が迫っていた。どこかしまりのない表情で、まっすぐに見つめている。
「っふ、急に目を閉じてどうした?僕になにかされるかと思ったのか?」
「その返しは意地悪だと思うんだけど」
頬を膨らませると、それをおさえるためか柔らかく押してくる。さらに不満が募ったぬいは拘束された両手を使って、ノルの手を掴んで引き下ろす。そして残り僅かだった距離を縮めると、唇を押し付ける。それだけではなく、いつもノルがするように角度を変えてみる。
「やめてくれ」
肩を掴むと引きはがされた。ぬいよりも頬が赤く、息が上下している。
「こうされると思ったんだよ。悪い?」
ノルの真似をして言ってみると、掴まれた肩に力を入れられた。
「悪い。誘惑するなと、さっき言っただろう」
「いたずらするノルくんが悪いんだよ?」
たしなめるように言うと、ノルはなにも言い返せなくなったのか言葉に詰まる。肩から手を離すと、背中を向けた。
「ああ、確かにそうだな。もう無理だ。これ以上なにかされたら、君を押し倒してしまいそうだ」
丸々背中を見たぬいは同じように背を向けると、もたれかかった。その瞬間ノルの体がびくりと震えるのが分かり、小さく笑みをこぼす。
「っく、まだだめだ……はぁ、家から出ない生活を送りたい」
引きこもり発言を受け、ぬいは背中をぐりぐりと押し付けた。
「それはもう送ったよね?結婚したあと……その、うー……えっと、もうそろそろお家に帰ろうか。これだけ時間が空いちゃったから、今更戻れないし」
新婚後のことを思い出し、ぬいは照れ隠しから誤魔化そうとする。もしノルがその表情を見ていたら、ただでは済まなかっただろう。幸いなことに今は背中合わせの状態である。
「だめだ、話が終わっていない。ヌイ、君は自分の食事を一気に運んで手元に置いた。なにが悪かったかわかるか?」
ぬい自身に言わせる方針はどうやらやめたらしい。
「取りに行くとき、御業を使って解毒しに行けないからだよね?」
「不正解だ」
バッサリとノルに言い切られる。ぬいは少し考えるが、見当もつかなかった。
「本当はもっと助けられたらよかったが……君の対応はそつなく、あまりにも完璧すぎた。よく僕のことをほめるが、ヌイの方こそなんでもできると思う」
「それは違うよ!偶々ノルくんが不得意なところが、できただけってあって」
「は?なにを言っている。君の方こそ……いや、今回の対応だけであって、確かに完璧ではないな」
ノルは自分の失言に気づいたのか、申し訳なさそうに言う。
「うん、そうだね。ノルくんも。すぐに顔に出ちゃうところとか、貴族の人たちは嫌そうにするけど。わたしにとっては、好きなところだし」
「っく……ヌイ。だから……」
何度か深呼吸する音が聞こえると最後に息を吐く。
「あくまで貴族たちにとっては、非の打ち所がないように見えた。だから余裕と思われ強い毒を盛られた。そのことに覚えはあるか?」
通常仕込まれる毒は、焼け付ような痛みが主流である。即倒れてしまうような、わかりやすい毒を仕込む真似はしない。どの者たちも、相手を殺したいのではなく、苦しめたいだけだからだ。
「あったね。あの時ノルくんが来てくれなかったら、倒れていたと思う」
「本当は僕が現れず、倒れた方が奴らも理解できたと思うが……君を床に横たえさせるなど、出来るわけがない」
相反する思いから、苦しそうにノルは言う。
「これを耐えきったことにより、貴族の間で疑念が浮かんだ。もしかしたら異邦者は、毒が効かないのではないかと」
以前のぬいであったら、その通りである。だが今はアルコール類はもちろん、毒も有効である。
「貴族に異邦者が加わることなど、ここ数百年なかったことだ。彼らは信徒であっても神官ではない。異邦者を極端に敬うべからず。それは神ではない。最早ただの人間だという、教えの根本は知っているが。理解が全く足りていないんだ」
「隙がなさすぎるってのも、問題だったんだね。なるほど……」
表情が顔に出てしまうという弱点を抱えたノルは、逆に溺愛と言う一点だけを表に出すことにより、絶妙な立ち位置に着くことができた。
「もう少し今後の対応を考えないとだめだね」
「その通りだ。君は人気が出すぎたせいで、ひがまれてもいる」
すねるような、嫉妬心を含んだ声で言われると背中を離される。お腹に手を添えられると引き寄せられ、背面から抱きしめられた。
「ノルくん、この態勢好きだよね」
しかし返事は返ってこない。回された腕にさらに力を入れられる。
「ちょっと、ノルくん?」
「最後に一つ、個人的に大きな不満を抱いている。ヒントは今の君の発言だ」
「今って、ただ名前を……名前?」
呼び方を変えて欲しいと言われたことを思い出す。
「ノルベルト?」
締め付けてくる腕は外されたが、代わりに両頬をつままれ引っ張られた。どうやら不正解だったらしい。
「いたっ、いたいって」
ぬいにとってたいした痛みではないが、文句を言うとすぐにやめてくれた。
「いいか?僕は君を手にしたいと思った時から、そのままの名で呼んでいる。それに対して君はどうだ?」
「ノルくんは、ノルくんだよね」
再び頬に手を当てられ、ぬいは待ったをかける。
「ヒント!」
「僕の母が、僕のことをどう呼んでいたか覚えているか?」
「あ……う、うん。覚えて……そ、そっかあ」
急にどもりながら言い始める。その様子を不思議に思ったのか、ノルはぬいを軽く持ち上げると横抱きに変えた。目に入れたぬいはかつてないほど顔が赤くなっている。目が合うと、さらに恥じらいを見せる。
「そのさ、わたし……今まで人を呼び捨てで呼んだことって、ほとんどないんだよね」
そう呼んでいた存在は弟のみである。しかし今はその彼の名を思い出すことはない。
「嘘つけ。教皇さまのことは名で呼んでいるだろう」
嫉妬心を含んだ目でノルはにらんでくる。しかしすぐにハッと目を見開くと抑え込み、落ち着くために聖句を唱えた。
「あ、あれは。なんだろう……個体名って感じで、教皇って呼んで欲しそうじゃなかったし、本人が望んでいたから。含みはなくて、言われる今まで失念していたよ」
「だったら、そう望む。ヌイにとっての唯一は、僕だけだ」
頬に手を当てられると、強制的に上を向かされ目を合わせられる。
「うっ、わ、わかった……よ。ノ……ううう。ごめん、急には恥ずかしくて無理だよ」
口を開けては閉じを繰り返すぬいを見て、ノルは悪そうな笑みを浮かべた。
「今日の所はここまでで勘弁しておこう」
なにもしないことを示すためか、ノルは両腕を上げる。解放されたぬいは不安定なベッドの上で立ち上がろうとするが、足がもつれてそのまま倒れ込んでしまった。
柔らかい素材で作られているおかげで痛みはなく、何度か跳ね返るように体がバウンドする。確実にケガをすることはないとはいえ、なにも動かないノルのことを不思議に思い、ぬいはうつぶせのまま振り向いた。
「え?っと……ノ、その、どうしたの?」
なぜかノルはぬいの上へ馬乗りになっていた。未だに悪そうな笑みを保ち、むき出しの肩を掴んでくる。
「今の状態では手は出さないし、話し合いだって、言ってたよね?」
「何度か蓄積したあとならば控えたが、まだ許容範囲内で、睡眠と御業で回復している。それに話し合いはもう終わった」
「ここ、お家じゃないよ?」
「今更なにを言う。家以外でも……」
「うう、言わなくていいって。わかってるよ。そう意味じゃないんだよ!」
ぬいが恥ずかし気に言うと、ノルはニヤニヤと笑いながら背中に手を滑らしてきた。
「この部屋は体調不良の者だけではなく、恋人同士の逢瀬にも使われる。僕たちは夫婦だ、懸念することはなにもない」
「ちょっと待ってって。ねえ、色々あるよね……?」
「それでもと言うなら、僕のことを望んだ呼び方で呼ぶんだな」
もちろんぬいがすぐに言えるわけがない。次の日どころか、しばらくスヴァトプルク夫人が社交場に姿を現すことはなかった。
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