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七◆未来への追憶
十
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時刻は午前1時を回っていた。リビングには重い空気が漂っている。これまでの秋月刑事の話ではっきりしたことは、ただ二つ。
千早と共に帝も姿を消したこと。そして、千早の荷物と一緒に交番へと届けられた帝の荷物には、スマホが入っていなかったということだ。
それ以外には何一つわかっていない。
通行人が荷物を発見したのは9時より少し前で間違いないが、その荷物がいつからバス停に置き去りにされていたのか、二人はどこへ行ったのか、そもそもバスに乗ったのか乗っていないのか、徒歩で移動したのか、現状では何もわからないということだった。
確かに、行方がわからないと言ってもまだここ数時間のことである。捜査もまだ何も始まっていない段階でわかることの方がおかしい。
けれど秋月刑事は終始冷静で、まるで他人事であるかのような態度だった。息子がついていながら申し訳ない、という気持ちだけは伝わってくるが、自分の息子が姿を消したというのに狼狽える様子もない。
廉はそんな秋月要という男に酷く違和感を覚えていた。
――息子が行方不明だというのに冷静すぎるのではないか。それとも刑事部長ともなると、自分の感情を表に出すわけにはいかないのだろうか、と。
そして一度感じた違和感は、ただ大きくなるばかりだった。廉は目の前の秋月刑事と父親の会話を酷く冷静な頭で聞きながら――とうとうその言葉を口にする。
「あなたは、帝のことが心配じゃないんですか」――と。
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