転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹の為にラスボスポジション返上します〜

夕凪ゆな@コミカライズ連載中

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第2章 北の辺境――ノーザンバリー

24.いざ、地下道へ(後編)

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 ◇


「大丈夫だ、かごは落ちてない、使える……!」

 俺は貨物用エレベーターの荷台の状態を確認し、声を上げた。
 すると、水車の方からロイドもこちらに向かって叫ぶ。

「水路も水車も無事だよ! 繋ぎも大丈夫そう!」
「そうか! 良かった!」

 もしかしたら、さっきの揺れで荷台が脱落している可能性もあった。
 水車の方も、水路に亀裂が入り使えないことも有り得た。

 だが、実際はどちらも無事。これなら地下に降りられる。

 なお、貨物用エレベーターだからだろうか。エレベーター内側に操作盤はなく、操作はエレベーター外側にあるレバーで行うようだ。
 レバーは自動車のシフトレバーのようになっていて、一階から地下五階まで切り替えられるようになっている。

「よし、俺はエレベーターに乗るから、ロイドはレバーを操作してほしい」

 俺はロイドに指示をする。――が、ロイドは頷かない。

「え、何言ってるの? 僕も一緒に降りるに決まってるでしょ」
「いや、でもな、操作は外側からしかできないんだ。一人はここに残らないといけないだろ」
「えー、そんなのやだよ。僕も一緒に行く。そもそも、ろくに歩けもしない君が一人で降りたところで、魔物に食べられて死んじゃうだけだよ?」

 ロイドは続ける。

「っていうかこのエレベーター、籠自体には屋根がないし、レバーを操作してからでも十分飛び乗れると思う」
「……!」

 ――確かに、その手があった!

 俺はロイドの意見に賛同し、エレベーターに乗り込んだ。


「じゃあ動かすよー」

 その軽い一声を合図に、ロイドは外側でレバーを操作する。
 すると二秒ほど遅れて、ガコンッという音と大きな揺れと共に、エレベーターが動き出した。

 それとほぼ同時に、ロイドが籠に飛び込んでくる。――そのフォームと着地は、うっかり見惚れそうになるほど綺麗だった。


「お前……運動神経いいんだな。神官は皆そうなのか?」

 思わず尋ねると、「まさか」とケラケラ笑い始めるロイド。

「そんなわけないでしょ、騎士じゃあるまいし。マリアなんて二日に一度は何もないところでつまづいてるよ。僕はただ、魔物と戦うために身体を鍛えてるってだけ」
「……本当に好きなんだな、魔物退治」
「うん。そのためだけに、僕は神官になったから」
「…………」

 そう言ったロイドの横顔はとても子供には見えなくて、俺はそれ以上何も言えなくなった。

 ――にしても、下に降りれば降りるほど、視界が悪くなっていく。
 灯りが少ないのもあるが、この暗さは瘴気が濃いせいだろう。


 俺が不意にロイドの様子を伺うと、ロイドは嬉々ききとした表情を浮かべていた。

 瞳孔は猫の目のように開き、唇は夜空に浮かぶ三日月のごとく弧を描く。
 まるで夜闇の中、獲物に狙いを定めるフクロウのように――。
 

(こいつには……いったい何が見えているんだ……?)

 俺はゴクリと喉を鳴らす。


 ――その数秒後、俺たちは無事、地下五階へと降り立った。
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