111 / 158
八◆二人の行方
十七
しおりを挟む「廉くん、君……」
そして――次の瞬間。
「ふっ」と吹き出すような声がして、狭間は突然大声で笑いだした。それはあまりにも唐突な笑い声で、廉は大いに困惑する。
「何か……?」そう尋ね返せば、狭間はさらに声を大にして笑った。「君はあまり父親のことが好きではないんだね」と言いながら。
――そんなにおかしいことか?
廉は今度こそ眉をひそめた。確かに狭間の言う通り、廉は父親を好いてはいない。が、何がそんなにおかしいというのだろうか。それに、「父親が好きではない」などと、普通は思っても口にするようなことではないだろう。それも初対面の相手に……。
この狭間という男、思ったことがそのまま口に出てしまうタイプなのだろうか。
「そんなに面白いですか?」
「……いや、悪い悪い。気を悪くしたかな」
「いえ。別に。……事実ですから」
やや無愛想に答えつつ、廉は苛立ちを抑えようとコーヒーを一口含む。
瞬間、口の中に広がるのは繊細かつ爽やかな香り。
「……あ、美味い」
思わず口から素直な感想が漏れる。すると途端に狭間は笑うのをやめた。そうして今度は、自慢げに腕組みをして鼻を鳴らす。
「だろう? コーヒーにはこだわってるんだ。何せ一日の大半をPCの前で過ごさなきゃならないもんだから」
そう言いつつも、どこか誇らし気に感じられるのは気のせいではないだろう。
「本当に美味しいです」
「そうだろう、お変わりが欲しかったらいつでも言ってくれ」
「ありがとうございます」
廉は狭間の申し出を笑顔で返す。そうして、テーブルの上で両手を組んだ。
――そろそろ本題に入らせて貰わなければ。
このまま話の主導権を狭間に握られたままでは、一生本題に入れない気がするし。
「ところで――今日お伺いした訳なんですけど」
廉が改まった様子で言えば、再び狭間は何か言いかけていた言葉を止める。
彼も思い出したようだ。何故廉が自分を尋ねてきたのかを。
「そうだった、秋月先輩のことを聞きにきたんだったな。何でも聞いてくれ。こう見えて僕、秋月先輩とは結構仲が良かったんだ」
そう言って、彼はにこりと微笑んだ。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる