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レモネード

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夏のアメリカの風物詩と言えば路上でレモネードを売る子供達だろう。
今年も子供たちは暑い中汗を垂らしながら健気にレモネードを売っている。
俺にとって今年の夏は特別だ、なんてたって俺の子供が初のレモネード売りに参加するからだ。
この時のために子供と一緒に美味しいレモネードの作り方を研究してきた。
砂糖とレモンの果汁の比率や、熱中症対策として少々の塩を入れてみたり、とにかくカフェのメニューに並んでいてもおかしくないくらいのクオリティだ。
「よ~し、いっぱい売っておもちゃを買うんだ!」
息子が目を輝かせながら露店を始めた。
うちの息子も成長したもんだと俺は半泣きになりがら家の窓から息子の露店を見守っていた。
4時間後、息子は泣きながら帰ってきた。
結果としてひとつも売れなかったのである。
目の前のレモネードの露店に行列ができ、うちの息子のレモネード屋には一人として寄り付かなかった。
悔しかった、息子の泣く姿を見て殺意すら覚えた。
うちの息子はまだ幼い、こんな仕打ちを受けていいはずがない、俺は向かいのレモネードの露店に文句を言いに行くことにした。
次の日
息子を家に残し外に出る。
相変わらず行列ができている、その行列の中には見知った顔も幾つかある、ここら辺一体に住んでいる人達がみんな買いに来ていたのだ。
「なんでだよ、お前らも去年の夏は自分の子供のレモネード屋を見守っていただろ...」
何をしてるんだこいつらは、自分の子供のレモネードよりここのレモネードの方がいいってか?
イライラしながら行列に並び、やっと店主とご対面できた。
よし、一発文句を言ってやろう。
「おい!おま...え...」
店主は人間と言うよりバケモノのようなやつだった、おそらく子供であろう膝くらいの身長で、夏にもかかわらずかなり厚着をしており、体のクビレが見えず、首から下は樽のような見た目になっている、顔も青白く、あまりにも醜い、生ゴミのような酷い体臭が辺りに漂い、とてもここで飲み物を売っているとは思えない。
俺は言葉を失い、ただ口をパクパクさせることしか出来なかった。
店主は淡々とコップにレモネードを注ぎ、こちらに差し出しくる。
「あ、ありがとう...」
厚着の服から伸びるあまりにも細い腕からレモネードを受け取る。
「なんだったんだアイツは、あんなのがやってる店がどうしてこんなに人気なんだ」
それを確かめるにはこれを飲むしかない、あの店主のせいで、心の底から飲みたくないが意を決してレモネードを口にする。


今日お父さんがイライラしながら外に出かけた、きっと昨日僕のレモネードがひとつも売れなかったから、向かいのレモネード屋さんに文句を言いに行ったのだろう。
そんな事しなくてもいいのに、お父さんはいつもそうだ。
自分のことよりも僕のことを気にかける、僕のためならなんだってするし、いつも僕に対して愛を惜しまない。
そんなお父さんは大好きだが、今回はちょっとやり過ぎな気がする、帰ってきたら僕のレモネードをあげて落ち着いてもらおう。

ガチャ
あっ、帰ってきた!
「おとうさーん!おかえり、はい、レモネード!お父さんが出かけている間に作ったんだ!」
お父さんは僕のレモネードを手に取り震える、そんなに嬉しいのかな?えへへ。
「こんなものレモネードじゃない!お前のレモネードはゴミ以下だ!!二度とレモネードなど作るんじゃない!分かったか!!」

そう言うと、お父さんは僕の頭に僕が作ったゴミ以下のレモネードをかけた。
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