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のり
しおりを挟む誰しも大好物の一つや二つあると思う。
一般的なのはいちごやステーキ等だろう。
もちろん俺にも大好物がある訳だが、俺はそれを決して人には言わない。
口にすると必ずドン引かれるからだ。
単刀直入に言うと俺の好物はのりだ、あぁそうだ、おにぎりを包んでいる海苔ではなく文房具の方ののりだ。
初めてのりを口にしたのはまだ俺がまだ幼稚園に通っていた時の頃だ。
折り紙をビリビリに破り、それをのりで貼って作品を作るというありきたりな授業中に俺はふと思ってしまったのだ。
「あれ?なんかこれ美味そうじゃね?」
まずその発想がおかしいとは思うが、子供の考えることだ、深く考えるのはナンセンスだろう。
その時の俺は恐れることを知らないクソガキだったので、のりのチューブに口をつけ、一気に飲み干した。
口中にこれまで食べてきたことの無いケミカルな味が広がる。喉に張り付き上手く呑み込めず、呼吸困難に陥った。
「ちょっと!!なにしてるの!!」
幼稚園の先生が駆けつけ救急車を呼ぶ、周りは大騒ぎになり俺は病院に運ばれた。
命に別状はなかったが、親や先生からこっぴどく叱られた。
だが、俺はやめようとはしなかった。
のりの魅力にすっかり取り憑かれてしまったからだ。
毎晩親が寝静まった後、こっそりとのりを飲み続けた。
一人暮らしが決まった時はそれはもう大喜びした、親の目を気にせずのりを飲みまくれるのだ、俺ののり好きはますます加速していった。
一人暮らしになってからというもの、食事は全食のりになった、一日で50本以上ののりを飲み干した。
そんな生活が1ヶ月続いた辺りから、体に異変が現れ始めた。
唾液や汗が粘着性を持ち始めたのだ。口の中はネバネバで、いくら歯磨きをしてもそのネバネバは落ちることがなかった。
汗も同様にネバネバだ、少しでも汗をかいてしまうと服が皮膚にくっついてしまう。
無理やり引き剥がそうとすると服が破れ、使い物にならなくなってしまう。
日常生活に支障をきたしているのにもかかわらず、俺はのりを飲むのを今日まで辞めることは無かった。
「はぁ、腹が減った、まだのり残ってたっけな?」
汗で足の裏がネバネバしているので、ぐちゃぐちゃと音を立てながらのりを探す。
「お、まだ開けてないダンボールがあるじゃないか」
俺はダンボールをあけ、大量に買っておいたのりを全部飲み干した。
ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ
口の中から溢れるほどののりを飲み込もうとするが、のりが逆流してしまい、鼻から鼻水と混じり合い溢れ出す。
「ふぅ、今日は少し食べすぎたな」
食べるのに必死だったので身体中汗まみれだ、これほど汗を書いてしまったら服を脱ぐときに必ず破れてしまう、この服を着ることはもうないだろう。
「また服を買わないとなぁ、嫌だなぁ、試着無しで服を買うのはリスキーなんだよ」
ブツブツ言いながら布団に入る。
「ぐぅーぐぅー」
寝ている間にも汗やヨダレは出てくるものだ、それらは布団に染み込み、浸透していく。
それに加え季節は夏だ、朝になる頃には相当量の汗をかく。
「ふぁー、もう朝かよぉ、ん?」
いつも通り眠たい目を擦ろうとするが、体が動かない。
「え?え?なんだなんだ?」
ビクともしない体を動かそうと必死に力を入れるが、動く気配など一切ない。
「あぁ、分かった、のりだ、のりのせいだな」
彼の予想は当たっていた、寝ている間に出た汗が布団に浸透し、布団ごと地面に強く固定されてしまったのだ。
「まぁ、のりとしての役割としては正しいことをしているよな」
なんて軽口をたたいているが、状況は絶望的だ。
「あーあ、どうすんだよ、これ」
ピッタリと張り付いた体で思考をめぐらす。
「.....もうなんか、どうでもいいや」
彼は全てを諦らめ、のりとして張り付く運命を選んだ。
