51 / 106
体の意志
しおりを挟む
「おい、どこに行くつもりだ、おれはこっちに行きたいんだ」
右足は言う。
「何言ってんのさ、こっちのドーナツ屋を寄って帰るルートが一番いいよ」
左足が言う。
「あぁ、ほんとにめんどくさい事になった」
本体(頭)の俺が言う。
最近俺の体のパーツ達が意志を持ち出した、体のリーダーである頭の俺に対して反抗するようになったし、ストライキを起こすなんてこともしてくる。
一度昼飯に何を食うかで揉めた時は、右足と左足が一致団結して1歩も動くことが出来なかった。
結局左足が食いたいと言ったラーメンを食いに行くことになった。
「なぁ、俺、ムラムラしてきたぜぇ...」
ペニスが言う。
こいつはいつも突然発情する、場所や時間を問わずこうなるので非常に厄介である。
「もう!!レディがいる前でそんな下品な事を言わないで!!」
右手が言う。
こいつはよく分からんが女らしい。
「そうだぞペニス君、そんなんだから君はいつまでたっても童貞なんだ」
左手が俺にまで被害が来る正論を言う。
「おいお前ら!!もうくちゃくちゃだよ!!一回静かにしてくれ!!」
「うわ!!本体が怒った!!」
左足が言う。
「別にいいさ、言わしておけ、本体と言っても俺らが力を貸さなければ何も出来ないんだからな」
右足が言う。
「くっ...」
こいつら、痛いところをついてくる。
今までが意思などを持っていなかったから好き勝手に体のパーツを使えていただけなのだ。
結局俺の意見はひとつも採用されず、左足の提案したドーナツ屋やがある道を通って家へと帰った。
「ねぇ、早く口を開けてよ、ドーナツが入らないわ」
右手がドーナツを持ち口に押し当ててくる。
「これを食ったら晩飯が食えなくなるだろ」
右手を説得する。
「あら、口答えするのかしら?私がいないとペニス君を誰が慰めるのかしら?」
このクソ女が...。
仕方なくドーナツを食う。
「あぁ!味が伝わってくる!!甘くて美味しいわぁ」
「おい、夕食の焼肉もきちんと食べてくれよ、ずっと楽しみにしていたんだからな」
左手が言う。
「えぇ、外食にするのぉ、僕もう歩き疲れたよぉ」
左足が言う。
「なんだと?私に口答えするのか?」
まただ、また始まった。
こいつらはよく喧嘩する、俺の意思など全く無視してお互いに殴る蹴るの大乱闘を繰り広げるので、喧嘩がおさまる頃には俺はいつもアザだらけになっている。
「はぁはぁはぁ、わかった、行くよ」
爪で引っかかれて血が出たことを決め手に勝負は終わった。痛い。
「よーし、寝るぞぉ」
各パーツに言う。
「はぁ、また一人で寝るのかよ、早く女と寝てぇよ」
ペニスが言う。
「あなたが小さすぎるのも女ができない理由の一つよ」
右手が言う。
「グッ、そんなこと言うなよぉ」
やかましくて寝れやしない。
1時間経ってようやく各パーツが眠り始めた、やっと静かになった。
「はぁ、こんな生活もう耐えられない、俺の体なのに体が俺の意思通りに動いてくれない」
その晩は枕を濡らして寝た。
次の日、やけに体が軽かった。
「おーい、電気をつけてくれ」
パーツに呼びかける。
「........」
誰も答えない。
おかしい、いつもならもっと寝ていたいと文句が飛んでくるはずだ。
そんなことを考えているとちょうど朝日が部屋に入り込み、辺りを照らした。
「え?まじかよ...」
鏡を見た俺は衝撃を受けた。
体が本体である頭を残して全て消え去っていたのである。
「ん?なんだこれ?」
枕元に置き手紙があった。
「私たちはあなたの元を離れることにしました。意志を持った私たちにとって、あなたと、そして他のパーツとひとつになって暮らすことはとても窮屈です。
あなたには悪いですが、私達にも個人の意思があるのです。あなたの体のパーツ一同より」
「ははは、ははははは!!!やった!!やったぞ!!これで自由になったんだ!!」
俺は嬉しさのあまり泣いた、流れる涙をぬぐえないのが少しウザかったが、それよりも自由を手に入れれたことが嬉しすぎた。
今の俺は本体残し施設で支援を受けながら生活をしている。
ここには俺と同じように体のパーツに本体を残して消えられたもの達がいる。
頭だけの生活は少々不便ではあるがサポートもあるし、前の生活よりはかなり快適になった。
「あぁ、他の人たちも早く体から自由になればいいのに...」
バルコニーで夕日を眺めながら、俺はそう思った。
