三分で読める一話完結型ショートホラー小説

ROOM

文字の大きさ
上 下
58 / 106

女神の木

しおりを挟む
「はぁ、はぁ、いつになったらこのジャングルを抜けれるんだ...」
俺は今、ジャングルで遭難している。
ジャングルの奥に地図には載っていない場所があるという情報が入り、俺たちテレビの取材チームはそこに向かったのだが、途中で野生のオオカミに襲われ、チームはバラバラになってしまった。
「おーーい!!俺はここだぁぁぁぁぁ!!!!」
「......」
大声で叫んでみるが返事がない、聞こえるのは鳥と虫の鳴き声だけだ。
「くそ!早くここを抜けないと夜になるぞ...」
こんな大自然の中夜になられたらそれこそ生き残れない、きっと姿も見えないうちに猛獣に殺されるだろう。
「とにかく歩き続けよう」
こういう場所では方向感覚が容易に狂う、同じ場所をグルグルと回り続けないように気をつけて進む。
どれほど歩いただろうか、草が生い茂るジャングルを切り開きながら歩いていると、突然開けた場所に出た。
「な、んだ...ここは?」
地面は肌色でブヨブヨとしている、空もうすらピンクで生々しい。
そんな中、何よりも俺の目を奪ったのは木だった。
いや、木というのは間違いかもしれない。
それはいくつもの人間の体のパーツでできていた。
腕や胴体や頭がギュウギュウになって、木の形を模している。
そんなグロテスクな木が辺りにポツポツと生えていた。
木に近づいてみる、触感はそのまま人間のものだ、おそらくまだ若いであろうピチピチの肌もあれば80は過ぎているであろうヨボヨボの肌もある。
表面に顔がいくつか出ており、会話は成り立たないが呼吸はしていた。
ナイフで少し切ってみると、木全体が少し揺れ、血が流れてきた。
この木はどうやら生きているらしい。
俺はこの狂った地帯の奥の方へと進んで行った。
奥に行けば行くほど空の色はピンクになる、まるで女の乳頭のようだ。
1時間ほど歩くと丘を発見した、丘の周りには木は生えておらず、唯一生えている木は丘の頂上の木のみである。
丘をのぼり木を確かめてみて驚いた。
「女だ、この木は女のパーツだけで出来ている...」
この地域一帯を見渡せるこの丘の頂上に、若い女のパーツのみで構成された女神の木が生えていた。
表面は乳房とそれを恥ずかしげに隠す手で覆われており、木の根元には膣があった。
神秘的だった、俺は一瞬でその木の魅力に支配されてしまった。
「なんて美しいんだ...、これが世界の心理なんだ...」
俺は服を全て脱ぎ、木に抱擁する。
木はヌルヌルと蠢き、表面の顔たちは頬を赤らめる。
俺は精一杯の誠意で優しく愛撫をし、膣にペニスを挿入した。
木の表面の顔達は恍惚の表情を浮かべ、大きく揺らぐ、お互いに愛し合うこの時間がとても幸せだった。
しばらく腰を打ちつけ、俺は絶頂を迎えた。
女神に出す射精は、今までの人生の快楽の中で味わったことの無い特別な快楽であった。
ボコッボコボコッ
余韻に浸っていると、辺りで木が生えはじめた。
その生えたての木を見てみると、どことなく女神と俺の顔に似ている気がした。
「そうか、この木は俺の子供なのだ、女神と俺の大切な子供なのだ」
俺は女神の元に戻り、その温もりのある大きな幹に寄りかかって寝た。
女神の寝息が、優しく俺を包み込む。
「あぁ、ここが、こここそが俺の居場所なのだ 」
元々住んでいた場所の事など、俺はもう忘れていた...。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

【短編】怖い話のけいじばん【体験談】

松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。 スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

処理中です...