一般的なのはいちごやステーキ等だろう。
もちろん俺にも大好物がある訳だが、俺はそれを決して人には言わない。
口にすると必ずドン引かれるからだ。
単刀直入に言うと俺の好物はのりだ、あぁそうだ、おにぎりを包んでいる海苔ではなく文房具の方ののりだ。
初めてのりを口にしたのはまだ俺がまだ幼稚園に通っていた時の頃だ。
折り紙をビリビリに破り、それをのりで貼って作品を作るというありきたりな授業中に俺はふと思ってしまったのだ。
「あれ?なんかこれ美味そうじゃね?」
まずその発想がおかしいとは思うが、子供の考えることだ、深く考えるのはナンセンスだろう。
その時の俺は恐れることを知らないクソガキだったので、のりのチューブに口をつけ、一気に飲み干した。
口中にこれまで食べてきたことの無いケミカルな味が広がる。喉に張り付き上手く呑み込めず、呼吸困難に陥った。
「ちょっと!!なにしてるの!!」
幼稚園の先生が駆けつけ救急車を呼ぶ、周りは大騒ぎになり俺は病院に運ばれた。
命に別状はなかったが、親や先生からこっぴどく叱られた。
だが、俺はやめようとはしなかった。
のりの魅力にすっかり取り憑かれてしまったからだ。
毎晩親が寝静まった後、こっそりとのりを飲み続けた。
一人暮らしが決まった時はそれはもう大喜びした、親の目を気にせずのりを飲みまくれるのだ、俺ののり好きはますます加速していった。
一人暮らしになってからというもの、食事は全食のりになった、一日で50本以上ののりを飲み干した。
そんな生活が1ヶ月続いた辺りから、体に異変が現れ始めた。
唾液や汗が粘着性を持ち始めたのだ。口の中はネバネバで、いくら歯磨きをしてもそのネバネバは落ちることがなかった。
汗も同様にネバネバだ、少しでも汗をかいてしまうと服が皮膚にくっついてしまう。
無理やり引き剥がそうとすると服が破れ、使い物にならなくなってしまう。
日常生活に支障をきたしているのにもかかわらず、俺はのりを飲むのを今日まで辞めることは無かった。
「はぁ、腹が減った、まだのり残ってたっけな?」
汗で足の裏がネバネバしているので、ぐちゃぐちゃと音を立てながらのりを探す。
「お、まだ開けてないダンボールがあるじゃないか」
俺はダンボールをあけ、大量に買っておいたのりを全部飲み干した。
ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ
口の中から溢れるほどののりを飲み込もうとするが、のりが逆流してしまい、鼻から鼻水と混じり合い溢れ出す。
「ふぅ、今日は少し食べすぎたな」
食べるのに必死だったので身体中汗まみれだ、これほど汗を書いてしまったら服を脱ぐときに必ず破れてしまう、この服を着ることはもうないだろう。
「また服を買わないとなぁ、嫌だなぁ、試着無しで服を買うのはリスキーなんだよ」
ブツブツ言いながら布団に入る。
「ぐぅーぐぅー」
寝ている間にも汗やヨダレは出てくるものだ、それらは布団に染み込み、浸透していく。
それに加え季節は夏だ、朝になる頃には相当量の汗をかく。
「ふぁー、もう朝かよぉ、ん?」
いつも通り眠たい目を擦ろうとするが、体が動かない。
「え?え?なんだなんだ?」
ビクともしない体を動かそうと必死に力を入れるが、動く気配など一切ない。
「あぁ、分かった、のりだ、のりのせいだな」
彼の予想は当たっていた、寝ている間に出た汗が布団に浸透し、布団ごと地面に強く固定されてしまったのだ。
「まぁ、のりとしての役割としては正しいことをしているよな」
なんて軽口をたたいているが、状況は絶望的だ。
「あーあ、どうすんだよ、これ」
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「.....もうなんか、どうでもいいや」
彼は全てを諦らめ、のりとして張り付く運命を選んだ。
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