3分で読めるショート短編集

夢からの脱出

俺は今夢からの脱出を試みている。何を言っているか分からないだろうが、この状況に1番戸惑っているのは俺自身だ。
皆も夢を見ていてこれは夢だと気づくことがあるだろう？俺は夢だと気づいてから体感1ヶ月は夢を見ている。しかも最悪なことに俺が見ている夢は戦争の夢だ、辺りに銃声が飛び交い、死体と悲鳴に溢れている。最初に夢だと気づいた時は、この夢を楽しんでいた、人を殺すなど、現実では絶対にできないし、戦場のスリルはなかなかに俺を楽しましてくれた。しかし1ヶ月も続くとなると話は別だ、死体の匂いに鼻はもげそうだし、悲鳴で鼓膜は破れそうだ。人を殺すことだって、何十回と殺せばなんとも思わなくなる。しかもこんなリアルな夢だ、撃たれでもしたらひとたまりもないだろう。
しかし夢からの脱出といっても何をすればいい？夢とは勝手に覚めるものだ、自分で自在に操れたりはしない。まず、目の前の戦闘に精一杯でそんな余裕などない。全くどうしろってんだ。

夢から覚めないまま2年がたった。撃たれて死なないように必死に戦っていたら、気づいたら結構いい地位に着いていた。部下もできたし、なんなら戦争に勝つことにやり甲斐すら感じ始めている。現実では冴えないリーマンの俺が、ここでは戦争の指揮すらとることもある、この生活も悪くない。むしろこっちの方が毎日生きてる実感を感じる、今にして思えば現実の方が夢だったのではないかとさえ思える。
俺は現実に生きるのだはなく、夢で生きていこうと、心の中で決意した。