三分で読める一話完結型ショートホラー小説

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夢に見た出産

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待ちに待った日がやってきた。
今日、私のお腹の中から赤ちゃんが生まれるのだ。
お腹の中の赤ちゃんに愛着が湧きすぎて、産まれる前から泣きそうだ、約10ヶ月も同じ体で生活してきたのだ、愛着がわかない方がおかしい。
もしこの子が男の子だったらどう育てよう?もしこの子が女の子だったらどう育てよう?
考えるだけでも幸せな気持ちになる。
「はーい、それでは分娩室に行きますよー」
妄想に浸っている私に看護師さんがいう。
分娩室、この言葉を聞くと赤ちゃんを今から産むのだという実感が湧いてくる。
私は分娩室へと看護師さん達に運ばれ、分娩台に固定される。
「はい、それじぁ力んでください」
グッと力を込める。
「い、痛い...痛いよぉ...」
この世のものとは思えない痛みだ。
聖書ではイブ(女)への罰として出産の痛みが与えられたと書いてあるが、さすが神のすることだ、相当に痛い。
あまりの痛みに失神しそうになる、そんな地獄のような時間がとても長く続いた。
「頑張ってください!!頭が見えて来ましたよ!!」
そう言われた私は残された最後の力を振り絞って力む、早く赤ちゃんに会いたい、頭の中はそれしか考えられなかった。
「頑張って!!頑張って!!」
「んんん!!!んんん!!うぐぅぅぅ!!」

おぎゃー、おぎゃー

分娩室に産声が響く。
あぁ、産まれた、私の赤ちゃんが。
気絶しかけていた意識が冴え、涙で前が見えなくなる。
「お、おめでとうございます...」
感動する私とは裏腹に、看護師や医師の顔は血の気が引いている。
「え?どうかしましたか?」
「い、いえ、なんでもありません。おつかれでしょう、部屋で休んでいてください...」
そう言うと赤ちゃんは看護師によってどこかの部屋に連れていかれてしまった。
訝しむ私をいそいそと部屋に連れ戻す。
「なによ、赤ちゃんの顔くらい見せてくれてもいいじゃない」
部屋に戻され、ベットに寝かせられた私はこの病院の対応の悪さに苛立っていた。
「キャーーーーーーー!!!!」
どれほど待たされただろうか、突然甲高い悲鳴が聞こえてきた。
「なに!?何が起こったの!?」
突然のことに戸惑う。
「うぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「いやぁぁぁぁ!!!!」
「やめて!!死にたくないぃぃぃ!!!!」
あちこちから悲鳴が聞こえてくる。
私は怖くなり、布団に包まりガタガタと震えることしか出来なかった。
「...........」
最初の悲鳴からしばらくたち、病院の中は怖いくらいに静かになった。
キィィ
私の部屋の扉が開く音がする。
ズリ、ズリ、ズリ、ズリ
何かがゆっくりとこちらに近づいてくる。
怖い怖い怖い怖い、私はきっと殺される。
せめて、せめて赤ちゃんの顔だけは見たかった...。
まだ見ぬ愛しの赤ちゃんの無事を祈りながら私は死を覚悟した。
「ママァ...ママァ...」
「えっ?ママ?」
驚きベットの下を見る。
「ママァ...ママァ...」
そこには血だらけの赤ん坊がいた。
赤ん坊にも関わらず眼が見開かれており、歯も綺麗に生え揃っている。
爪は異様に鋭く伸びており、くちゃくちゃと肉片を食べていた。
「ママァ...ママァ...」
「マ、ママ?私が?あなたの?」
赤ん坊がベットの側面をジリジリと登ってくる。
顔は微笑んでおり、狂気すら感じる。
「ママァ...ママァ...」
「い、いや、いやぁぁぁぁ!!!!」

どうやら私は、悪魔の子を産んでしまったらしい。
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