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森での思い出

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子供の頃の話なんだが、俺はおばあちゃんの家が大好きだった。
別におばあちゃんが好きな訳ではなく、おばあちゃんの家の近くにある、鬱蒼とした森を探検するのが好きだった。
おばあちゃんからはあそこは一度入ったら戻れなくなると言い聞かせられたが、それは俺の冒険心を焚きつけただけであり、むしろ俺を森に誘うことになってしまっていた。
俺の家は東京にあり、自然などほとんどない、あったとしても人の手によって作られたかりそめの自然だ。
初めて入る森はそんな自然を知らない俺を大いに楽しましてくれた。
見たことない虫や鳥、木は太く長く、葉が生い茂り、太陽の光が入ってこない。
いつもは人工物と人に囲まれ生活している俺は、木々と動物たちに囲まれていた。
おばあちゃんは一度入ったら戻れなくなる、そう言っていたが、俺は毎日のように森に入り、晩御飯までには帰ってきていた。
所詮子供を騙すための作り話だ、真に受ける必要なんてない。
そう思っていた。
何度も森に入り、森にも慣れてきた頃、俺は不思議な場所に迷い込んでしまった。
木の葉が他とは違い異常に天を覆っており、昼間にもかかわらず夜のように暗い、辺りはジメジメとしており、そこにいるだけでも気分が悪くなる。
気持ち悪い、こんな所さっさと出てしまおう。
そう思いながら森を歩いていると、大型の生物に遭遇した。
いや、生物というべきか、人物というべきか。
それは裸の男性で、頬にリスのようにパンパンにドングリや木の実を詰めていた。
頬は顔と同じくらいの大きさをしており、木の枝の上からこちらを見開いた目で見ていた。
あまりの衝撃の光景にどうしていいかわらず、動くことも助けを呼ぶことも出来なくなっていた俺は、そいつとしばらく睨み合いを続けていた。
しばらくして、そいつは木を登りどこかに消えていった。
多分俺は見てはいけないものを見た。
そう思った俺は早急にこの森から脱出する事にした。
だがゆけどもゆけども辺りは暗くなっていき、湿気が上がっていく。
体から汗が異常に吹き出し、太った人間型の蚊が体にむらがってくる。
リス人間や蚊人間以外にも俺は様々な人間に出くわした。
手足が無く、胴体が異常に長い女性が地面を這っていたのである、それを見つけた俺は急いで木の後ろに隠れた。
女はニョロニョロと細長い舌を出し入れし、辺りをくねくねと徘徊する。
と、そこに先程のリス人間が現れた。
リス人間は落ちている木の実を必死に頬に詰め込んでおり、周りの事など見えてはいない。
そんなリス人間を、女は見逃すはずはなかった。
長いからだでリス人間に絡みつき、バキバキと骨を折る、悶え苦しむリス人間、既に瀕死に見える。
バカっと大きな口を開け、女はリス人間を丸呑みにしてしまった。
目の前で行われる人間による食物連鎖を目の当たりにし、恐怖で震えた、あの時の恐怖は今でも忘れられない。
そんな森の中をしばらく歩き続け、俺は森の最深部にまで来てしまった。
五分も経つと全身びしょびしょになってしまうほどの湿気の中、今までに見た事ないほど大きな木がそびえ立つ。
木の枝にはリス人間や黒い翼を持ちカーカーと鳴くカラス人間、地面にはカサカサと高速で動くゴキブリ人間もいた。
きっともうこの森から出ることは出来ない、そう絶望していると突然人間の声がした。
「君はここの生き物カ?それとも外の生き物カ?」
声のするほうを見ると、女のカラス人間が喋りかけてきていた、他のカラス人間とは違い、目に人間としての意志を感じられる。
「お、俺!気づいたらここに迷い込んじゃって!出ようと思っても出れなくて、それで...」
「そうカ、君はまだ若い、そういうことなら助けてやろうカ?」
「本当ですか!?やったー!!」
そう言うとカラス人間は俺の事を足でひょいと掴みあげ、空高くへと飛んだ。
カラス人間は伝えてもいないのにおばあちゃんの家まで直行し、家の前でおろしてくれた。
「お前はまだ子供だったからあの森の一員にはならなかった、大人になってからまた来たら、どうなるかわかるカ?」
カラス特有の鋭い目つきで迫られる。
「は、はい!もう二度と近づきません!約束します!」
そう言うと目は人間の目付きに戻り、ゆうゆうと森へと飛び去って行った。

それからというもの、あの森には近づいていない。
だが、今もあの森は存在している。
もし森に行くことがあるのなら、気をつけて貰いたい。もしかしたらあなたも、森の一員になってしまうかもしれないから...
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