右足は言う。
「何言ってんのさ、こっちのドーナツ屋を寄って帰るルートが一番いいよ」
左足が言う。
「あぁ、ほんとにめんどくさい事になった」
本体(頭)の俺が言う。
最近俺の体のパーツ達が意志を持ち出した、体のリーダーである頭の俺に対して反抗するようになったし、ストライキを起こすなんてこともしてくる。
一度昼飯に何を食うかで揉めた時は、右足と左足が一致団結して1歩も動くことが出来なかった。
結局左足が食いたいと言ったラーメンを食いに行くことになった。
「なぁ、俺、ムラムラしてきたぜぇ...」
ペニスが言う。
こいつはいつも突然発情する、場所や時間を問わずこうなるので非常に厄介である。
「もう!!レディがいる前でそんな下品な事を言わないで!!」
右手が言う。
こいつはよく分からんが女らしい。
「そうだぞペニス君、そんなんだから君はいつまでたっても童貞なんだ」
左手が俺にまで被害が来る正論を言う。
「おいお前ら!!もうくちゃくちゃだよ!!一回静かにしてくれ!!」
「うわ!!本体が怒った!!」
左足が言う。
「別にいいさ、言わしておけ、本体と言っても俺らが力を貸さなければ何も出来ないんだからな」
右足が言う。
「くっ...」
こいつら、痛いところをついてくる。
今までが意思などを持っていなかったから好き勝手に体のパーツを使えていただけなのだ。
結局俺の意見はひとつも採用されず、左足の提案したドーナツ屋やがある道を通って家へと帰った。
「ねぇ、早く口を開けてよ、ドーナツが入らないわ」
右手がドーナツを持ち口に押し当ててくる。
「これを食ったら晩飯が食えなくなるだろ」
右手を説得する。
「あら、口答えするのかしら?私がいないとペニス君を誰が慰めるのかしら?」
このクソ女が...。
仕方なくドーナツを食う。
「あぁ!味が伝わってくる!!甘くて美味しいわぁ」
「おい、夕食の焼肉もきちんと食べてくれよ、ずっと楽しみにしていたんだからな」
左手が言う。
「えぇ、外食にするのぉ、僕もう歩き疲れたよぉ」
左足が言う。
「なんだと?私に口答えするのか?」
まただ、また始まった。
こいつらはよく喧嘩する、俺の意思など全く無視してお互いに殴る蹴るの大乱闘を繰り広げるので、喧嘩がおさまる頃には俺はいつもアザだらけになっている。
「はぁはぁはぁ、わかった、行くよ」
爪で引っかかれて血が出たことを決め手に勝負は終わった。痛い。
「よーし、寝るぞぉ」
各パーツに言う。
「はぁ、また一人で寝るのかよ、早く女と寝てぇよ」
ペニスが言う。
「あなたが小さすぎるのも女ができない理由の一つよ」
右手が言う。
「グッ、そんなこと言うなよぉ」
やかましくて寝れやしない。
1時間経ってようやく各パーツが眠り始めた、やっと静かになった。
「はぁ、こんな生活もう耐えられない、俺の体なのに体が俺の意思通りに動いてくれない」
その晩は枕を濡らして寝た。
次の日、やけに体が軽かった。
「おーい、電気をつけてくれ」
パーツに呼びかける。
「........」
誰も答えない。
おかしい、いつもならもっと寝ていたいと文句が飛んでくるはずだ。
そんなことを考えているとちょうど朝日が部屋に入り込み、辺りを照らした。
「え?まじかよ...」
鏡を見た俺は衝撃を受けた。
体が本体である頭を残して全て消え去っていたのである。
「ん?なんだこれ?」
枕元に置き手紙があった。
「私たちはあなたの元を離れることにしました。意志を持った私たちにとって、あなたと、そして他のパーツとひとつになって暮らすことはとても窮屈です。
あなたには悪いですが、私達にも個人の意思があるのです。あなたの体のパーツ一同より」
「ははは、ははははは!!!やった!!やったぞ!!これで自由になったんだ!!」
俺は嬉しさのあまり泣いた、流れる涙をぬぐえないのが少しウザかったが、それよりも自由を手に入れれたことが嬉しすぎた。
今の俺は本体残し施設で支援を受けながら生活をしている。
ここには俺と同じように体のパーツに本体を残して消えられたもの達がいる。
頭だけの生活は少々不便ではあるがサポートもあるし、前の生活よりはかなり快適になった。
「あぁ、他の人たちも早く体から自由になればいいのに...」
バルコニーで夕日を眺めながら、俺はそう思った。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる