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消えない後悔
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目の前におまかせブレンドの珈琲が運ばれてきた。
その香りは奇妙な出会に笑う二人を優しく包み込んだ。
珈琲を一口、苦味が強く、けれど優しいフルーティーなかおりを感じた。
なんだろう、力強い香りなのに優しいフルーティーな香りもある。
主張と謙遜がまじったような不思議な味は私達の奇妙な出会いを表しているようだった。
先程の笑顔とは打って変わって思いつめた表情になった。
「実は藤宮先生には謝らなければならない事があるんです」
「母に?」
「はい、僕がピアニストとして活躍できたのは先生の指導のおかげなんです。
なのに僕はなんの予告もなく舞台を降りた。
本当なら先生に一言相談するのが筋だとは思ってました、けれど相談する勇気がなかった。
きっとショックを受け、失望させるだろうと思い、僕はそんな先生に顔を合わせる勇気がなかった。
今思えば本当に申し訳ない事をしたと後悔しているんだ」
凛音はそんな湊音に優しく言った。
「だったら、一緒に母に会いに行きますか?
私達が出会ったのはあなたを後悔から救うためだったのかも知れませんよ。
この機会に湊音さんの気持ちを正直に伝えてみてはどうでしょうか?」
湊音は少しだけ悩んだが決意した表情で
「ありがとう、謝りに行きたい」
と言った。
その様子をみた凛音はほっとした、これで湊音さんの気持が少しでも晴れてくれたらと思った。
その香りは奇妙な出会に笑う二人を優しく包み込んだ。
珈琲を一口、苦味が強く、けれど優しいフルーティーなかおりを感じた。
なんだろう、力強い香りなのに優しいフルーティーな香りもある。
主張と謙遜がまじったような不思議な味は私達の奇妙な出会いを表しているようだった。
先程の笑顔とは打って変わって思いつめた表情になった。
「実は藤宮先生には謝らなければならない事があるんです」
「母に?」
「はい、僕がピアニストとして活躍できたのは先生の指導のおかげなんです。
なのに僕はなんの予告もなく舞台を降りた。
本当なら先生に一言相談するのが筋だとは思ってました、けれど相談する勇気がなかった。
きっとショックを受け、失望させるだろうと思い、僕はそんな先生に顔を合わせる勇気がなかった。
今思えば本当に申し訳ない事をしたと後悔しているんだ」
凛音はそんな湊音に優しく言った。
「だったら、一緒に母に会いに行きますか?
私達が出会ったのはあなたを後悔から救うためだったのかも知れませんよ。
この機会に湊音さんの気持ちを正直に伝えてみてはどうでしょうか?」
湊音は少しだけ悩んだが決意した表情で
「ありがとう、謝りに行きたい」
と言った。
その様子をみた凛音はほっとした、これで湊音さんの気持が少しでも晴れてくれたらと思った。
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